Unal Cevikozコラム:シリアを利用してEUトルコ関係改善なるか
2016年03月10日付 Radikal 紙

トルコ内政を原因に、大きな成功の必要性が高まっている。欧州連合(EU)に僅かに開かれた扉も、内政という点からこのような成功例として提示するための見栄えのいい衣だ。

3月7日にブリュッセルで開かれたEUとトルコの首脳会談は、トルコがシリア難民問題を通じて対EU関係に新たな進展をもたらす絶好の機会となった。

トルコは長い間、EU加盟交渉の難航に苦しんでいた。この数年間にみられた外交上の軌跡は、トルコを黒海、カフカス、中東、そして東地中海で包囲される立場に押し込めていた。トルコは外交における「善隣友好」時代から「諸問題と友好的隣国なしの」時代に移行し、トルコの前には長年軽視されてきた欧州以外の選択肢は残されていなかった。一方で欧州も、もはや以前のようにトルコを囲い込もうとはしなかった。欧州にとってトルコはEUの原則や標準に当てはまる国ではなく、民主主義的な権利や自由が徐々に制限され、人権侵害が限度を越した一つの中東の国へ姿を変えつつあると考えられていた。

2015年11月24日に始まり、急激に進展したトルコ・ロシア関係における危機は、トルコが不可避な形で欧州に回帰する大きな要因となった。一方で今回、欧州のトルコに対する認識を変えるために、何か施策が必要だった。そこでシリア難民はこうした点からトルコの付け入る隙となり、欧州の弱った腹に向けて速やかに進路を変更した。3月7日、ブリュッセルでEUとトルコの関係構築に向け、新たなロードマップが描かれた。このロードマップの実現可能性は、一週間以内にEU諸国との間で行われる協議や会談を経て、3月17日・18日に開かれるEU首脳会談で決定される。

六項目について合意に至ったとされるこのロードマップの主な内容をトルコ社会がよく理解するメリットはある。EUは何よりもまず、移民の流入を抑えて対処可能な問題にしたいと考えている。そのため、トルコ経由でギリシャへの密航ルートを使って入国する難民を、すべての費用はEUが負担するという条件で、トルコへ送還するとの合意が協定の第一前提となっている。これに当てはまる難民が果たして何人いるのか、いつまでにトルコに送還するのか、送還した後はどこへ住まわせるのかに関して、計画は不明瞭なままである。

二つ目に、欧州はシリア難民をギリシャからトルコに送還する見返りに、以前公表された約束に則りシリア難民のみの受け入れを認めている。EUはもちろん、受け入れるシリア人を自ら選ぶだろう。この難民交換の最も重要な方向性を、EUが自らの人的資源の必要性に応じて熟練労働者を選別するという選択肢が作り上げている。「ギブアンドテイク」の考えの下で実行されるであろうこの難民交換が、どちらの側も同じ速度で進むと期待されているとは信じがたい。トルコへ来る人たちはさらに加速してやってくる可能性があるが、トルコから出て行く人々が明らかとなるのは、EUが綿密な手続きを行うのに必要とするので、よりも長引く可能性がある。さらには、EUも望んだ難民の移住を管理し、調整して、時間を引き延ばすこともありうる。

協定の三つ目の内容はトルコ国民に適用されるビザに関してだ。遅くとも2016年6月末までに施行を目指す「ビザの自由化へのロードマップ」がEU全域で進められなければならない。これが、2016年6月末にトルコ国民がEU諸国へ手ぶらで行くことができるという結果にたどり着くためには、かなりはっきりした想像力をもつ必要がある。EUがこれを実施するには、トルコに実施を求める条件があるのと同様に、EU加盟国も各国で決定を下し、施行に移る手続きをしなければならない。実際この決定が実行されれば、シェンゲン協定諸国のみを縛ることになる。例えばシェンゲン協定の適用範囲外であるイギリスでは、これをどれほど適応するのかわからない。さらに、そのシェンゲン協定にもひびが入り始めている。加盟国の中にはシェンゲン協定の適用を凍結させる国さえあった。したがって今後、すべての詳細がたったの三ヶ月半ですべて決められるのかどうか、みんなで確かめようではないか。

四つ目の内容はEUがトルコへ30億ユーロの資金援助を計画していることに関してだ。最終合意に伴い、資金の支払いが3月末までに始まる。これにより、4月1日にトルコへ30億ユーロが流れ込んでくるということではない。ここで言及されているのは、計画のうち、支払が開始されるということのみだ。これに加え、EUはトルコに追加資金を保証するということに関しても決定が必要である。トルコはさらに30億ユーロを要求した。EUはいまだ追加資金に関する決定は行っていないようで、決定しても、資金がいくらになるかについて、いまだはっきりとしたことは決まっていない。これに関して、厳しい交渉が行われることは明らかだ。

五つ目の内容は、2015年10月に欧州評議会が行った評価基準に沿って、トルコとの加盟交渉再開に関する決定が取り急ぎ準備されるということだ。EU加盟国の間では、トルコとの交渉再開に熱心でない国々を納得させるために、非常に重要となるロビー活動が行われることになるが、この役割をトルコのEU加盟に反対していることをあらゆる機会に口にしたドイツのメルケル首相が担うことになろうという。これはかなり皮肉ではないだろうか。

最後に、シリアの人々の状況を良くするため、EUはトルコと一緒に努力する準備ができていると表明している。この取り組みの目的は、シリアの人々が自分たちの国の中でより安全な地域で生活する支援をするということだ。取り組みがどのようなものになるかについてはまだ何も分かっていないが、ジュネーブ会談の第3ラウンドでもたらされるであろう成功基準において、これについても明確な進歩がみられる可能性がある。

トルコの側では、上で述べたような主内容が並んだロードマップが、大成功として示された。一方EUでは各国の世論で異なる評価や議論が行われ始めた。結果がどうなろうと、トルコは、[チャナッカレ戦闘勝利の]3月18日という日の歴史的な意義や重要性に合わせ、内政上の勝利を宣言する用意をしている。「内政」と言っているのは、外交と何の関係もないからだ。

長年、EU加盟を視野に入れたことで中東全地域からの羨望を集め、世俗的で民主的な法治国家モデルと議会制民主主義を取り入れ、この地域に希望と発想をもたらすトルコは、この特徴を生かしてEUとの関係を維持・発展させていれば、勝利を収められたはずだった。その勝利は、外交がポピュリストの目的により内政の道具とされたとは解釈されず、外交上の成功として数えられたであろう。

しかしながら[今やっていることは]今日の中東における痛みや失望、失望や不当な扱い、不公正さを利用して、トルコが対EU関係において経験する手詰まりを解消するため扉の隙間を空けること以外の意味を帯びていない。中東諸国は、これを咀嚼し苦痛に耐えながら、希望や発想の妖精が飛んでいくのをただ受け入れるしか選択肢は残っていないのである。

トルコ内政を原因に、大きな成功の必要性が高まっている。EUに僅かに開かれた扉も、内政という点から成功例として提示されるための見栄えのいい衣にすぎない。このような土台の上に構築されたEU・トルコ関係の今後が、どれほど信頼をもって維持されていくかに関しては、外交も内政も保証できる状況ではない。幸運あれ。

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( 翻訳者:星井菜月 )
( 記事ID:40022 )