今なおコンテナに暮らすヴァン地震被害者、弁護士会会長演説を支持
2014年05月10日付 Radikal 紙


トルコ弁護士会のフェイズィオール会長が、地震被災者に言及しエルドアン首相を激怒させた発言について、ヴァンの地震被災者から支持が起きている。アナトリア・コンテナ集落の代弁者アリ・アヒ氏は、「われわれは2日前にアンカラのフェイズィオール会長を訪問し、いまだ44世帯がコンテナ暮らしをしていると訴えました」と語った。

トルコ弁護士会のメティン・フェイズィオール会長が、地震被災者に関する発言でエルドアン首相を激怒させた会見に対し、ヴァン県のコンテナ集落で暮らす地震被災者らからの見解が寄せられた。地震後に建設されたアナトリア・コンテナ集落ではいまだ44世帯、タヒルパシャ・コンテナ集落ではおよそ20世帯の家族が暮らしている。またカラチェレビーとエルジスのコンテナ集落にも計5世帯が残っている。
今日、最高裁判所の設立周年記念式典でスピーチしたフェイズィオール会長は、「社会福祉国家は国民の住宅需要に応える責任がある」と述べ、ヴァンでコンテナ暮らしを続ける賃借人の住宅問題に言及。しかし、フェイズィオール会長の発言を途中で遮ったエルドアン首相は、「ヴァンで何がおこなわれているか知らないのか?ヴァンに関するあなたが言ったことは真っ赤な嘘だ」と述べた。

■被災者「いまだに21平米に暮らす者は、ヴァンの最弱者」

アナトリア・コンテナ集落に暮らす地震被災者の代弁者アリ・アヒ氏は、ラディカル紙でフェイズィオール会長を擁護する発言をし、コンテナ集落で暮らす44世帯で、とくに女性と子供の精神状態が劣悪だと述べた。同氏は、2日前にメティン・フェイズィオール会長を訪問し、不満を訴えたといい、「陳情のためヴァンからアンカラへ赴きました。そこで多数のNGOや弁護士協会に出向き、メティン・フェイズィオール会長とも面会しました。会長自身も数ヵ月前にコンテナ集落を訪問されています」と語った。

ハンガーストライキが始まった2013年8月、アナトリア・コンテナ集落の人口は最も多く、およそ110世帯が暮らしていた。アヒ代表は、コンテナ集落での実情を次のように語る。

「21平米しかないコンテナでいまだに暮らしている家族は経済的にヴァンでの最弱者です。最低額の収入があるのは約10世帯のみで、それ以外の世帯には一切収入がありません。ヴァン弁護士会、ディヤルバクル弁護士会、医師会、ヴァン県庁が公式報告書を整え、地震被害世帯の状況を報告しています。また、それらの報告から全体の社会・経済状況が文書で指摘されており、何度も報道もされています。
にもかかわらず、コンテナ集落に暮らす44世帯の住宅問題はないがしろにされているのです。なぜなら、ヴァンでは数千世帯がいまだに深刻な被害を受けた住宅で暮らしており、44世帯の住宅問題を注視すれば、1万3千世帯分の同様の問題にも目が向けられることを恐れているからです。
しかしすでに精神的には打ちのめされた状態です。我々は何度も発言してきました。各家庭内でも不和が起きはじめており、とくに女性と子供の置かれた状況は非常に深刻です。約45人の女性と45人の子供がコンテナ暮らしを続けています。警察が何度も訪れ、そこに暮らす人々を立ち退かせ、コンテナを撤去しようと圧力をかけます。人々の精神状況は、お互いに殺しあいかねないレベルにまで悪化しているのです」と話した。
アヒ代表は、求めるものは当初から、誰もが家賃を支払えるような条件の住宅と、雇用からなる解決政策の実現だと述べる。

