Filiz Aygündüzコラム:作家アイシェ・クリンとファシズム
2014年02月09日付 Milliyet紙

ここ最近ファシストという烙印を押され批判されているアイシェ・クリンが今週出版した『理想』をちょうど読みおえた所だ。『理想』では、おおまかにいうと彼女が自費出版した初めての短編小説から、アイシェ・クリンを今日のトルコにおけるベストセラー作家にまで押し上げたその他の作品にいたるまでの30年間の作家人生が描かれている。
若いうちに結婚し、4人の子供を持つ母であるということからつけられた「主婦」のレッテルのせいで、彼女の作品ははじめのうちは受け入れられなかった。その後10年間作家活動を休止していたが、再びペンを手に書いた作品『写真、朝の風景』でハルドゥン・タネル短編小説賞、サイト・ファイク短編小説賞を獲得した。しかしそのあと、今度はたくさん売れたことから本人が書いているのかという疑いの目が向けられた。
本の執筆のみで生計を立てることができるようになるまで、ドラマや映画の監督助手を行い、また、さまざまな会社の広報の仕事をしている。離婚し、自分の力で道を切り開き、4人の子供を持つ母親が、生きて、生活し、そして彼女が夢見た作家としての活動のために挑んだ信じられないほどの闘いの物語は、アイシェ・クリン自身の人生でもある。
作家になるという思いは、ある金持ちの甘っちょろい苦労などではなく(彼女はそのように思われていたが)、書くことに夢中になった、意志の強い、そして力強い一人の女性の物語である。
これまでに直面した困難全てにたった一人で挑み、くじけることなく、常に自分自身を客観的に見て、一番厳しい自己批判に心を傾け、死に物狂いで、休む間もなく働き、駆け抜けた女性の物語である。どんなときも正直さを貫き、誠実さを大切にし、人を傷つけることなく、また傷つけられても恨みに持たなかった女性の物語なのである。

■誠実で謙虚な作家

私の記者人生も20年になるので、クリンの作家人生における重要な節目節目を新聞記者として見てきた。クリンの作品の中には気に入ったもの、とても気に入ったもの、気に入らなかったものもあった。しかし、これだけは全く変わらない:つまりどの作品であれ、そのうしろに常に自分らしくあろうとする作家の姿があった。「ひっかけ」のような質問をした際も、正直に答え、他人を傷つけようとする欲望やコンプレックスを持たない、とても謙虚な作家である。彼女の新作『理想』は彼女に対する私の印象が正しかったということを再度証明したのだった。
この記事では『理想』について詳しく紹介するつもりであったが、ちょうど最近になってアイシェ・クリンに対するリンチ・キャンペーンがはじまったことから、「ある作家(彼女)を擁護する」記事に変えた。つまり出演したテレビ番組では、たくさんの子供達が殺害されている国で自分の新刊書について話すのを恥入るという言葉からはじめた作家、そしてこの発言が決して人気取りのためではないことが明らかである作家について我々は述べているのだ。          
「しかし」という接続詞に続く、「私はクルド人が好き、アルメニア人が好き…」といった言葉には常に問題があると私は感じている。「我々はアルメニア人を理由なく殺したのではなかった」といった彼女の発言は、ただそれだけを見ると人々の血を凍らせるような恐ろしい発言であることに間違いない。しかし、私たちが言及しているのはアイシェ・クリン。この発言の裏にある、人としての過去や行い、迫害に関し書いてきた内容や、人生観、ヘイトクライムに反対する姿勢を無視して、彼女を、そのスタンスとは正反対のところに引きずり出し、ファシストであると非難することは間違いであり、冷酷なことである。

■この罪を誰が償うのか

インターネットを見ていると、アイシェ・クリンに関して作品を読むのをやめようといったキャンペーンが行われているのを、そして彼女が「大いなる誇りを持って我々はアルメニア人を殺した」と言ったかのように扱われていることを、また人種差別主義者として批判されているのを見た。書き込みの中には『希望』という著作の内容から彼女に対して、「アルメニア人シンパ」という表現が用いられ、1915年を大虐殺の年のように説明しているために非難されている。このうちのどれが本物のアイシェ・クリンなのだろうか。
そこにいるのは彼女であり、皆彼女に対して好きなように理解し、その理解にあった矢を放つのである。そして、その的は72歳になる、これまでに25もの著作を出版し、好きであろうがあるまいが、本があまり売れない国で少なくない数の「読者」を生み出し、社会的感受性を、書くことで、説明することで、機会あるごとに述べてきた作家なのである。もし、あてずっぽうに放たれた矢が彼女の心臓のど真ん中に突き刺さったとしたらどうなるだろうか。誰がこの罪を償うのか、誰にとって何の利益があるというのか。

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(翻訳者:入口 愛)
(記事ID:32879)