Cengiz Candar コラム:イスラエルの暴挙とトルコの「なすすべのなさ」
2014年07月19日付 Radikal 紙


イスラエルの不当性、不公正、暴挙。残念ながら、これらの事実はトルコが今、パレスチナの人々に対して無力であるという事実を覆すものではない。

10日間続いたイスラエルの空爆で、子供を含む200人もの人々が命を奪われ、2000人以上が負傷した。その後、昨日の夜ガザに向けてイスラエルが始めた「地上作戦」は、世界中の非難を呼んだ。

声を上げた国の一つが、ガザ市民が一時希望を託したトルコだ。アフメト・ダヴトオール外相は昨日、「皆が沈黙したとしても、トルコはあらゆる抑圧や虐遇に黙っていない」と述べた。

ダヴトオール外相は「イスラーム世界と地域諸国内の地域紛争の代償を最も多く払っているのがパレスチナだ」と付け加えた。言っていることは至極もっともだ。しかし「イスラーム世界と地域諸国内の地域紛争」の一端となっているのはトルコだ。

ダヴトオール外相はさらに、「永続的な平和に向けた第一歩として永続的な停戦がなされる必要がある」との「願い」を口にした。また、もう一つの願いとして、「イスラエルの陸・空の軍事作戦はすぐに停止されなければならない。これに関し、我々には国際社会を動かす決意がある」と語った。

現実的になろう。エジプトが提案した停戦を受け入れたにもかかわらず、ハマスが拒否したことを利用し、「地上作戦」を始めたイスラエルが、ハマスが使っている「ガザのトンネル」を確実に破壊し、ミサイル格納庫の一部を破壊するまで、「攻撃」をやめる可能性はないだろう。

イスラエルに対し、アメリカの圧力は効果があるかもしれない。ジョン・ケリー国務長官が大きな希望を寄せ、過密日程のシャトル外交で始めたアッバース・ネタニエフ間の「平和プロセス」はネタニエフが終止符を打った。アメリカ政治の努力を無駄にしたことはイスラエルにとって何の「損失」にもならなかった。つまり、アメリカがイスラエルに圧力をかける保証はなく、また圧力をかけたとしても、これには「限界」がある。

では、再び現実的になろう。トルコには―どれほど決意が固いかに関わらず―「国際社会を動かす」力も―もっと重要な―「対外的評価」もない。

自国の外交官や国民が2か月間モースルでイラクのイスラーム国(ISISの前身)の「人質」となっており、この件に関して黙秘を続け、自国でこの件に関する「禁止」令を設けた国が、パレスチナの人々のために有効な国際部隊を派遣することなどできるだろうか。

パレスチナ問題におけるトルコの無能さは、数日前にレジェプ・タイイプ・エルドアン首相が自ら最も分かりやすい形で示している。首相はイスタンブルで行われた「世界のイスラーム知識人による平和・穏健・良識推進会議」の開会式で、イスラエルのガザ攻撃に言及した。トルコで「価値ある孤立」と定義した影響力のない外交政策がとられたこの1年間しばしば行ってきたように、風車を批判し、「おい国連よ、お前は何の役に立つのだ」と叫んだのだ。世界平和に貢献する代わりに、それに反対する者たちの「裏の目的に寄与している」として国連を批判し、「陰謀」の文化の例を挙げた。

勢いは止まらず、首相は初めて公に「イスラーム世界」についても強く非難した。「おいイスラーム世界よ、お前はどこにいるのだ」と叫び、そして尋ねた。「心苦しくないのか。後から私たちは、『欧米はなぜ黙っているのか』と言うだろう。お前が自分の家で黙っているのに他人が何を言うというのだ」と。なんと正論ではないか。

これらの発言は一見、本当に正論だ。しかし意味のない言葉だ。レトリックがいかに良い話者の口から発せられても、政治の場面では効果がない。正論を並べることは決して政治にはなりえないのだ。政治にも、それどころか、正しい政治にも。

