Sami Kohen コラム:トルコのウクライナ政策
2014年03月04日付 Milliyet 紙

アフメト・ダヴトオール外務大臣がウクライナの政権崩壊直後キエフに向かった最初の外国要人となったことは、トルコのこの問題への並々ならぬ関心を示している。トルコ外交がこのような形で国際社会にアピールするのはいいことである。しかし、政府がこの危機に細心の注意を払い、十分な準備を整えている背景には多くの理由がある。
あまりに複雑かつ様々な側面を持つ問題なので、トルコが掲げる政策は原則的なものでなければならず、一方で実利主義的なものである必要もある。危機が高まれば高まるほど、西側陣営にありながら、且つロシアと強い結びつきを持つトルコ政府には厳しい選択が迫られることになる。クリミアのタタール人(訳注:テュルク系の少数民族)が置かれた状況により、トルコは同系民族の側に立たざるを得なくなるであろう。

■トルコの基本姿勢

この問題に関するトルコ戦略の基本要素は、ウクライナの主権と独立、領土不可分への敬意である。ダウトオール外相はキエフ訪問に際し、トルコのこの「基本姿勢」を強調している。
この姿勢は西側陣営の態度と同じ方向を向いている。ロシアが掲げる攻撃的でアグレッシブ(クリミアに至っては占領)な政策が、この原則を侵害している。故にトルコはこの問題に関して(明確な批難や批判は避けながらも)ロシアの態度に反対の立場を取っている。
新政権が成立するや否やダヴトオール外相が新リーダーと会談したこともまた、新政権を「正当ではない」とし、転覆させられたヴィクトル・ヤヌコビッチ元大統領をなお「合法」と見なすロシア政府とは、違うということを示すサインである。

■ロシアとの緊張

だがしかし、キエフの政権交代についてトルコ政府とロシア政府が異なる対応を取ることは、二国間関係が損なわれることにはつながらない。これまでトルコ政府とロシア政府がシリアやその他の問題において異なる立場に立ったとしても、二国間関係には全く影響がなかったのである。
もちろん今回の危機が高まったり、西側の同盟国がロシアに対し制裁を加える際、トルコが加担しなければならなくなったりした場合には、トルコは期待されている選択を迫られる可能性もある。例えば、ロシアに対する包括的経済制裁や、黒海に向かってボスポラス海峡を軍艦が通過することなどが議論される可能性もある。かつて、2008年のグルジア危機(訳注:南オセチア紛争)の際にも、このような緊張が走っていた。

■タタール人の未来

本当の困難は、クリミアの将来に関することだ。トルコがウクライナに対し取っている「基本姿勢」(領土不可分など)は、正しく当然のことである。しかしロシアは議論に基づいてではなく、自国の国益に基づいて行動している。今回のことを既成事実化したロシア政府が、クリミアを支配した後手を引く可能性はかなり低い。
トルコがクリミアに関し敏感になっているそもそもの原因は、同系民族の未来に対し感じる「不安」であるのは明らかだ。歴史的理由でロシア人を嫌うタタール人は、半島に駐留するロシア軍が不安定化をもたらすことを恐れている。
もちろんトルコ政府が求めるようにクリミアでかつての状況を取り戻せれば、タタール人は安心を獲得できる。しかしこうならない可能性を考慮し、タタール人が平等な国民として認められ、安心して過ごせるようにするためには、ロシアにこれを保障してもらう必要があり、トルコはこれに関し重要な役割を果たすことができるのだ。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:33146 )