北イラク政府幹部バルザーニー司令官、インタビュー
2014年10月06日付 Radikal 紙


イラク・クルディスタン地域のマスード・バルザーニー大統領の甥でマフムル、ギウェル戦線に配備されたシルワン・バルザーニー司令官は、イラクではイラク・シリアのイスラム国家(ISIS)が一万五千人の武装した戦闘員を抱えており、その85%がイラク人であると話した。

バルザーニー司令官は、イラク・シリアのイスラム国家(ISIS)は(有志連合による)空爆により戦術を変え、以前ような勢力を保っていないと語り、「もうたくさんの車列を組んで示威行動することはみられない。大挙して移動することもない。民間の小さな車両を使って移動している。我々が入手したいくつかの情報もある。動物を運ぶ2階建てのトラックを使って、移動していると聞いている。上の階には動物を載せ、下の階に彼ら自身(ISIS兵)、武器、弾薬、爆発物を隠している」と述べた。

ISISがモースルを制圧し、クルディスタン地域政府(=北イラク・クルド自治政府)の管轄下にある地域へ攻撃した後、迎え撃ったペシュメルガ部隊は、モースルとその周辺の戦略上の要衝すべてに陣地を構築した。

ISISがアルビルへ到達するために制圧しようとした、もっとも重要なルート上にあるマフムルーギウェル周辺に駐留していたペシュメルガ部隊も警戒態勢をとった。クルド当局は、(ISIS)による攻撃を最初に受けると予想された地域のマフムルーギウェルのルート上に位置する山岳地帯に向けて重火器、ペシュメルガ機動部隊を派遣し、ISISを迎え撃つ最前線には特殊部隊を駐留させた。この間、同地域に派遣されたペシュメルガ機動部隊も、モースルマフムル間の無人地帯でしばしばISIS戦闘員の掃討作戦をおこなっている。ペシュメルガは無人地帯を装甲車両でパトロールし、ISISのメンバーがアルビルに侵入する可能性のある地点で、しばしば軍事作戦を行っている。

■「黒いトラ」がモースルを包囲した

アルビルとモースルの間にありもっとも重要な戦線として知られるマフムルーギウェル戦線の司令官には、クルディスタン地域政府のマスード・バルザーニー大統領の甥であるシルワン・バルザーニー司令官が任命された。シルワン・バルザーニー司令官は、クルド語で「ピレンゲ・レシュ(黒いトラ)」という名称がつけられた特殊部隊を率いて同地域を管理下に置き、マフムルからモースルまでのもっとも長い戦線の防衛を担っている。以前はISISの管理下にあった地域にいるバルザーニー司令官は、日々の大半を自分にまかされた戦線で過ごしている。同司令官は、約26kmのエリアである戦線を移動し、ISISの戦闘員の活動と行動を密に監視している。

■「ISISがクルディスタンに存在する必要ない」

バルザーニー司令官は、管轄している戦線の境界がここにあるクルド人の村々の境界線であると語り、「ご覧のように、このあたりは平地だ。やろうと思えば、2時間以内にここ(ISIS)を掃討する。しかし、現在ペシュメルガを散開したくない。現在、すべてのクルド人の村々を解放するとの決定がある。我々の目標は、クルディスタンの境界線(内)を完全に解放することだ。現在、ここにクルド人の最前線を守るために来た。ISISはこの私たちがいる地域に来ることはできない。クルディスタンの境界線(内)にテロリストが存在する必要はない。(ISISとの戦闘するため)モースルへ行くことについては、何も話題になっていない。これは政治の問題である。今、クルド人のすべての村々を解放するとの決定がある。国連、イラク、クルディスタン の間でモースルについて、どのような決定がなされるかわからない。私たちの優先事項はクルディスタン地域の治安確保である」と述べた。

■「大変残忍で何を望んでいるか誰もわからない」

バルザーニー司令官は、ISISがクルド人と戦争しないとは聞いたことがないと強調し、「彼らが戦闘を行うのは、沈黙していることから明白だ。私たちも以前からこの件(ISISの進攻)に関して予測していた。イラク政府にもそのことを報告した。しかし、対策は何も講じられず、とられてもいなかった。沈黙は彼ら自身(ISIS)をより強化し、地歩を固めるためであった。当初、シーア派との問題があった。イラクの4つの師団を容易に捉え、追い出した。軽火器から重火器まで本当に多数の武器や装甲車をかれらは手にした。彼ら自身の装備を強化し、それによりクルディスタンへの攻撃のための計画を立てた。敵はとても汚いテロリストである。オバマ米大統領もこう話した。非常に野蛮なテロ組織と我々は対峙している。彼らには人間性はない。今までのいかなる敵とも異なる。全員の首を切り落とし、子どもと女性を誘拐する。とても残忍で何を望んでいるのか誰もわからない。ただ、破壊し人びとを離散させている」と述べた。

■「家畜を載せたトラックで移動している」

シルワン・バルザーニー司令官は、イラク領に1万5千人のISISの戦闘員がいると推定していると語り、「これらがISISのもともとの戦闘員だ。これはイラク内だけでの数字である。このほか、内部の85%近くがイラク人である。だが、はっきりと人数を確定する情報は持ち合わせていない。お分かりのように、われわれは大勢の兵力を率いて最前線にいる。しかし、かれらは今、非常に弱っている。ここでは何もできない。とても大きな打撃を被った。特に有志連合の空爆により、とても大打撃を被った。空爆により計画と戦術を変更した。もう、混雑した車列を組んで示威行動することはみられない。大挙して移動することもない。民間の小さな車両を使って移動している。我々が入手した情報もある。動物を輸送する2階建てのトラックで移動していると聞いている。上の階には動物を載せ、 下の階に彼ら自身(ISIS)、武器、弾薬、爆発物を隠ぺいしている。モースルへの往来、武器の移動を行うために、この方法を使っている。現在、 (ISIS)内は恐怖とパニックが起きている。ペシュメルガやクルド人の戦闘員と戦ったことを大変後悔している。これほどの被害を受け、これほど早く崩れるとは、分からなかったようだ」と述べた。

■「トルコは支援をおこなってもそれを公表しない」

バルザーニー司令官は、ISISの手にあった人質がトルコにとって問題であったと語り、「それを理由に長い間、(ペシュメルガへの)支援を行わず、メディアで何も発表できなかった。もし、軍需品を送ったとしても、公式には発表されなかった。おそらく軍事支援があっても、人質がいるために、それを明らかにしなかった。周知のように、特別法に関する決定がある。隣人、友人として我々は絶対に要望があるのだ。地域でもっとも近い隣人であり友人であるのは、トルコである。経済、安定、支援の点で当然ながら支援を期待している。特に、戦車や装甲車両についてペシュメルガへのさらなる支援を期待する。われわれをより一層支援してほしい」と述べた。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:岸田圭司 )
( 記事ID:35502 )