教皇の「ジェノサイド」発言、海外メディアはトルコの反応をどう報じたか
2015年04月13日付 Milliyet 紙

フランシスコ・ローマ教皇が日曜日に1915年の事件において殺害されたアルメニア人について「20世紀初のジェノサイド」という表現をしたことを受けて、トルコ政府が在バチカン大使を外務省へ召還したことは、外国の報道で広く話題となった。

 アルメニアのエドワルド・ナルバンジャン外務大臣は、フランシスコ・ローマ教皇のアルメニア人殺害を「ジェノサイド」と見なしたことに関して、トルコが出した応答を、「トルコは別の言語を話していために理解していないように見える」という形で評価した。

 チャヴシュオール外務大臣は、ローマ教皇が、ジェノサイドと認められているボスニアやルワンダにおける諸事件に対し「大量殺人」、法的には定義されていない1915年の事件に対してはジェノサイドと言うことは矛盾していると強調した。

 メヴリュト・チャヴシュオール外務大臣はモンゴルで、ルンデグ・プレブスレン外務大臣と会見し、その後記者会見を行った。ローマ教皇のアルメニアに関する主張に関する発言に対する質問に対して、チャヴシュオール外務大臣は、ローマ教皇によって用いられた表現が法的有効性を持っていないことを強調した。チャヴシュオール外務大臣は「何よりもまず、ローマ教皇とアルメニア人の代表者両者がした説明は歴史的、法的事実と合致していないのである。」と述べた。チャヴシュオール外務大臣は、ローマ教皇が2014年11月28から30日にかけてトルコを訪問した際用いた言い回しともひどく矛盾していると明らかにし、以下のことを述べた。

 「ジェノサイドは法的概念である。この条件を満たしていないこれらの主張は完全に名誉棄損から成り立っている。少し前にローマ教皇の表現においてイスラム教徒、トルコ人、キリスト教徒の間で差別があったと私は強調していた。もしくは感じられた苦しみについても…。例えばボスニアやルワンダの事件は国際的な司法の場でジェノサイドとして確定されたにもかかわらず、これらに対して『大量殺人』と述べたが、法的に認められていない1915年の事件に関しては「ジェノサイド」という表現を用いた。ここには矛盾と差別がある。」

 チャヴシュオール外務大臣は教皇のこのアプローチが認められるものではないと強調し、「この表現は、全方面から議論すべきであり、偏見に基づいた、歴史を偽造する、また得た苦痛を一宗教の教徒まで下げるものであり、トルコ共和国と国民にとって無効である」と評価した。チャヴシュオール外務大臣はトルコがメフメト・パチャジュ在バチカン大使を協議のためアンカラへ召還したことを思い出させ、この会見の後に講じられる策は、世論と共有されるであろうと述べた。

■在バチカン大使、トルコへ帰国

 フランシスコ教皇のアルメニア人ジェノサイド主張を意図した表現を受けて、トルコへ召還されたメフメト・パチャジュ在バチカン大使は帰国した。
メフメト・パチャジュ大使はトルコ航空の定期便で、22時50分にローマからイスタンブルに到着し、アタテュルク国際空港のVIPサロンを通過した。パチャジュ氏は新聞記者に会見を行わずに、アンカラへ出発した


■海外の報道機関はこのように見た
フィナンシャル・タイムス紙(英):フランシスコ教皇がオスマン帝国期におけるアルメニア人殺害を20世紀初のジェノサイドと見なしたことを受け、トルコ外務大臣はバチカン大使を召還した。教皇と前教皇ヨハネ・パウロ2世はオスマン帝国の末期に殺害された1万5千人のアルメニア人に対して「ジェノサイド」という表現を以前にも使用していたが、教皇のこの発言は特に、昨年の友好的に見えた教皇のトルコ訪問以後、政府関係者に驚きをもって迎えられた。
アルメニア人殺害の記念日として知られる4月24日が近付いていることに際し、フランスのオランド大統領とロシアのプーチン大統領によるアルメニアへの訪問の実現が期待されている。他方でトルコはこの日をチャナッカレ勝利記念日として祝おうとしている。この式典にも、チャールズ皇太子、ヘンリー皇太子が参加する予定だ。

