Murat Yetkinコラム:政府シリア介入へ傾き、軍は抵抗
2015年06月27日付 Radikal 紙

首相は軍にシリアにおけるIS、PYD(クルド民主統一党)、アサド勢力への積極的な介入を求め、参謀総長はこれは危険であるとしている。これらは政権が連立政権に移行しようとしている中、起きている。

ラマザン初日の6月18日、アンカラで安全保障会議が開かれた。
アフメト・ダヴトオール首相は関連する省庁の閣僚、官僚と参謀を招集した。会議には参謀総長と軍司令官らも出席した。
PYDが2日前の6月16日シリアのタル・アブヤドをISから奪還した。議題はシリアだ。

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諜報報告が読み上げられた。

まず、トルコ国境近くのハセキ周辺のある軍事基地で5月28日から12月31日の間に行われたある会議について。
次にアサド勢力とISとの間での協力の可能性が話し合われた。

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国家諜報機関(MİT)に届いた情報によるとアサド勢力はもしISがマレ・ラインの名で知られる南北に広がる境界線の西側に動けば、シリア空軍が空から援護すると述べたという。
つまりISはトルコ‐シリア国境のハタイ-キリス部分に侵入する可能性があるということだ。この状況は他方で、ISやPYDの手が及んでない、ジルヴェギョズとオンジュプナル、特にオンシュプナルを危険にさらすことになる。これに加え、PYD/PKKの勢力がアフリーンでISとの新しい衝突を生じさせ、新たな難民流出の引き金となる可能性がある。 

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他方、タル・アブヤドがPYDの手に落ちることで生じる北シリアのクルド回廊地帯の不安がある。文民、軍、政府全体は、現在のこの状況がトルコにとって深刻な防衛上のリスクとなると考えている。
しかしこのように「診断」では意見が一致しているものの、その「治療方法」に関して、一致は見られない。

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実際このような状況は6月7日の選挙前にも明らかになっており、政府は軍に、シリア体制派からの攻撃への反撃の他に、シリア領土におけるISとPYDに対するより活発な軍事行動と自由シリア軍(ÖSO)へのより積極的な支援を求めていた。
この軍事行動と支援は、シリア側からの動きがなくても長距離砲による支援や、状況によっては空軍だけでなく陸軍の投入となる可能性もあった。
スレイマン・シャー廟の移動はその一種のリハーサルとして遂行された。

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しかし軍はこのような動きが国際法に照らしてトルコを不当な戦争状態に直面させると予測していた。
ちょうどそのころ参謀総長のネジュデト・オゼル大将が手術をすることとなった。
そうして6月7日の選挙が行われ、AKPは議会において単独与党を可能とする過半数の票を得られなかった。

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ところが、6月18日の会議に選挙の影響はなかった。
匿名の高レベルの公的情報筋によると、ダヴトオール首相は現状を受け、シリア領内の標的に軍事介入する必要があると述べたという。
とくにISの支配下にあるジャラーブルスは攻撃の拠点とされていた。

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コバーニーとアフリーンの間の180kmのうち120kmはIS、80kmはÖSOの支配下にある。
PYDは回廊地帯を地中海にまで伸ばすことを、ISはトルコとシリアの国境の接続を断ち切りたいと考えている。
(トルコ軍の)標的はジャラーブルスになる可能性もあった。軍は(シリア国境内に)10~15km進入しISとPYDの両方に対し緩衝地帯を設け、新たな難民の流入を、トルコ国境内に入る前に、押し止める可能性もあった。

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参謀総長のオゼル大将はこれについて書面による命令を要求した。
ダヴトオール首相は議会で承認された派兵許可と、その後に出される通達で十分であると、オゼル大将を説得できなかったため、即座に事務次官に通達を出し、政府指令を用意させた。
オゼル大将はそれでもこのような計画のリスクを(次のように)並べ上げていた:
シリア領土のトルコ兵に対しISが攻撃をする可能性もあった、PYD/PKKが攻撃する可能性もあった。アル=ヌスラや他のジハード戦士グループに攻撃される可能性もあった。さらにそれらのグループがトルコ国内で活動を始める可能性もあった。クルド問題の解決プロセスによってとられた相互休戦を終わらせる可能性もあった。

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参謀総長はそれに加えて軍事行動が国際的なリスク、まさにアメリカやシリアの後ろに控えているロシアやイラン、シリア自体がどのような反応をするかという疑念を呈した。
たとえばシリア空軍がトルコ軍を攻撃するかもしれない、トルコがそれに反撃せざるおえなくなることも考えられる。あるいは空襲作戦がアメリカによって行われることが提案される可能性もあった。
この空襲がシリアに対するものではないということを通知する必要もあり、それがロシアまたはイランによって行われる可能性もあった。

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実際ダヴトオール首相は事態を認識したようである。
文民側の話によれば、以前選挙を前に時間稼ぎを望んだ軍は、いま連立政権が樹立されたのち、おそらく対シリア、対IS政策の変更によって根拠がなくなるかも知れない指令によって、軍事行動に移ることを望まなかった。
他方でオゼル大将の任期が近く終わろうとしていた。エルゲネコン、バルヨズといった事件が起こる中、軍と政府の間で調整に努めてきたオゼル大将は、任期の最後に戦争に発展しうる軍事行動を指揮したくないかも知れなかった。

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ダヴトオール首相はそれでも通達をだした。
外務省はアメリカと連絡をとり、アメリカが主導する有志連合軍の航空機によってトルコ国境近くのISに対する限定的な航空作戦が行われた:この航空作戦が限定的であった理由は、インジルリキ基地ではなく、標的から数千キロメートルも離れたクウェートやカタールの基地が用いられたためであった。
フェリドゥン・スィニルリオール外務次官は6月24日アンカラでロシアのプーチン大統領の中東アフリカ特使のミハイル・ボグダノフ氏と面会した。

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その前の6月15日にプーチン大統領とエルドアン首相がバクーで会談しアサド以後を含めたシリア問題について話し合った。
アンカラでの会議ではロシア特使からの、アサド-ISの協力関係についての情報をはじめ、現状のダマスクスへの伝達についても話し合われたことがわかっている。
しかしスィニルリオール-ボグダノフ会談の翌朝、6月25日のサフル(ラマダン期間中の夜明け前の食事)の時間帯に、ISはジャラーブルスからコバーニーを攻撃した。

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今日の時点で、ダヴトオール政権はシリア領での軍事対応の意志を持ち続けている。
軍はきわめて慎重で用心深く考え、人によっては引き延ばしや時間稼ぎ、あるいはトルコを中東における新たな冒険から遠ざけるべく(事態を)懸念している。
興味深いのは、この状況がすべて、政治的指針がAKP-CHPの連立に向いている時に生じていることである。
もしかしたら数週間後、AKPのシリアに対する政策に不満を持つCHPを含めた連立政権が始動しているかもしれない、軍での任務の交替を目前にして。

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( 翻訳者:岡本悠見 )
( 記事ID:37972 )