Mehmet Y. Yilmaz コラム:大統領選の新展開―エルドアンの戦略に狂い?
2014年06月17日付 Hurriyet 紙

CHP(共和人民党)党首のケマル・クルチダルオール氏とMHP(民主主義者行動党)党首デヴレト・バフチェリ氏が大統領選の統一候補について意見を共にしていることが分かった。

クルチダルオール氏は候補者としてエクメレッディン・イフサンオール氏を提案し、バフチェリ氏もこの提案に「もはや互いを隔てるものはない」と言って応じ、MHPとしても彼に支持を一本化すると述べ、これをもって大領選の新たな時代が始まることになった。私は、初めから”統一候補“という考えが間違っていると考えており、このことについては前にも書いたことがある。
私からすれば、正しいのは全ての政党が異なった政治的視点をもった人々を不快にすることのない、受け入れる際に困ることのないような候補を立てて一巡目の投票を迎え、より多くの票数を獲得した候補者に二巡目の投票の際、支持をまとめるべきであった。
しかし既にこの段階は過ぎてしまった。

政治的視点において、エクメレッディン・イフサンオール氏と我々との間に相違点はあるものの、彼の蓄積された知識や尊敬を受ける科学者というアイデンティティ、そして代表となる資質に関して私から言うべき言葉はない。
現在存在する問題の全ては、2つの政党の組織が共にもしくは別々に、誠実にこの統一候補のために、献身的に働くのか否かという点に関わっているのだ。
これは党首たちと党幹部たちが組織に対してどれだけ支配的な立場でいられたかに関わる問題である。選挙期間が始まれば、この協働が効果的な形で行われるか行われないかを我々は目にすることになるだろう。
AKPの候補者もそれほど大きな驚きをもたらさなかったし、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相が候補者となるのは明らかであった。
首相は、国政選挙と地方選挙のために国を二極化し、自分の支持層を結束させる政策がもたらす悪影響を考慮するだろうか、それもともこの政策を再度利用するのだろうか。
今疑問に思っているのはこれだ。
首相はこの政策をもって自分と強い結びつきのある堅固な支持層を生み出し、緊張状態を悪化させつつも彼らをまとめあげることに成功している。
しかし、忘れてはいけないのは、この(大統領)選挙の一巡目の投票で勝つには5割以上の票数を獲得しないといけないことと、イフサンオール氏の代表する層と2つの大きな政党が彼を支持することで一致していることであり、これらは一巡目の投票で選挙の夢を水の泡にしてしまうかもしれない。
イフサンオール氏は単にCHPとMHPの有権者のための“統一候補”として出馬するのではない、彼は同時にSP、BBPといった政党の有権者たちにとっても決して遠い存在ではないのだ。このため、エルドアン首相にとって選挙はより難しくなったと言うことができるだろう。

■保守化の容認

CHPのような社会民主主義であることを主張する政党が統一大統領候補としてエクメレッディン・イフサンオール氏を提案することで、示されたものがある。
これにより、トルコの社会民主主義を標榜する野党も、国の有権者たちが右寄りになったこと、また保守化していることを受け入れ、それを宣言していることである。
これがCHP内部での新たな争いの引き金となることは、このため避けられないように見える。しかしこの衝突が一朝一夕に発展するようなものではないということは明らかだ。
トルコの有権者の半分がレジェプ・タイイプ・エルドアン首相に心酔する程度に、残り半分は、彼彼への忍耐を強いられているのだ。
そのため、今はCHPを支持する有権者にとっても、党員にとっても最重要事項はエルドアン首相を大統領選で落選させることである。
しかし、大統領選挙後に、もしイフサンオール氏が選挙に勝つことができなければ、我々はCHPの中でこの選択の政治的な結果が起こるのを目の当たりにすることになるだろう。

■解決プロセスの重要性がより増大した

“イラク・シリア・イスラム国”(ISIS、トルコ語での略称IŞİD)は一般的に「テロ組織」として定義されているが、イラクで彼らが行ったことはテロ組織の枠から大きく外れているものである。
そう、彼らの行為は無慈悲で容赦の無い野蛮なものであるが、それがある集団層を手中に収めることへの障害にはならないのだ。
さらに、この野蛮行為は無実の人々の恐怖をも力にしているが、本当の力はイラクにおける宗派争いによって生じた対立や不和から得ていると言うことができる。
反対に、これほどスンナ派部族の支援を集めて、一方でバアス党の残党と協力することは不可能なことであった。
そしてこの状況は、イラクとシリアにおける混乱が短期間で収まらないこと、そして和解をもたらすのも非常に困難であることを示している。
生じた村の一つがイラクとシリアの一部で支配的なシャリーアの決まりによって統治されるような、人道的・外交的なルールにのっとっているとは感じられない一つの「国家のような集まり」と我々は国境を接していくことになるのだ。
北イラクにおけるクルド政府は、この機会を利用してキルクークを制圧した。シリアにおいてもPKKの派生勢力PYDが自治化させた地域の存在を守ることになる。
この状況下、“解決プロセス”と呼ばれるも、現在までに「停戦」を保障する他に、何の発展ももたらしていないプロセスの重要性が増している。
地域で人々が殺されている中、PKKが武器を放棄し、また文民政治に転換することを期待するのは、非現実的なことである。
今日までトルコは、シリアのPYDの成立をないこととし、それ(PYD)とバルザーニー大統領の(クルド)地域における政権への熱意を利用つつ、闘おうとしてきた。
シリアにおけるアサド政権と戦争する全ての勢力と、最近ではISISもトルコがPYDに対して利用する要素として存在していたが、今後はこれがもう続行不可能な政策であることが分かったのだ。
エルドアン政権が地域的に力を持っているという妄想と共に展開してきた政策はここで壁にぶち当たり、砕け散った。
これからトルコは国境に現れたこれらの脅威に対してアサド政権や、イラク政府と共通の戦略を作り上げていくことは不可能なのである。
ダヴトオール外相が妄想を現実とみなす原因となったこの状況において、トルコが協力することのできる唯一の政治的アクターとして北イラクのクルド自治政府が残っている。
PKKがこの状況を利用しようしていないことは問題ではない。
“解決プロセス”が選挙で利用される戦略の域を出ていないことは、事態をさらに難化させている。

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( 翻訳者:桑迫静香 )
( 記事ID:34337 )