「黒い暴力」—ショック班、世界の酸かけ事件を報告(2)
2014年12月02日付 Iran 紙

 その一方で、社会問題の専門家らによると、施行されている法律が酸かけ犯の処罰を念頭に置いておらず、他の者たちに対して教訓となったり、酸かけ行為を思いとどまらせるものになっていないという。

 ある社会学者は、次のように指摘する。

これまで、酸かけ行為に対してキサース刑(同害報復刑)が適用されたことはない。というのも、法医学の関係者たちは、もし酸かけ犯に対して報復が行われることになると、キサースの実施は求められている以上の損害を酸かけ犯に及ぼすことになってしまうと考えているからだ〔※〕。酸かけ行為によって生じた損害は通常、犠牲者の視力が失われたり、顔の一部が欠損したりするなど、永遠に消えることはない。他方、犠牲者は永遠の肉体的被害のみならず、鬱状態に陥るなど、激しい精神的打撃も受ける。そのことで、ときに犠牲者が自殺に至ることもあるのだ。

※訳注:キサース刑は「同害報復」刑であり、被害者が受けたのと同じ被害が、正確に加害者に与えられねばならない。しかし、それは極めて困難であり、必要以上の損害を加害者に与えてしまう可能性が高い。それはキサース刑の趣旨から逸脱している。酸かけ犯にキサース刑が適用されたケースはこれまで存在しないというのは、そのためである。

インドとパキスタンにおける酸かけ事件

 インドやパキスタンといった国の社会は、家庭内における男性支配が一般的であり、女性たちはつねに〔男たちからの〕野蛮な暴力にさらされている。家父長主義に由来するこうした暴力は、未婚・既婚女性たちへの虐待や拷問、暴行、あるいは殺人や酸かけ行為に行き着くことがある。

 この種の暴力がもたらす結果は、生きているかぎり、あらゆる女性の人生を大きく左右し、多くの苦悩をもたらす可能性がある。

 シュピーゲル誌の報道によると、ヨーロッパにおける酸かけ行為の犠牲者の6割は女性であるが、この数はインドとパキスタンでは著しく増加傾向にある。この報道では、酸かけ行為の主な原因は、失恋、家庭内の諍い、そして復讐だという。バングラデシュでは、この数字〔=失恋等の上記の理由によって酸かけ行為が起きた割合〕は72%に及び、やはりその犠牲者は主に女性たちである。

つづく


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( 翻訳者:8410170 )
( 記事ID:36150 )