「ヒーロー」Tシャツ逮捕についての7つの問い
2017年07月25日付 Cumhuriyet紙


7月15日クーデター未遂事件において、レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領暗殺未遂の罪で裁判中のギョクハン・ギュチュル容疑者が、今年7月13日の公判で「Hero: Heroes are immortal」と書かれたTシャツで姿をみせた。この件をきっかけにトルコ全土で「ヒーロー」Tシャツ着用者の逮捕の波が始まった。

■問1:逮捕の法的根拠は?

逮捕者は、テロ組織のプロパガンダを行ったという罪に問われた。BBCトルコ語版のオヌル・エレム記者の報道によれば、逮捕の法的根拠は対テロ法第7条に基づいている。

「テロ組織構成員または支持者であることを明示しうる形で組織を表すロゴや写真、マークを掲げたり、そういったものを身につけたり、あるいはそれらがデザインされたユニフォームを着用する行為は、1~5年の懲役に処される。」

イェディテペ大学法学部の専門家バルシュ・エルマン氏は、逮捕がこの条項に基づいて行われたとしても、「これが実際に犯罪であると認められるには「ヒーロー」Tシャツがギュレン派の「ユニフォーム」であること、あるいは組織のロゴであることが認められる必要がある」と注意し、次のように続ける。

「Tシャツ着用者が、テロ組織の支持者であることを示す目的でその行為を行うか、あるいはテロ組織のユニフォームを着用していることに対し自覚的であり、かつそれを望んで行っていることが要件となる。」

■問2:逮捕されたらどうすればよいのか?

エルマン氏は、これまでにTシャツのために逮捕された人々に賠償請求権があることを明らかにするとともに、「憲法裁判所や欧州人権裁判所に個人訴訟を起こせば、賠償金を得られるかもしれない」と述べている。そのためにはTシャツ着用が「テロ組織を支持する目的ではなかった」ことが条件となる。では政府の場合は、ある人がTシャツを「テロ組織を支持する目的で」着用したのだといかにして証明できるだろうか?エルマン氏によればそれは容易ではない。

「当局には、その人の振る舞いが何を目的に行われたのか証明する作業と起訴調査を行う責任がある。ギュレン派にシンパシーを感じている人がTシャツを着用したのなら罪に問える可能性もあるが、そのためには上記以外にも2つの要素が揃う必要がある。」

「その服装が組織内部で認められたユニフォームまたはロゴであり、かつ、当人がそれを着用した目的がテロ組織支持者であることを表明するものであることである。現実には、この2要素の裏付けは不可能であると思われる」とした。

■問3:「ヒーロー」Tシャツを違法扱いすることは可能か?

専門家のバルシュ・エルマン氏は、政府がこうした服装を禁止するには、「罪を構成する」必要があるが、それはいかに非常事態(OHAL)中と言えども国会を経て発出される法案でのみ可能となことだと話す。

「特定の衣服の着用を禁じるにはそれについて、それが犯罪であるとする必要があり、いくら非常事態(OHAL)中であっても議会から発出される法案によってのみ可能となる。」
「さらに、我々はそれを「中立的行動」と呼ぶが、原則として法に背かず、法に適った振る舞いをする人がルーチンとして行う行為を犯罪とすることは、憲法ならびに欧州人権条約に違反する可能性がある」
「こうした理由から、上記の方法で特定の罪を創造することは不可能だろう。」

■問4:なぜ非難されるのか?

「ヒーロー」Tシャツを着用していたのがクーデター計画に参画した罪に問われている容疑者だったとしても、Tシャツ自体は国内生産者により法の範囲内で生産され販売されている商品である。
Tシャツを「テロ組織のユニフォーム」として認めるのは困難と明かしたバルシュ・エルマン氏も、「トルコ国内の店舗で法の範囲内で販売され、テロ組織構成員以外の人々も法に触れることなく購入可能な衣服を「ユニフォーム」と認めるのはおよそ不可能」と話す。

■「権利と自由への深刻な介入」

「人々が、所持や着用を禁止されてない商品を着用するのは法的権利の行使行為である。この権利は表現の自由と個人生活の尊重を希求する権利である」と述べたバルシュ・エルマン氏は、刑法における「萎縮効果」の概念にも注目している。

「刑法では犯罪防止や抑制を目的として、本来可能な行為を禁じることを「萎縮効果」あるいは「chilling effect」と呼ぶ。これは人権や自由への深刻な介入と位置づけられる。政府が、適法な行動をとった人々の自由領域を制限するような振る舞いをするのは、回避されなければならない」

■問5:これまで「ヒーロー」 Tシャツが何着販売されたか?生産者のDefactoの言い分は?

Tシャツ着用者が逮捕されたり、市場から商品を回収していることに対し、我々はDefacto社広報担当者に質問状を送った。これに対し、今回の「不幸な事件」は同社とはまったく関係がなく、そのため同社はこの件で題にいかなるコメントも控えること、今日までいかなる発表もしてない旨の回答があった。

■問6:当局はどのように逮捕を説明するのか?

内務省メディア関係者は、「ヒーローTシャツ着用者を逮捕せよ」という指示を警察に出したとは考えていないとしており、法務省メディア担当もこの件で調査を行ったと明らかにした。
一方で、首相官邸のメディア担当はこの問題に関しては情報は入っていないとしている。
また、警察庁のメディア・広報・プロトコル室長のエンデル・セヴィム氏も、この件は司法的問題であることから情報公開はしないと語った。

■ベキル・ボズダー報道官「司法当局は当然、(無関係な人を)区別する」

政府報道官のベキル・ボズダー氏は7月24日に「本件は司法の問題である」という発表を行い、次のように付け加えた。

「この問題は司法の問題だ。司法は公平かつ独立である。トルコの法に従い、通報や情報提供を調査するのと同様、法が定める範囲で、独自の調査も行うことができる。(独自にも)調べることになる。」
「当然、司法当局はテロ組織の指示で着用した者と、事情を知らずに着用した者の区別を行うはずだ。これは司法プロセスの中で解決される問題である」

■「司法プロセス内の中で解決される問題」

ギョクハン・ギュチュル容疑者が7月13日の公判に「ヒーロー」と書かれたTシャツ姿で現れた件について、政府広報官のボズダー氏は7月15日に次のような発表を行った。
「(ギョクハン容疑者のTシャツ着用は)自発的選択だったと考えている。しかし、その背景にある意図は調査の結果明らかになる。」

「法を犯した者、過ちのあった者については別途、制裁を適用する予定である。刑務所では今後、いかなるイラスト、記号、文書、メッセージを含む物品も入廷時に着用は許可されない。そういう決まりを作った。」

■イルヤス・ヤヴズ検察官「姉が小包で送ってきた」

一方、ムーラ県共和国検察のイルヤス・ヤヴズ検察官は、Tシャツに対する調査の結果、ギョクハン・ギュチュル容疑者が着用していたTシャツは彼の姉が小包で届けたもので、荷物には「あなたは我々のヒーローです」と書かれた手紙も入っていたことを明らかにした。
ヤヴズ検察官は、「この件に関連して、ギョクハン・ギュチュル容疑者と姉、刑務所監督者、任務についていた憲兵について、司法と行政上の捜査を開始した」と述べた。

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(翻訳者:原田星来)
(記事ID:43089)