Taha Akyol コラム:中東の政治的地殻変動
2014年09月13日付 Hurriyet 紙

アメリカ合衆国のケリー国務長官は、対İŞİD(イスラム国、ISIS)作戦において、トルコの貢献がどうなるのかという質問に対し、「トルコにはデリケートな問題がある」と述べた。

当然、「デリケートな問題」のうち最も緊急を要するものは、İŞİDが誘拐した49名のトルコ国民である;すなわちモースルのトルコ総領事館で働いていた職員たちのことだ…。彼らの生命を考慮し、トルコが慎重に動いているのは当然のことである。事実İŞİDのような世界中が嫌悪するテロ組織に対する作戦に、トルコは(参加の)署名をすることが出来なかった。トルコの貢献は、人道的、そしてロジスティックな分野に限定されることになる。だがしかし、以下のことも一つの事実である、すなわち中東において「大いなるプレイメーカー(先導者)」たらんことを欲するトルコが、このために限定的な行動を強いられているということである。

■PKKはİŞİDと敵対!

トルコの最も緊急を要する問題は49名の国民の命である。しかしながら、長期に及んでいる問題は、終息の糸口が見えていない。
「İŞİDに対し戦う」勢力に対し、アメリカは武器支援を行う予定だ。トルコはこの武器がPKK(クルディスタン労働者党)やその関連組織の手に渡ることを懸念している。

一方でPKKのシリア支部ともいえるPYD(民主統一党:シリア国内におけるPKK関連組織)やYPG(PYDの武装組織)は、「対İŞİD戦」のために自由シリア軍と同盟を組むという協定に署名した。トルコが支援する穏健派の自由シリア軍とだ!

平和民主党のセラハッティン・デミルタシュ党首は、「PYGとÖSO(自由シリア軍)の同盟を光栄に思う」と述べた。イラクとシリアにおいて政治的影響を増しているPKKは、トルコにおいても国家権力のかわりに自身の権力を「築き上げる」動きを続けている。例えば拠点を押さえ、検問をおこない、時には軍事行動をおこし、「私立学校」のために省庁に申請せずに学校を開校するなど…

21世紀、クルド人は単なる事実上の勢力ではなく、正式に認められた中東における活発な政治勢力になるのは間違いない。この社会的・政治的プロセスは、トルコの安全保障にどのような影響を及ぼすのだろうか。永遠に「テロのない世界が続くのだろうか、KCK(クルディスタン社会連合: PKKのトルコ国内に置ける都市部支部組織)が正式に発表した「人民防衛軍」が机上に留まるのだろうか?私たちには分からない。

■テロのリスク

トルコの「デリケートな問題」といえば、急進的イスラムテロ組織のことも思い浮かぶに違いない。警察は非常に多くの対アル・カーイダ作戦を実行した; すなわち、次のようなことがある。(アル・カーイダから)İŞİDへの参加者がいることは知られている。Newsweekではこのことに関し、注目すべき記事が掲載された。トルコで非常によく知られ、広まっているイスラム理解は、この種の過激主義からは間違いなくほど遠い。更には世俗化の側面もあるのだ。しかしテロは数の問題ではない。小規模集団も、テロという方法を用いることで深刻な問題を生む可能性があるのだ。

■19世紀的秩序?

中東においてあらゆる政治的地殻変動が起こると、さまざまなアイデンティティゆえに我々にも影響が及ぶことになる。トルコは「私は自分の扉を閉めた、自分に家に引きこもっている」ということはできない;無関係、無関心を装うことはできない。けれども…

第一次世界大戦において、オスマン帝国の敗北に伴い西洋諸国が中東に作り上げた「20世紀秩序」は、明らかに崩壊している; しかしオスマン的中東は新たに生まれてこない; このようなヒロイズムは避けなくてはならない。

せいぜい、人々が争い合うことで、また冷酷な秘密組織により、「19世紀のバルカン」が現代の中東によみがえるのだ、多分。
事実、新たな地図が描かれつつあるのが見えてきた、かつてのバルカンでそうであったように。「バルカン化」の問題については、拙著『ルメリにさようなら』に詳細を書いた。

■共通感覚(常識)が必要

中東におけるこの大きくて厳しい、長期にわたる政治的地殻変動を、トルコは血を流すことなく、また深刻な被害を被ることなく、制御することができるはずである。積極的な外交をこの方向性を持って行い、西洋諸国や中東において親交国の数を増やすことができるはずである。
このために政治的理性主義が第一の基本とされるべきである。国内での対立を取り除き、重要な決定を下すことができるために、「共通感覚(常識)」の確立を容易にさせることになる理論付けを、トルコの国政においても、パンや水のように我々は必要としているのだ。

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( 翻訳者:木全朋恵 )
( 記事ID:35335 )