ローマ法王トルコ訪問、エルドアン大統領と会見
2014年11月28日付 Hurriyet 紙


レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領と新大統領宮殿初の来客となったローマ法王フランシスコによる合同記者会見で、エルドアン大統領の外交批判が明確になった。
エルドアン大統領はアクサライでの記者会見で外交的方法でにローマ法王に対し「シシ批判」を行った。

ローマ法王はエジプトで4日前にクーデターにより政権についたリーダー、アブドゥルファッターフ・ア・シシ氏を招いた。エルドアン大統領は会見でクーデターの主体に対する国際的な支持を批判し、次のように語った。

「一部の国々では軍事クーデターや虐殺、権利の侵害、不正が他国からの必要な回答を得る前に奨励されているようだ。このダブルスタンダードやこの不公平なアプローチはイスラム世界の人々の心だけでなく、公正のために尽力する全ての人々の心を取り返しがつかないほど傷つけることにつながっている。」

■ヴァチカンにシシ氏を招いた

ローマ法王は4日前にヴァチカンでエジプトのクーデターで政権に就いたシシ大統領をもてなした。
エジプトのシシ大統領はイタリアとフランスを含むヨーロッパ歴訪の最初の訪問国であるヴァチカンのローマ教皇庁でローマ法王と面会した。

22分間の面会の後、ヴァチカンが行った書面による発表では、ローマ法王がシシ大統領との面会で多くの話題が挙がり、主要なテーマの一つが中東と北アフリカの平和と安定の推進におけるエジプトの役割だったとされた。発表ではローマ法王が中東の和平プロセスに関し、人々の命を危険にさらし、多くの人の死につながる衝突が終わる唯一の方法は対話と交渉だと強調したと分かった。

■ローマ法王にプレートが進呈された

レジェプ・タイイプ・エルドアン首相はローマ法王フランシスコに対し、メフメト二世がボスニアに住んでいたキリスト教徒に与えた宗教と信仰の自由の勅令が銀版に記されたプレートを;ローマ法王フランシスコもエルドアン大統領にローマの近代画家リオッミの「サンタンジェロ城からの眺め」という油絵からインスピレーションを得て作られたモザイク画を進呈した。

■エルドアン大統領とローマ法王の会見

エルドアン大統領が昨日アクサライで行った記者会見の抜粋は以下の通り:

―この訪問がこの地域が非常に危機的な過程の中で行われたこと、このような時期に実現していることは非常に意味のあることだ。尊敬すべき客人がトルコを訪問したことを非常に重要視している。これが平和への希望を膨らませる非常に重要な一歩となったと信じている。今日発せられるメッセージはヴァチカンだけでなく、全てのイスラム地域や、全てのキリスト教の地域に伝わり、そこで反響を呼ぶだろう。今日アンカラでとられた写真は明らかに希望の写真だ。ヴァチカンから来た最近の兄弟としてのメッセージは大きな希望につながっている。

―西洋では人種差別やイスラム恐怖症が近年深刻な増加を見せている。イスラム諸国の人々に対する偏見が急速に増しているのが見られる。人々は自分と異なる宗教を持つ人たちによって保守的、または後進的、暴力主義的だと印象付けられている。

■シリアにおける「国家によるテロ」の強調

―例えば、西洋でイスラム教徒がテロと同一視されていることを残念に思っている。また、イスラム世界においてキリスト教徒に対して暴力でアプローチする認識を残念に思っている。私は特に、イスラム国やアル・カーイダ、ボコ・ハラムのような組織は長い間続いて来た間違った政策の結果、生まれたのだと言いたい。隔離された、距離を置かれた、孤立させられた人々がこれらの組織のターゲットとなった。

―イスラム国は世界中で日々話題になり、対策がとられている。しかしシリアで30万人もの罪のない人々が殺され、700万人の人々が国内外に避難する原因となった状況を誰も真剣に語らない。ここには国家によるテロがある。シリアの国家によるテロを起こした人物がいる。「彼が去れば代わりに誰が来るというのだ」といった全く根拠のないアプローチが見受けられる。

―エルサレムにおける抑圧を誰も見ていない。国際社会はこれに無関心だ。トルコで30年以上も続いてきたPKK(クルディスタン労働者党)のテロが世界では必要な反応を得ていない。このダブルスタンダードやこの不公平なアプローチがイスラム世界の人々の心だけでなく、公正を求める全ての人の心に深い傷を負わせている。今日ここから発しているメッセージはこれだ。西洋で高まるイスラム恐怖症やイスラム世界における西洋に対する暴力に対し共に立ちはだかることが必要だ。これらに対して何もせず傍観することは歴史や人間性に対する大きな不正となるだろう。不寛容に対して共に解決策を生み出し、実践しなければならないと信じている。