■「私たちは忘れられている」

タヒルパシャ・コンテナ集落に暮らす3児の母カニイェ・ディレルさんは、「ここにはかつて45世帯が暮らしており、現在も16~17世帯が残っています。私たちの状況を訊ねてくれる人はいません。私たちは忘れられているのです。8世帯の状況は劣悪です。全体の状況を調査して、それに応じた住宅支援が行われることを望んでいます。夫はグリーンカード(貧困者の福祉カード)保持者で、日給20リラ(約980円)で市内の学校の売店で働いています。一番上の子は高校に通っていますが、学費すら間に合いません。県が家賃を負担すると言われてコンテナを出て行った人たちもいましたが、実際家賃は支払われなかったようです。またここに戻ってこようとしたのですが、コンテナはすでに撤去されてしまいました。縋れる藁でもあったらこんなところには残りませんでした」と話す。
一方、カヤチェレビー・コンテナ集落で暮らす2児の母であるバハル・オスマン・ムスタファさんも、コンテナ集落に残る2世帯について、「先週、私が不在にしているあいだに県庁から人が来たらしく、立退きを迫る紙を貼られました」と語った。
また、エルジス・コンテナ集落に暮らす3児の父エルジャン・ギュンさんは、「ここには3世帯が残っています。電気も来ないし、水道水も黄色く濁っています。下水設備すらなく、誰もここには留まらず出てきました。子供は約10人、いまだにコンテナ暮らしで、汚れた水を飲み熱を出してしまいます。」と話した。

■コンテナ暮らし2年半

ヴァン県は2011年10月23日、11月9日に発生した2度の地震で大きな被害を受け、何千もの人が命を失った。震災から2年となる日が近づき、ヴァンからは「地震被災者らがハンガーストライキ」というニュースが報じられはじめた。住宅保持者の一部は新たに建設された住居開発局 (TOKI) の住居に引越したが、震災以前から家賃50~100リラ(約2500~5000円)のレンガ造り住宅に暮らしていた賃借者や、土地登記簿のない人々には一切の救済措置がなかった。
コンテナ集落から立ち退かせるためとして冬季に4ヵ月間も電力供給を停止された賃貸住宅の被災者らの、地面でこやしを燃やして炊事をする姿がメディアに報じられた。これに対する多くの非難を受け、ヴァン県は12月中コンテナ集落に何度も送電をおこなった。地震被災者らは、ヴァン県が被災者らをコンテナから立ち退かせるため提示している期限付き家賃補助を信用していない。ヴァンでは多くの損壊建造物が漆喰を塗っただけの補修で賃貸に出されており、耐震住宅を望む被災者らはコンテナ暮らしを続けている状況だ。
地震被災者らは、昨年10月、ヴァンを訪問したエルドアン首相に不満を訴えようとしたが、コンテナ集落外にプラカードを掲げるための警察許可は降りなかった。最終的にはアナトリア・コンテナ集落の地震被災者がアンカラまで徒歩による陳情を行った。

■知事もフェイズオール会長を嘘つき呼ばわり

ヴァン県のアイドゥン・ネズィフ・ドアン知事は、メティン・フェイズオール会長の発言に関して会見を行い、「フェイズオール氏のヴァン・コンテナ集落に関する発言は真実を反映していない。誠に遺憾だ。コンテナ集落で暮らす44世帯の要求は、トルコの法律に照らしても、コモンローの観点からも正当性がない」と述べた。
ドアン知事は、地震で深刻な住宅被害を受けたり、住宅が倒壊した被災者らのため、ヴァン市街とエドレミト郡、エルジス郡にTOKIが建設した1万7489宅が、1年以内に権利保有者に引き渡されたと述べる。さらに村々で暮らす世帯に向けては、宅建補助(EYY)モデルに沿って6300宅と1300棟の畜舎を建設したという。また同知事は、権利保有者に提供された住宅とは別に、エルドアン首相の指示で災害時に借家住まいであった世帯を対象に、抽選で2000世帯に住宅が貸与されたことも明らかにした。
コンテナ集落で生活を続けている世帯に向けては、賃貸住宅の家賃を社会補助総合局が負担するという対応策があるとドアン知事は語り、これを利用して92世帯が賃貸住宅に引っ越し穏やかな生活を続けていると述べた。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:33832 )