Mümtaz'er Türköneコラム:クルド問題和平プロセスは、絶望か?
2014年10月12日付 Zaman 紙

和平プロセスはおしまいなのか?

この問いに「現状からの再開」と返答できるだろうか? コップはもう滴がこぼれ落ちる状況だ。トルコを火事場へと変えたPKK(クルディスタン労働者党;非合法)の集団暴力によって、新たな一滴どころか、あたりは洪水となった。後にはコップも、現在まで溜めてきたものも残っていない。レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領はトラブゾンで、 和平プロセスは「非常に異なる形で」進められると述べた。現実的には次のような判断を下さなければならない。もはや和平プロセスなどというものはない。

しかしながら和平プロセスを終わらせた本当の原因は、最近の事件やPKKと政府の間の話し合いが行き詰まり、双方の信頼が失われたことではない。根本的な政治上のパラダイムの変化が起きたからである。和平プロセスの力学は、もはや時代遅れのパラダイムを形成してきた敵意やバランス、損得勘定、慣習の産物だ。 PKKの最近の動きを受けて、油を注ぎ火をつけたのは、かつて30年間のパラダイムに固執し留まるという病だった。既にクルド問題はトルコ一国の問題ではなくなった。トルコ及び地域の市民達は、国際規模で渦巻く大鍋の中で、下からの火の激しさのあまり共に焼き焦がされている。「トルコは何故コバーニーのクルド人達を支援しないのか」という問いは、国家諜報機構、政府、参謀本部にではなく、中国、イラン、ロシアに向けられなければならない。

和平プロセスが依拠していたパラダイムとともに崩壊したことは、そこまで大きな損失ではない。何故なら、新しいパラダイムが、何層にも重なっている問題の解決方法を、単純かつ簡単に解決できる細かなものに変えつつあるからだ。地域の地獄の業火の中で、クルド語教育を議論するのは、「天使の性別」を議論すること同様ナンセンスなことだ。天使に性別がないように、クルド語教育が政府によってトルコ語教育と分けられるべきではない。過去のパラダイムに従えば、 PKKは武器を使った脅迫で条件を飲ませ、政府は解決法を見つけ出そうとしていた。現在は、PKKに必要性がなくなった。正常化のために過去を消化しなければならないのは政府自身である。PKKは長きにわたる努力で手に入れた「クルド人の代表」という力をクルド人に対してさえ失った。新たなパラダイムによれば、 「解決」は代償を払って手にする強制された平和ではなく、「共通の利益」にしたがって至る、多くの支持を得ての和解である。かつてオジャラン氏を釈放することは、政府与党にとって「票の損失」を意味した。現在は、より深刻な諸問題に対処しうる好機へと変わりうる。

PKKは単にその戦略のみならず、イデオロギーも組織の論理も崩壊した状態にある。ゲリラ戦術やレーニン主義的ソ連組織化モデルによって、30年間トルコを悩ませてきたPKKは、シリアで局地的な支配の機会が生まれ、実効的な政府を建てるに至ると、数珠の一粒一粒のようにバラバラになった。コバーニーで経験している苦い敗けは、単なる武器不足によるものではなく、この組織と時代遅れの軍事的理解の結果である。

PKKは、コバーニー同様、トルコ内部に「防衛地域」を築くことを自身の国家建設と考えた。先日の「あたりを焼き、戦場に変えよ」という命令によって激化した集団的暴力は、公的秩序以前に、クルディスタン社会連合(KCK)が整えた組織秩序を徹底的に破壊した。国をつくるとは、 道を遮断し治安をコントロールすることや、法廷を作って税を集めることではない。一度の政治的危機によって、すぐに自分たちの民に暴力を振るい始める政府があるだろうか。

ミュフィド・ユクセル氏の記事から知った。コバーニーでのイスラム国(ISIS)の指導者、戦闘を行ったゲリラ達の多くがクルド人であった。アリ・ブラチ氏がたった一つの街だけに関し提示したクルド人ISISメンバーの数は、憂慮すべきものだ。PKKの野蛮な行為が、クルド人達を過激化させている。さらに悪いことには、 アメリカがISISの危険性を、クルド人を渡りに船とばかり利用して、世界に証明しようとしているのだ。トルコがコバーニーから逃げてきた人々へ国境を開いて見せた人道的な歩み寄りに似たものを、誰も示そうという気はない。

和平プロセスが、それを生んだ歴史的パラダイムとともに既に終わってしまったことは、大きな損失ではない。新たなパラダイムは、PKK問題もクルド問題も解決するのにより適している。トルコ人とクルド人があらゆる潜在能力、エネルギー、知恵を集結させ、迫りつつある強力な波に対して、強力な堤防を作らねばならない。PKKの集団暴力は、家が焼けた人が周囲の家を焼くような馬鹿げたものだ。すぐに解決しなければならない。新たなパラダイムに沿ってではあるが。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:粕川葵 )
( 記事ID:35539 )