BBC(英):フランシスコ教皇がオスマン帝国時代にアルメニア人らが殺されたことを、「ジェノサイド」とみなしたことが、トルコから批判を受けた。トルコ政府は、この発言に対応するとして在バチカン大使を外務省へ召喚した。トルコ外務大臣は、この発言について、「歴史的事実とは程遠い」とコメントした。

CNN(米):ローマ教皇は、オスマン帝国時代に殺されたアルメニア人らに対して、「ジェノサイド」という表現を使い、トルコの怒りを買った。ローマ教皇が声明からの引用とは反対に使ったジェノサイドという表現は、トルコを憤慨させた。トルコは、ローマ教皇のこの発言に対し在バチカン大使を外務省に召喚することで対応した。

インディペンデント紙(英):フランシスコ教皇は、オスマン帝国により殺されたアルメニア人らを、「20世紀初のジェノサイド」とみなした。トルコのメディアは、トルコの政府高官らがローマ教皇が今日の日曜日のミサでこの発言がなされるのを事前に阻止しようとしていたことを明らかにした。

Sky News:第一次世界大戦期に殺されたアルメニア人らを、ローマ教皇が「20世紀初のジェノサイド」とみなしたことは、トルコの怒りに触れた。トルコ外務大臣のメヴリュト・チャヴシュオール氏は、ローマ教皇の発言は事実や歴史とはかけ離れ、根拠のないことだと評価した。トルコで事前にも、在バチカン大使のアントニオ・ルジベーロを、説明のために外務省に召喚した。

ハフィントン・ポスト紙(英):ローマ教皇がトルコによって殺されたアルメニア人らについて「20世紀初のジェノサイド」という表現を使ったことを受けて、トルコはバチカンに対し、(両国の)関係において信頼が失われ、大きく失望したと述べた。ローマ教皇は日曜日のミサで行った発言で、外交的な危機に火を着けた。イタリアやアメリカ合衆国を含むいくつかの国々はこの問題をジェノサイドと認識していないものの、アルメニア社会とも親しいローマ教皇は、アルメニア人らの殺害が国際社会においてジェノサイドとして認識されるよう呼びかけた。

アル・ジャズィーラ(カタール):フランシスコ教皇がジェノサイドという表現を使ったことに対し、トルコの在バチカン大使を、説明を行うために外務省へ召喚した。アルメニア人の殺害は、一部のヨーロッパと南アメリカ諸国によってジェノサイドとして認められているが、一方でアメリカと一部の国々は、重要な同盟国であるトルコと良好な関係を保つためにこの表現を使うことを避けている。

■ナルバンジャン外相:トルコはまるでほかの言語を話しているようであることすら気づいていない

アルメニアのナルバンジャン外務大臣は、「今日、多くの国際機関はジェノサイドを認める声明を出し、決定を下している。トルコにもこれに向けて一歩踏み出すよう呼びかけている。ローマ教皇の発言は、この流れにおける世界的な価値に加えられた。トルコがこれを理解し始めたとき、国際社会と教皇のような偉大な個人が何を意図しているのかがわかるだろう。」と述べた。アルメニア外務大臣は、「トルコは残りの国際社会とは異なる言葉を話しているようであり、さらにはまるでほかの言語を話しているようであることにすら気づいていないようだ」と評した。

■「教皇の発言はアルメニア人に対する平和のメッセージである」

アルメニア外務大臣は、ローマ教皇の発言は非常に重要なメッセージを含んでいると述べ、「これはアルメニア国民にとって平和のメッセージである。また同時に、国際社会にむけた人道に対する罪とジェノサイドを防ぐためのメッセージである」と述べた。

■「決定は、すべてのカトリック教徒の見解を反映している」

ナルバンジャン外務大臣は、ローマ教皇が12億ものカトリック教徒のリーダーであることを強調し、「彼の見解は、これらすべての人々の見解を反映しているのだ。アルメニア社会自体も、将来起こりうる罪を防ぐために貢献しなければならないと感じている。」と述べた。

Tweet
シェア


 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:熱田奈月美・池田安奈 )
( 記事ID:37300 )