Ezgi Basaran コラム:エルドアンがパンドラの箱を開けたのはいいことだった
2015年12月03日付 Radikal 紙

米国財務省が頻繁に更新しているテロ組織の資金源リストは、世界を包む紛争状態に貴重な糸口を与えている。

エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領に「石油でISとつながっているのはそちらの方だ」と反論したが、私は昨日の記事で、これについて正当な根拠があると書いた。
エルドアンが言及したシリア・ヤブルード出身の実業家、ジョージ・ハスワニーという人物が、過去にロシアと奇妙な関係にあり、ISを通してアサド政権へ石油を転売していたことは事実である。
ではなぜそのようなことが分かるのか?エルドアン大統領が根拠とした米国財務省による、密輸やテロに加担する人物、組織、国家のリストが、それを示しているのだ。
昨日の記事ではさらに、エルドアンがこのリストに言及したことで一種の「パンドラの箱」を開けたことについても述べた。
それでは、このことについて詳しく見ていこう。

上述のリストにトルコと関係がある人物も挙げられていると、皆さんは推測していることだろう。
そして残念ながら…
2015年9月12日付のリストには、ハマスのヨルダン川西岸地区のサリヒ・アローリー兵長の名が挙がっている。アローリーは、昨夏ガザ地区で起きた50日間の戦闘の中でイスラエル人の若者3人を誘拐・殺害した事件を引き起こした人物として知られている。

米国財務省のテロ組織の資金源に関するベテランの専門家であるジョナサン・シャンザー氏に、先日この件について話を聞いた。
「アローニーは、ハマスの指導者として公式に認定されており、米国の財政制度によってブロックされている。財務省によるこの決定は、アローニーが資金援助を受けることを違法とするものだ。手元にある(米財務省の)リストは、アローニーがアンカラに3年間滞在していたことを指摘する。米国もイスラエルも、この人物がトルコにいることは間違いなく知っていた。それどころか、イスラエルとトルコの間の緊張の根本的な原因のひとつがこれだった。米財務省のこの指摘により、トルコはハマスの指導者の行動について無知を装うことができなくなった。トルコは法的な責任を負う可能性があったが、米財務省の決定を察知し、アローニーを第三国へ送ったのである」

この件で奇妙な点がある。アローニーが、つまりハマスの指導者がトルコに潜伏している状況が長い間報道されていたため、当時のCHP議員ファールク・ローオール氏が国会で動議として「このような男の噂が広がっているが、トルコにいるのか」と質問したことがある。しかし、答えは何もなかった。

プーチン問題で米財務省のリストが言及された。しかもよりによってエルドアン大統領が言及したのだ。ほかにどのような人物がいるのかと、当然世間の目は集まるだろう。アローニーはリスト上の最重要人物ではある。しかし残念ながら彼だけではないのだ。

米財務省が2015年8月3日付で公開したリストには、トルコ人の事業家ムスタファ・A氏、エルカン・D氏とその兄弟セルカン氏、ウフク・K氏及び彼らの会社が挙げられている。シリアのアサド政権にエネルギー資源を提供したのがその理由だ。彼らは、パナマ共和国に登録しているがイスタンブルのシシュリで事業展開しているミレニアム・エネルギー社の仲介により、一定量のLPガスを輸送したとされている。

「それがなんだ!彼らの責任をトルコ政府が取れというのか」と思うことだろう。しかしプーチン大統領も、リスト上のロシア人に関して同じことをいうだろう。メルケル首相もドイツ人に対してそう言うだろうし、オランド大統領もフランス人のためにそう言うだろう。
そう言うのが簡単だからだ。
重要なことは、次のことに気づくことである。

米国が頻繁に更新しているテロ組織の資金源リストは、世界を包む紛争状態に重要な糸口を与えているのだ。

氷山の一角に過ぎない情報であるにも関わらず、紛争がなぜ終わらないのか、誰がどのようにして、人々の死、衝突、国を追われる状況から私腹を肥やし、どのような利害関係を構築しているのか、このリストは各国政府を巻き込んだ形で示してくれている。

そのため、このリストが参照され、世界が見守るこの危機の中で世間の目に触れるようになったことは非常に良いことだ。とても役立つことだ。

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( 翻訳者:今城尚彦 )
( 記事ID:39309 )