Murat Yetkinコラム:参戦の前から「イスラム国」の火がトルコを焼く
2014年10月09日付 Radikal 紙

公式発表によると、初日に23人が死に、6県に外出禁止令が出され、80年クーデター以来はじめて戦車がディヤルバクルの町に入った。トルコを戦争に巻き込みたい連中よ、これで満足か?

公正発展党の、「イスラム国(ISIS)」のテロを前にした混乱状況をもっともよく示す例のひとつが、エムルッラーフ・イシュレル前副首相が昨日ながしたツイートだといえよう。

ディヤルバルクで10月7日の夜、PKKの戦闘員が、クルド系ヒズボラ組織HUDA/PARのビルを襲撃し、リンチの上、その構成員を惨殺した。この事件を受け、イシュレル前副首相は、「「イスラム国」も人を殺しているうが、少なくてもリンチはしない」とツイートした。

SMS上での猛反発をうけ、イシュレル前副首相はこれを削除した。

血に塗られたこのテロ組織に対する「悪さをする、騙されたイスラム教徒の若者たち」という見方が変えられないかぎり、より多くの流血を覚悟しなくてはならないだろう。

コバーニー(アイン・アラブ)の町への「イスラム国」の攻撃に抗議する示威行動で、今日までの発表で少なくても23人が殺された。この23人の殺人の10人はディヤルバクルで犠牲になった。うち、少なくとも5人は、PKKがおこなった上記の襲撃の結果、死んだ。これはメフディ・エケル農業相があげている数字であり、HUDA/PAR側は、このデモで4人のメンバーが殺されたと発表している。

誰が誰が戦っているのか、おわかりだろうか。PKKと、ヒズホラと、トルコ治安部隊だ。

ディヤルバクルの状況はこれだった。では、イスタンブルはどうだろうか。(クルド系住民の多い)ガーズィー地区やバージュラルで、誰と誰が戦っているかは、ご存じだろう。(クルド系政党である)自由民主党対(与党の)公正発展党の支持者たちだ。つまり、単にクルド人のなかでの闘争でも、治安部隊との抗争でもないのだ。

それゆえ、識者の一部は、トルコが1990年代の混乱に戻ることを危惧している。

しかし、1990年代のもっとも流血の多かった時でさえ、戦いは、PKK戦闘員と治安部隊との間におきていた。民衆が、それぞれの陣営にわかれ、町で戦っていたわけではない。1990年代の最も暗黒の日々でさえ、軍事クーデーターを思い起こさせるようなやり方で、戦車や装甲車、歩兵部隊が通りに配置されることはなかった。

昨日の報道で一番驚いたのは、ディヤルバクルからの「1980年軍事クーデーター以来はじめて、外出禁止令がだされた」という報道だった。

これらすべては、「イスラム国」のコバーニー攻撃をうけ、トルコがシリアに、すなわちNATOの傘下としてではなく、戦争に加わるという議論のもとで起きている。「イスラム国」の戦火は戦争が始まる以前からトルコを家々を焼き始めた。トルコを、中東の泥沼の戦争に引きずり込みたいものたちは、この構図を眺めているのだろうか?

おそらく、政府がこの状態をコントロールするのに、外出禁止令を出す以外の方策がなかったのだろう。憂うべきは、そうせざるを得ない状況になっているということだ。

(左派の)共和人民党は、イスタンブルで計画していたコバーニー支援の集会を、緊張を高めないようにとの配慮から中止した。一部の地区で、PKKシンパが、(右派の)民族主義者行動党の建物を襲おうとしたため、同党本部は、支持者らに、「挑発にのらないように」との指示をだした。これは正解だ。なぜなら、トルコ人対クルド人対立の構図だけにはなっていないからだ。

これらのデモで注目される点がもう一つある。ハッキャーリからイズミルに至るまでの各所で、トルコ国旗やアタテュルクの像や肖像が焼かれ、冒涜された。参謀本部は、イズミルのカディフェカレ戦没者記念碑でトルコ国旗が引き下ろされ焼かれたことを、インターネットのサイトに掲載した。自由民主党のデミルタシュ共同党首は、これを受け、支持者らに「挑発してはいけない」と述べざるをえなかった。

もちろん、この問題が、政府とPKKの間の対話、すなわち、クルド問題の解決プロセスに結び付けられていることは状況をより難しくしている。

昨日の国家安全保障会議ののち、アフメト・ダヴトオール首相は、クルド問題解決プロセスを政府に対する脅迫のネタに使っているとして、自由民主党を非難した。しかし、政府とて同じことをしている。(クルド系政治家らに)デモ行動をやめさせよ、さもないと、解決プロセスがダメになるといって、脅すような態度をとっている。

もちろん、エルドアン大統領やダヴトオール首相が、「イスラム国」問題を、シリアの政権交代問題に結び付けて考えていること、また、PKKの側が、現シリア政権とよく知られた過去のしがらみをもっていることは、この互いを脅す緊張した関係を、ますます緊迫したものにする可能性をもっている。

この緊張を解く責任は、政府にある。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:35516 )