「おい」と呼びかけられた国連とイスラーム世界が正常に機能し始め、立ち上がり、ガザに対するイスラエルの攻撃が続く中、「おいタイイプ・エルドアン、お前はどこにいるのだ。喚き叫ぶ以外に何をしているのだ」と尋ねれば何と答えるのか。

カタールと協力して停戦のために尽力したと言うことはできるだろう。実際、カタールのタミーム・ビン・ハマド・アル・サーニー首長は、水曜に共同での停戦の試みについてエルドアン首相と話し合うため、アンカラにいた。トルコとカタールの試みはイスラエルが受け入れ、ハマスが拒否したエジプトの停戦案を代替するための、トルコとカタール、カタールに住むハーリド・マシャアル氏の共同提案だった。

前日、アラブメディアとそれを引用したイスラエルのメディアで、ハマス内の「2つの異なる潮流」が取り上げられていた。「内部、つまりガザのリーダー」は停戦に賛成だが、「ガザの外の」、つまりカタールに住む、ハーリド・マシャアル氏が代表するリーダーは「紛争の継続に賛成」の姿勢を示していたのだ。

ハーリド・マシャアル氏が衝突の初めから―「地上作戦」の直前に―取材に応じてきたデイリー・テレグラフで昨日初めて報じられたインタビューは、ハマスの「外のリーダー」のアプローチを鮮明に示していた。

マシャアル氏はハマスの「停戦受入れ」の3つの条件を提示した。ひとつはイスラエルの攻撃の停止、2つめは先月、ヨルダン川西岸地区でイスラエル人の若者3名の殺害容疑で逮捕された何十人ものパレスチナ人の釈放、そして3つめはイスラエルのガザ封鎖解除だ。

ハーリド・マシャアル氏はパレスチナ人が長期的な政治的・経済的成果の確証を得られない停戦を、組織は一切受け入れられないと述べた。

紙の上では非常に論理的で正しく見える要望だ。しかし、最近ハマスの弱体化が深刻化しており、ハーリド・マシャアル氏が再び権力を取り戻そうと努めていることを考慮すると、彼の要望は「現実政策の方程式」の必要以上に、実際はより短期的な、狭い範囲の目的であることが分かる。

「ハマスの外のリーダー」の最も大きな弱点の一つが、地域で深刻に「権力の衰え」に苛まれている「トルコ・カタール軸」への依存もしくはその活性化を基本としていることだ。

地域規模で見れば、パレスチナ問題において2つの「スンナ派軸」が注目を集めている。一方はサウジアラビアとアラブ首長国連邦が支持するエジプト、もう一方がこれに対立する「トルコ・カタール軸」だ。トルコはガザに関する最近の動向において、この「軸」に基づき、「ハマスの外のリーダー」とともに行動をとった。

結果、停戦の可能性がなくなっただけでなく、イスラエルの「地上作戦」が始まり、パレスチナの人々がさらなる悲惨の中に置かれることとなった。

タイイプ・エルドアン首相はこの情勢について紋切り型の説明を昨日も続けた。

痛みはどうしても避けられない。トルコが国際的な信用を失っても、偉大なトルコの外交政策が1年以上もの間「ムスリムの兄弟に焦点を当てる」状態であっても、地域政策が「トルコ・カタール軸」に集約されても、パレスチナの人々のためには全くならない。

イスラエルの不当性、不公正、暴挙。残念ながら、これらの事実はトルコが今、パレスチナの人々に対して無力であるという事実を覆すものではない。

つまり、トルコがガザ情勢に対して―エルドアン首相とダヴトオール外相の熱意ある宣言にもかかわらず―なすすべのないことは明らかだ。

ところで、まるでパレスチナの人々と団結するようなデモ隊が、イスタンブルでイルハン・コマン作の「地中海」像を破壊している。

政権では「なすすべのなさ」、巷では(芸術品の)「破壊」、そして驚き・・・。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:南澤沙織 )
( 記事ID:34756 )