中東研究センター田中所長、東京大学池内准教授、東京外国語大学青山教授ら日本人研究者はシリア情勢をどう見ているか?
2016年10月14日付 al-Hayat紙


■「荒廃からの復興」に向けたシリア人のための3項目からなる「日本風処方箋」

【東京:イブラーヒーム・ハミーディー】

日本の国公私立大学やシンクタンクの研究者たちは、複雑に展開するシリア問題に様々な分野から取り組み、「荒廃からの復興」を遂げた日本の経験をシリアの人々がどう活用できるかを検討することに関心を強めている。

中東研究センター(日本エネルギー経済研究所)所長の田中浩一郎氏は、シリア情勢を「アラブの春」の一環として位置づけ、こう述べている。「一部の体制は崩壊したが、それによって良い結果はもたらされておらず、中東は大きな変化の段階のただ中にある。我々は、それがどのくらいの時間を要するのか、この変化がどこに向かっているのか、良い結果をもたらすのか、底なし沼のなかにとどまり続けるのかを知る由もない」。

田中氏によると、シリアの戦争は「シャームのくにぐに(東アラブ地域)の国境を変更させ、シリアのいかなる当事者もシリア全土で自らの意思を通すことはできないだろうし、単独で勝利することもない。シリアの体制が(国土の)70%を制圧していたのなら、ロシアは体制を支援し、全土を取り戻そうとしたろう。しかし、現実は違う。ロシアでさえ、自らの意思を体制(アサド政権)に押しつけることはできないだろう。なぜなら、アフガニスタンでも似たような状況を目にしているからだ。危機のなかで、集団としてのつながりがなくなり、人々の調和が失われた状況下で、外国の当事者らがそれに乗じ、戦争を継続しようとしている」。また「諸外国がシリア情勢への関心を失い、事態を放置し、戦争を戦う当事者たちの手に委ねてしばらくすれば」、時の経過なかで「明確で確固たる境界線が画定しないままに、地域諸国の支援を受ける複数の地域が交錯するかたちで作り出される」と付言した。

田中氏はさらにこう述べている。「(紛争勃発から)6年が経っても、我々は、米露の合意も地域諸国間の合意も目にしていない。すべての当事者が、和平合意を反故にできる一方、包括的合意を課すことができる当事者はいない…。また問題が民主主義を求める動きから始まったにもかかわらず、我々が現在、非民主的な手段を必要としていることに驚愕する」。田中氏によると、シリアは、戦闘停止、包括的政府の樹立、そして移行期と選挙を推し進めるための「国際的な委任統治」を必要としているかのようだという。それには、米国で新大統領が登場するのを待たねばならず、新大統領が「中東の同盟国との関係を再活性化させ、ソ連崩壊と中東におけるロシアの同盟国の崩壊への「逆襲」を企図しているヴラジミール・プーチン大統領との間で問題解決をめぐって相互理解に達するため、圧力をかけていくことになるだろう」という。

一方、東京大学で政治的イスラームについて研究する池内恵氏は、「アラブの春」のなかで「中東諸国の軍が果たした役割の違い、すなわちデモ参加者の側に立ったチュニジアとエジプトの軍と体制側に立ったシリア軍の役割の違い」が明らかになったと考えている。池内氏は、シリアでの戦争の継続によって「人々は、宗派に基づいて、自分たちによって快適な地域に移ることになる」と指摘している。彼によると、問題解決の始まりとは「犯罪に関与した者の処罰を改めて始めること」にあるべきだという。

外交関係、西南アジア、アラブ世界を専門とする青山弘之氏(東京外国語大学)は、数年にわたってシリアの問題を詳細にフォローしきた研究者の1人で、従来型のモデルとは異なる「ハイブリッドな全体主義」を敷く体制(アサド政権)のありように注目し、それが体制を存続させたとしている。青山氏によると、日本は、シリアや中東から遠いがゆえに、人々は事態を「善と悪の内戦と短絡的に捉える傾向が強く、善は勝ち、悪、すなわち体制、ロシア、イランは負けると考えることがほとんど」だという。こうした状況下で、「ロシアとイランが体制を支援しており、体制崩壊はない」との前提で青山氏が意見を述べると、16年に及ぶ研究のなかで提示された「客観的な見解」だという理由で、ダマスカスを「支持」しているとの評価を一部の人から受けてしまう、という。その一方、日本での(シリアに対する)関心は時の経過とともに失われ、人々は「オリンピックやノーベル賞でもフォローするように」事態に注目する程度だという。青山氏は「不幸にも、シリアは湾岸戦争後のイラクと同じ道を進んでいる。中央集権的な権力を有さない中央政府があるだけだ」と述べている。

シリアでは、現地情勢の詳細やその進展ついてほとんど理解されないまま、国際紛争、地域紛争がシリアで起きている。青山氏によると、ほとんどの場合、「侍」の子孫たちの目に問題はそう写っていると約言できるという。それゆえ、ワシントンとの戦略的対話をフォローし、中国、ロシア、そして北朝鮮との関係にどのような影響を及ぼすかを研究している拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏は「ヒラリー・クリントン氏が大統領選挙勝利した場合、バラク・オバマ米大統領の政策が継続される可能性」があり、シリアの人々はこのことを考慮すべきだと懸念している。一方、慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一氏は、クリントン氏が政策転換し、世界中の同盟国にそのことを説得し、超大国としてロシアと対話し、シリア情勢などで相互理解に達しようとするだろう、と見ている。

米国の変化がシリアの将来にどう影響を及ぼすか、そしてシリア国内の当事者や、地域諸国と彼らの関係に対する見方への評価は様々である一方、日本の研究者たちは、日本の過去の経験をシリアに適用する可能性についても検討している。各国の専門家らによると、破壊されたインフラや経済を復興するには約2,400億米ドルが必要だと試算、日本はそのなかで、発電所の復旧事業への資金供与など16億ドル分の人道支援を行っている。アジア・アフリカ言語文化研究所(東京外国語大学)の黒木英充氏は「日本は完全に破壊されたが、廃墟のなかから復興した」と述べる一方、細谷氏もこう明言している。「問題は廃墟のなかではなく、人々のなかにある。日本人は70年前に極限状態に陥り、その後、復興を開始した。シリアでの戦争が終わり、人々に受け入れられるような新政府が樹立されれば、再出発できる」。細谷氏はまた、シリアが復興し、日本の経験を活用できるかどうかは、「シリア政府のクオリティ、新段階へのシリアの人々の参加、国際社会と中東地域によるシリア政府支援」の3つにかかっていると付言した。

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(翻訳者:メディア翻訳アラビア語班)
(記事ID:41414)