トルコ・イスラエル関係、正常化へ1歩
2015年12月18日付 Hurriyet 紙


イスラエル―トルコ間の関係正常化に向け、仮の合意に達したことが報じられた。ヒュッリイェト紙に話したアンカラの関係筋は弊紙に対し「いまだ最終合意に至ったわけではない。ただ、交渉は前向きなかたちで継続している」と語った。

ロイター通信は匿名のイスラエル関係筋の話として、トルコとイスラエルがスイスで協定に調印したと報じた。
合意によると、イスラエルがマーヴィ・マルマラ号襲撃事件に対してトルコへ賠償を支払い、双方の大使が任務に復帰する。
イスラエル・ハアレト紙に語ったイスラエル関係筋によれば、ネタニヤフ首相のトルコ関連顧問団は、スイスでトルコのフェリドゥン・スィニルリオール外務事務次官と協定案に調印した。

■協定は以下の5項目から成る

1.マーヴィ・マルマラ襲撃事件への賠償

両国接近の一歩を踏み出した最も重要な要因は、マーヴィ・マルマラ号襲撃事件の賠償関連だ。
イスラエルは、トルコ人の同胞10人が命を落とした2010年の襲撃事件に関連し、トルコに対し2,000万米ドルを支払う。
この賠償金は犠牲者や負傷者の親族にわたるよう、民間の基金に手渡される。

2.両国大使の業務再開
第二条として、トルコ―イスラエル両国間関係を正常化し、召還している大使を復帰させる。

3.トルコは訴えを取り下げる
第三条として、トルコは襲撃事件を起こしたイスラエル軍に対する訴えを取り下げる。この決定はトルコ大国民議会で法案として成立させる。

4.トルコ内でのハマスの活動に制限を加える
第四条はハマス関連。ハマスの軍事部門幹部で、複数の兵士を誘拐し殺害した容疑でイスラエルが訴えを起こしているサリフ・エル・アルーリをトルコから追放する。また、トルコ内でのハマスの活動に制限を加える。

5.天然ガスをめぐる可能性を探る
第五条は最も重要で、協定の調印後、トルコ―イスラエル間で天然ガスの探査協力を行う。また、トルコはイスラエルのガスを購入し、イスラエルの欧州向けガス搬送パイプライン建設を許可する。

イスラエルの関係筋はハアレツ紙に対し、協定に向け詰めは残っているものの、危機は解決の方向に進んでいると語った。

■ガザ封鎖をめぐる条件は取り下げられたのか?

イスラエル関係筋の話の後、トルコの外交関係者は、トルコ―イスラエル間で関係正常化のための交渉を行っており、早期に合意に達するよう努力していると伝えた。アンカラ政府は賠償と謝罪を求める一方、ガザ封鎖も解除するようイスラエルに条件提示していた。最終的にベラト・アルバイラク・エネルギー相は今日、次のように説明した。「エルドアン大統領はトルクメニスタン外遊からの帰路、関係正常化のための3つの条件が必要だと語った。これらの条件が果たされない限り、トルコがこの問題で関係正常化を望むとは考えられない。」

■最終合意には達していない。交渉は前向きに続いている

首相府関係筋は、「トルコ―イスラエル間の交渉に関しては、2国間で最終合意には至っていないものの、交渉は前向きに続いている」と説明した。
また、トルコ―イスラエル間で一時期以来、交渉を続けてきたことを明らかにした。
交渉の情報を提供した関係筋も同じく「トルコ―イスラエル間の交渉に関しては、2国間で最終合意には至っていないものの、交渉は前向きに続いている」と評している。

■外交筋の説明

弊紙に語ったアンカラの情報筋も「まだ結論には至っていない。ただ交渉は前向きに続いている」と述べた。
外交筋はアナドル通信(AA)の特派員に対し、トルコが以前に明らかにした枠組みに基づき正常化へ向けた当事者間交渉を進めていると説明した。イスラエルメディアの2国間で協定が成立したとする主張に関し、同情報筋は、関係正常化交渉に早期に結論が出るよう努力が続いていると説明した。

■トルコ―イスラエル関係

トルコ―イスラエル関係は2010年3月31日、公海上で閉鎖されたガザへ救援物資を運搬していたマーヴィ・マルマラ号をイスラエル軍が撃沈、10人が犠牲になったことで崩壊した。
トルコはマーヴィ・マルマラ事件以前水準への関係回復の条件として、攻撃に対するイスラエルの謝罪と犠牲者への賠償、ガザ封鎖の解除を提示。このうち最初の条件は満たされた。
イブラヒム・カルン大統領府報道官は12月9日、大統領府での質疑応答で、トルコ―イスラエル間の政治関係正常化に向けた過程が続いており、イスラエルがマーヴィ・マルマラ号攻撃の賠償とガザに行っている禁輸の解除で前進があったと話した。
また報道官は、「イスラエルの関係者がこの問題で一歩を踏み出せば、我々も当然その枠で必要な一歩を踏み出す。しかし、特に賠償についての合意の履行、交渉の決着が重要となる」と語った。
一方、イスラエルの外務次官・ドーアー・ゴールド氏も12月14日の声明で、「イスラエルはトルコと常に安定した関係を持ちたいと望んでおり、そのための方策を引き続き模索している」と述べた。

■協定についてトルコで最初に報じた、弊紙記者のヴェルダ・オゼルが今日の声明について解説する

ここ数週間、トルコ・イスラエル各首脳部から正常化を暗示する向きが伝わっていた。また私は先週、あるトルコ高官の「近く関係回復もあり得る」との言葉を記事にしており、我々には想定の範囲内だった。ただ、唯一未だ行われていないのは協定の調印だ。この最初の一歩はネタニヤフ首相が踏み出すべきものである。では、一連の過程はなぜ急に加速化したのだろうか。
最大の要因は、地域で変化するダイナミクス―新しい力の均衡だ。地域の各国関係が急速に明確になりつつある。イラク、イラン、シリア各国はロシア主導で行動している。その一方、イスラエルは不倶戴天の敵・イランが重きを置く「シーア派枢軸」を極めて不快に感じており、アンカラにとっても、特にロシア機撃墜事件の後はこの「枢軸」が真逆の存在に転じてしまった状態だ。結果としてトルコ・イスラエル両国の地域に関わる戦略的利益が完全に一致した。同時にアンカラは、トランス・アトランティックの安全保障同盟―すなわちNATOと、米国との関係強化に力を入れている。欧米と戦略的協力関係にあるイスラエルは この図式上でも重要だ。また、直近ではエネルギー関連のことがある。
ロシアとの間で天然ガス問題発生の可能性と共同エネルギープロジェクト頓挫の可能性は、アンカラ政府に他の選択肢を模索させる要因となっている。そのうえで、東エーゲ海に近年出現した巨大ガス田のことを加味してほしい。まるで運命の網が2国の接近に向け紡がれているようではないか!

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( 翻訳者:貝瀬雅典 )
( 記事ID:39423 )