Murat Yetkinコラム:盗聴疑惑と国家諜報局法、このタイミング
2014年02月26日付 Radikal 紙

エルドアン政府が12年間、国の情報機関について情報をもっていなかったことなどあり得るだろうか。

数千人規模の盗聴疑惑が昨日、スター紙とイェニ・シャファク紙の一面で恐怖を以て伝えられた。だが被害者は与党や記者以上に、多くは政府要人たちとのことだ。

エネルギー省タネル・ユルドゥズ大臣が「彼らが本当の政府で、私たちは形だけの政府だ」と発言し、ギュレン派を揶揄した背景には、途方もない現実がある。

だが12年にわたり単身政権を掌握し、国家諜報機構、警察、軍、軍警察の情報部がもつあらゆる合法的盗聴機器の使用権限を持つエルドアン首相や側近らも、盗聴されていたとのことである。

私たちは何年もの間「国はトルコ国民の権利を犯し、会話の自由を失っている」と、何もないところに要求をしてきたのだったのか...。

だが政権を12年に渡り握ってきた者たちが盗聴の被害者とのことだ。首相から内務大臣まで、国家諜報機構長官からPKK(クルディスタン労働者党:非合法)との対話の政治責任者の諮問役まで、盗聴されてしまった「形だけの国家」。しかも政府所有の機材で。

いったいいかなる国で単独政権を担う政府が、諜報組織で起こっていること、自身に不利に事が運んでいることを、これほどまで知らず、これほどまでに無関心でいられるのだろうか。

でも、あるのである。エルドアンと公正発展党政権は、ギュレン教団のメンバーがどのように国家機関の中に極秘の組織を設けたかについて2013年12月17日の贈収賄捜査が始まって気づいたということなら、ギュレン支持者がこれほどの期間、政権を含むあらゆる人びとを盗聴する組織を築いていたことにも新たに気が付いたとのことなのだから。

社会の広範な層で電話の盗聴は悪事ということが共有されているため、その矛先が政権に及ぶことも予想する必要があるとのことだ。

■秘密規定が法制化されると

国家諜報局法にそのように規定されてはいなかったか?軍警察が2014年1月19日朝、ガズィアンテプでシリアへ向かう国家諜報局の車両を取り押さえていなければ、この法律がここまで早急にでたとお思いだろうか?

法整備が必要な側面があるのは確かだ。国家諜報局法は80年クーデター後の1983年に成立、これまで改正されてこなかった。技術の進歩は新たな法的整備を必要としていた。情報機関の仕組みの中で深刻な調整問題も抱えていた。警察や軍警察は、多くの場合国家諜報局が要求した情報を、「法律が認めていない」として渡さなかったり、事件の解決後に渡したりしていたのだ。これは何年も前から報道されていた。

しかしシリア国境で国家諜報局員と軍警察、検察官がカメラの前で対峙にしたことで、問題が勃発した。

[現場では]国本来の規則が働いていた。憲法は法律を、法律は規定にまさるものであったので。警察と軍警察は法律に則り、一方で国家諜報局は秘密規定に則り行動していた。

ベシル・アタライ副首相は2月23日の夕方、国会で次の話をした。「国家諜報局には、法律のほかに活動を遂行するための規定がある。この規定は、秘密であってはならない、公開されなければならない、議会の許可を得なければならない、トルコ大国民議会に国家諜報局は何を行っているか知らせ、承認を得たり、必要に応じて活動を変更したりしなければならない。現在政府がやっていることはこれも少し関係している。」

つまり、政府は国家諜報局の情報機関の中での権威を高めるため、秘密の規定を法律に押し上げたのだ。

■統制不能の権力は、権力ではない

こうして目指されたのは、職務上の嫉妬心からかそれとも「形だけの政府」だからか、最早どの検察も、裁判官も、警察も、軍警察も、国家諜報局に障害を設けてはならない。彼らが殺せと言えば、殺されるのだ。

この間、深刻な問題が寸でのところで妨げられた。例えば、秘密規定がコピー・ペーストされて流出したため、国家諜報局が対外作戦を繰り広げる権限が一瞬にして法律に書き加えられたことが挙げられるだろう。うまい具合に、(国会の)内務委員会の中に現在、諸外国主権や国際連合機構などの情報に通じる人物がいたが、[そのことも]法律の文章から除かれた。

だが明らかになった構図は、MIT上での民主的統制が一層減り、諜報機関がほぼ諸法の、さらにはいくつかの点で憲法にも勝る権限をもったとの印象を生んでいる。

例えば、共和国検察が告発や情報提供を受けた場合、ことが国家諜報局の任務や活動に関連していると判明すれば(シリアへ入国した諜報局トラックの問題でそうであったように)、全ての捜査を中止しようとするのは、憲法の「全ての行政上の活動や任務は司法上の監査を受ける」との条文と、矛盾するものと思われる。また、継続中の捜査・調査に関する全ての情報や文書を裁判所から受け取る権利を国家諜報局に対し与えることは、「司法の独立」を掲げる憲法第138条の観点から見て問題があると見られている。(12月17日贈収賄一斉捜査後、国会のジェミル・チチェキ議長はこの条文が実際には効力がないとを宣言した。)21世紀トルコ財団のホームページ・コラムニストであるムスタファ・ギュレルは、この現状を「統制不能の権力は、権力ではない」と掲げてまとめている。

国家諜報局法が「インターネット規制法」や「裁判官・検察官高等委員会法」の次に上ってきたのは偶然ではない。全ては同じ活動計画の一端だ。最近よく使われる表現のとおり、「このタイミングで」なのだ。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:33071 )