■歴史的な進展

文明間同盟プロジェクトが重要だと考えている。この取り組みの実現と実施が希望につながるだろう。トルコは共に生きる文化にこの上ない貢献をできる用意がある。トルコは文化や信仰の自由を実践してきた。私たちの国の国境内の少数派に対して歴史的と言える進展を行った。トルコは共生の文化を強力に支持し、世界にもこのメッセージを真剣に伝えている。トルコが共生のために伝えて来たメッセージは世界中から注目されなければならないと考えている。トルコの提案は現代政治の中で無視されてはいけない。

―私たちは危険が近づいていることに気づいており、全ての人の協力を仰いでいる。これは近隣地域に限ったものではない。私たちの開放政策によってアフリカのような様々な土地の環境問題にも関心を持っている。トルコは今日発展途上国に年間4500万ドルを支援する国となった。

―カトリック世界の精神的指導者であるローマ法王フランシスコ猊下に、今回の貴方のご訪問は疑いなく大きくプラスの影響を残すでしょう。貴方のご訪問はキリスト教世界の偏見をも壊すと思います。貴方方ご一行がトルコに来てくださったことへの喜びとともに、再び感謝いたします。愛と敬意をもって再びご挨拶申し上げます。

■ローマ法王の発言:

―自然の美しさと歴史的な豊かさ、古代文明の跡に満ち、2つの大陸と様々な文化の架け橋の役割を担うこの国を訪問することができ、非常に幸せです。この場所は初めて7つの教会の公会議を開いた場所だ。その上エフェソスのイエス・キリストの母、聖母マリアが住んでいたと信じられている場所には世界中からキリスト教徒が巡礼に訪れる。これだけでなく、トルコの活気や生産能力はトルコが賞賛される理由の一つだ。

―私たちには対話が必要だ。なぜなら多くの共通点や共有する価値があるからだ。同時にこの対話は賢明な精神と平安を重視し、そこから教訓を得ている。健全な平和に向けて努力しなければならない。これを実現するためにはイスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒の国民が法律上同じ権利を持っていなければならず、同じ課題を実行しなければならない。こうして毎回誤解を避けるのだ。友好はこうして実るのだ。

■トルコは寛容さを示した

―中東とヨーロッパはこの成果に期待している。特に中東は血の戦争の舞台となっている。一つの戦争がまた別の戦争を生み出している。このため、この平和の不足のせいで中東はこれからどれだけ苦しみ続けるのだろうか。これを許してはならない。

―大統領はこのような重大で緊急の目的を達成するために全ての宗教に貢献するだろう。これとともにあらゆる過激主義思想は排除される。非合理的な恐怖は反対されなければならない。信者同士の結束は宗教の自由を支える柱のようなものだ。この努力は尊厳のある生活と自然保護のためのものだ。特に中東では対話や法律、平和の追求によりこれを実現できるだろう。しかし今までずっと戦争を見てきた。特にシリアとイラクでテロ行為は今も継続的に行われている。逮捕者たちや少数派グループは最も基本的な人権さえ踏みにじられている。キリスト教徒やヤズディー教徒だけでなく、何十万人もの人々が生き残り、信仰を守るために自分の家を離れている。

―トルコは寛容さを示し、多くの難民を受け入れた。必要なのは、人道支援だけでなく、この悲劇を生み出した原因にも黙っていていないことだ。

―問題解決のためには軍事的努力だけでは不十分だ。相互に対する信用に向けて共に努力することが必要だ。飢餓との闘い、持続可能な発展、様々な方法で私たちの前に現れる貧困や3つの傾向との闘いも今日、表面化している。トルコは地理的位置とこれまでの努力から、非常に重要だ。トルコは目に見える平和と発展の道を描くことができるだろう。

―全能の神がトルコを守り、見守り、永続的な平和の構築者としますように。

■イスラム国に関するメッセージ

―ローマ法王フランシスコはメフメト・ギョルメズ宗務長官のもとを訪問した。二人の宗教家は直接面会をした後に行われた共同記者会見で、名前は挙げずにイスラム国のテロに触れた。ギョルメズ宗務長官は「イスラムのメッセージに真っ向から反する道に反れ、暴力を広める者たちは本人たちがどう名乗っていようと、神に反逆している」とコメントする一方、ローマ法王は「過激主義組織によって暴力の被害に遭い、苦しむ人々の状況も特別危惧する要因だ」と述べた。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:南澤沙織 )
( 記事ID:36024 )