Aslı Aydıntaşbaşコラム:HDPにとって危険な時期
2015年05月18日付 Milliyet 紙

トルコの運命を決定づける選挙の前に、世論を読み解く人びとには二つの異なる意見がある。

一つ目は、人民の民主主義党(HDP)が宗務庁論争によって傷を受けているという方向性の見解である。タイイプ・エルドアン大統領が手にコーランを持って集会場に現れた本当の理由は、HDPに投票する敬虔なクルド人の考えを変え、この層を再び公正発展党に向けさせるためである。HDPが得票率制限を超えたならば、公正発展党の単独政権は難しくなる、というのは明白である。エルドアン大統領が、「スーパー大統領」となることも不可能になるだろう。このため、与党側はここ数週間ずっと、宗教を通じてHDPに圧力をかけている。

公正発展党の票が減少傾向を見せているとはいえ、集会場に現れたエルドアン大統領は言説を生み出す力がある。この力をHDPを消耗させるために効果的に利用している。2011年の選挙と同様に、エルドアン大統領は、HDP支持者を「ゾロアスター教徒」、「無神論者」と呼んだり、セラハッティン・デミルタシュHDP党首がタクスィムをカーバ神殿と言ったと主張したり、同党の宗務庁の廃止提案を「我々の信仰に手をつけている」といった解釈を下している。

いくつかのアンケートによると、エルドアンのこの執拗なキャンペーンが効果的で、大統領選挙以降、HDPに向けられていたクルド人保守層の票が、再び公正発展党へと戻り始め、一時12%の得票率制限を超えていたHDPが、いまや、得票率制限の境目にいると言われている。おそらく票の移動は、1ポイント、あるいは、0.5ポイントである。しかし、この数字でもHDPにとっては、重大である。

二つ目の意見はというと、エルドアン大統領のこの努力でHDPが考えられているほど弱体化しておらず、トルコ全土アンケートに反映しない、隠れたHDP支持者の票があり、これら総数がHDPが容易に得票率制限を超える可能性があるというものである。この見解によれば、人々が一定の考えをもっているということである。集会に現れて発した言葉に効果はない、と。政界の重要なある人物は、HDPが内陸アナトリアを含む様々な場所で隠れた票を得ること、デミルタシュ共同代表に向けられる個人的な共感が政党のアイデンティティーとイデオロギーよりも上位にあると主張している。

いまだに現地に出向いていないために、HDPの票が実際に宗務庁論争に影響されたかどうかについてきちんとした判断を下すのは適切ではない。実際、「本当はデミルタシュに票を入れる予定だった。しかし、ドイツでの朝食の席に豚肉があったらしい。決して彼には票入れない」という「敬虔なクルド人」といったステレオタイプがあるのか。さもなければ、このアンケートを取った人の願望によって作られたのか、わからない。(後日、本紙の取材の際に、この問題についても答えを見つけられるだろう。)

■HDPの処方箋

しかし、エルドアンのHDPに向けた一斉射撃によって、実際に、「下方」傾向が始まったと言えるだろう。HDPがこれをひっくり返すため残された時間は少ない。最近は危機的な状況である。では何をするべきなのか。

HDPは、トルコ西部の有権者から得られる票を大規模に得た。今後、クルド人有権者に向かうべきである。ニューヨーク大学のセルチュク・シリン教授のとても重要な指摘がある。HDPが多数票を得た16の県における投票率は、トルコの平均よりも低い。500万人の有権者について言及している。HDPは、フランクフルト、[イスタンブルの]ジハンギルで活動する代わりに、投票日にこの16県の有権者が投票に行くことを確保すべきである。

同様に、一定数のクルド人の有権者が、イスタンブルと他の大都市で生活している。再びセルチュク・シリンの数字によると、この16県に籍がありながら他の場所に住んでいる500万人の有権者がいる。このうち220万人近くがイスタンブルにいる。大部分が、[イスタンブルの繁華街]ジハンギルとエティレルではない。[周縁の]バージュラル、スルタンベイリ、ウムラニイェに暮らしている。HDPは、この層に声を届ける術を見つけなければならない。

「あなたを国の長にはさせない」というHDPのスローガンは、トルコ西部に暮らす都市部でモダンな層には効果的であった。実際、HDPは、この層から得るべき票は得た。今後は反エルドアンの代わりに、クルド人有権者に向けた「クルド・アイデンティティ」についての新しい方向性の開拓が必要である。私が言ったのは、「クルド民族主義」ではない。コバーニー問題が生んだ敏感さの中で我々が目にしたのは「クルド・アイデンティティの誇り」である。

HDPは、急いでアルタン・タン、ヒュダ・カヤ、ディヤルバクルのムフティーであるニメトゥッラー・エルドームシュといった敬虔な人々向けの人物たちを前面に出し、都市部の人びとと知り合わせることが必要である。

昨日会ったHDP支持者は、メディアが自身らにひどいレッテル付けをおこない、テレビ画面に姿を現すことができないと言っていた。それは正しい。しかし今後さらに必要なエクストラの1%の票は、テレビのチャンネルではなく、イスタンブルに住む県人会、家庭集会、信徒内での歓談にかかっている。

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:37550 )