Ekrem Dumanliコラム:首相のバルコニー勝利演説の約束が実現したなら・・・
2015年11月03日付 Zaman 紙

訳者注:ザマン紙はAKPが現在、徹底的に攻撃しているフェトフッラー・ギュレン派の新聞。ドゥマンルはその元編集長。昨年12月には逮捕・釈放も経験している。AKPとエルドアン批判の急先鋒。

5か月前の選挙でAKPは単独政権を作れなかった。今、ほとんど10%も票を伸ばし、大きな勝利を手にした。誰の頭にも浮かぶ疑問は、5か月でなにが変わり、どうしてこれほどAKPの票は伸びたのか、だ。

理由はいろいろある。
6月7日の選挙で、有権者は「連立政権を」と意思表示をした。AKP、とくにタイイプ・エルドアンは、有権者の希望には否定的に対応した。もちろん、これは予測はできた。13年間、国を治めてきたものが、どうして連立を望もう。このためやり直し選挙となった。

「もはや1党与党は望まない」という国民のメッセージを野党も、うまく活かせなかった。まとまることができなかった。国会で多数を得ていたにもかかわらず国会議長すら出せなかった。全てのアンケート結果は、6月7日と同じ構図を予測していた。しかし、有権者は、「また連立になる。この連中は連立政権をつくることもできず、国の舵がとれない。そんなことなら、AKPが舵取りをすればいい」といってのけた。そもそも、どういう組み合わせでも、AKPは入ることになる。国民はこの現実を直視し、AKPにもう一度、チャンスを与えたのだ。それも、「やり方によってはまた40%に落とすぞ、ちゃんと頭をつかんだぞ」といって。また、「野党の非妥協的な態度は認められない」というメッセージを与えた。

5か月の間には、爆弾が爆発し、犠牲者がでた。テロ事件から安全問題に焦点があたった。トルコがばらばらになり、内戦に向かうのではという心配が有権者に深く影響を与えた。トルコのそばでぼうぼうと燃えているシリアのようになるのでは、と恐れ、単独政権ならもっと効果的な対応ができるのではと考えた。

有権者は、AKPに対し怒っている。投票結果は誤解されてはいけない。今も、心のうちは穏やかではない。中道右派とよべるようなオールタナティブの選択肢がないため、「まあ、もう一度」といって、AKPに投票した。MHPが右派をまとめられず、CHPがどうやっても国民の広い層から票を得られないため、「民族主義―保守」の有権者も、オールタナティブの党がみつけられず、与党にもう一度、チャンスを与えた。

AKPは、自身に与えられたこの最後のチャンスをうまくいかせるだろうか?選挙の夜、ダヴトオール首相が述べたメッセージをみれば、できることは確実だ。国民は、5か月の間にAKPへ2つのメッセージを渡した。そのうちの1つを無視すれば、トルコは間違った結果にいたる。ダヴトオールは「古いトルコは、地下7階の下に葬られた。新しいトルコ建設のプロセスは、11月1日をもって実現に向かっている」と述べた。

11月1日を新しい始まりだとするダヴトオールは、人々が6月7日に下したメッセージを受け取っていると語ることも忘れない。11月1日に始まるとする新しいページの最初の行には、次のような注をつける。「トルコを、いかなる分極化からも、緊張からも、救い出す。」これは重要な約束だ。そして、「AKPの2002年の創立時の思想に戻る」という点でこれからおこるであろうことは、最も大きな試験である。

首相の行った、建設的で亀裂を修復するようなバルコニーでの勝利演説は、権利、法、正義を強調していた。「誰もが法の保証のもとにある。7800万人のための法は、確実に守られる。対立をあおる憎悪は敗れ去るだろう」という首相の、この言葉は、どこかにメモしておかなくてはいけない。

かつても力強いバルコニー演説が行われた(注:エルドアンのクルド問題の解決などを約束した2002年のバルコニー演説などを指している)。しかし、実現しなかった。このため、人々は傷つき、被害を蒙っている。このため、社会の多数かつ多様な集団が、安全だと感じていない。基本的な権利と自由の点での圧力は、人々を命と財産を守る不安に駆り立てている。思想と自由の自由は大きな傷を負っている。メディアは完全に包囲されている。

こうした否定的な景観は、一刻も早く終わらせなくてはならない。トルコが、EU加盟の道をすすみ、成熟した民主主義という目標を再び活性化することは、トルコに一息つかせることになるだろう。バルコニーで語られた言葉は、この点で希望を約束した。この歴史的な言葉と、これからの施政が一致することを望みたい。そして、トルコが、友愛・連帯の唄声のもとで、より近代的、より民主的な地平へと飛び立つことを。これは、人々がAKPに与えた最後のチャンスをうまく使うということを意味する。同時に、トルコが新しいダイナミズムを手にすることも意味するのだ。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:39088 )