エジプト:ISISの衰退とともに高まるローンウルフ型テロの脅威
2018年01月04日付 al-Hayat紙


■エジプト:ISISの細胞組織能力低下とともに「ISISローンウルフ」の脅威が高まるとの推測

【カイロ:アフマド・ラヒーム】

エジプトの治安機関はこの数週間、クリスマスの祝賀行事に合わせて治安機関施設やキリスト教関連の事務所を標的とした一連の攻撃を未然に防いだ。治安機関は、カイロに隣接するアジトに潜伏していた過激派集団を逮捕・殺害し、武器や高性能爆薬を押収した。しかし、こうした取組にもかかわらず、テロリストたちは依然として攻撃の実行力を有していると専門家らは見ている。専門家らは、今年(2018年)は「ローンウルフ」の脅威および「ソフト・ターゲット」を狙った攻撃の危険性が高まり、各界に大きな衝撃を与えるかもしれないと推測している。

治安機関はこの数か月で、ISISに属するテロ細胞複数を拘束した。ISISの構成員らは、シナイ北部に治安機関が敷いていた包囲を抜け出し、新イスマーイーリーヤ市の運河の東西および農地に潜伏していた。また、カイロ南部の県境では、同胞団に属する武装組織、特にハスム運動(注:新興のイスラーム主義武装組織。2016年7月にファイユーム県の警察署長を暗殺し、その犯行声明を出して世に名を知らしめた。以降、スィースィー政権を支持する政界・法曹界・宗教界の要人の暗殺作戦や、軍・警察に対する攻撃作戦を実施している)の構成員の動きが確認されている。

治安機関はテロ細胞を先回りし、これに打撃を加えることを最優先事項として実施しているが、カイロ南郊ヘルワーンのマール・ミナ教会でISISテロリストが行った襲撃のような、影響力の大きい同時多発攻撃が起きるのを防ぐことはできなかった。同教会に対する襲撃事件では、警官1名とコプト教徒6名が殺害された。この事件の実行犯は、教会襲撃前に同じ市内で商店を営むコプト教徒2名を殺害した他、「サイコロ・ゲームに興じる者」は不信仰者であるとの考えからカイロ南部の村にあるカフェの常連客3名を殺害していた。これらの攻撃の2日後、武装した人物2名がカイロ南部のウムラーニーヤ地区にある酒屋を襲撃し、コプト教徒2名を殺害した。

アハラーム政治・戦略研究センターで治安・テロ情勢を担当するアフマド・カーミル・ブハイリー研究員は本紙に対し、ヘルワーンで攻撃を行ったテロリストのイブラーヒーム・イスマーイールはISISローンウルフの一人であり、今後は彼のような人々が最大の脅威になると述べた。同研究員は、「最近のテロ攻撃作戦を分析すると、エジプトのタクフィール主義組織に激しい変化が生じており、今後の攻撃の典型は基本的に個人によるものになると推測される」と指摘した。しかし、同研究員は「この単独手法がとられれば、治安勢力間の犠牲者数は減るかもしれないが、民間人の死者数は増えるだろう」と述べ、「酒屋やキリスト教徒の商店、カフェ、映画館、ショッピング・センターを狙った攻撃など、90年代に採られた攻撃の形態が再び採られる」と推測した。また、同研究員は、ISISが本拠地での勢いを失ったのと引き換えに、その思想は同組織に感化されたローンウルフの間に広がりを見せている。これはエジプトでも最近起きていることであり、ウムラーニーヤやヘルワーンで起きた攻撃もまさにその一例である。

イスラーム集団(注:1970年代に結成されたエジプトのイスラーム主義組織。当初は、ムスリム同胞団の穏健路線に不満を抱いた若者による学生組織として結成された。1997年11月にルクソールで58人の外国人観光客を殺害したルクソール事件で広く知られる)の元幹部ナージフ・イブラーヒーム氏も、「ローンウルフ」の危険性についてブハイリー氏の見解に同意した。しかし、イブラーヒーム氏はヘルワーンでの攻撃について、これは「組織行動の一環で行われるはずだったが、治安機関が教会周辺でとっていた厳格な措置により組織的な作戦は未然に防がれた」可能性が高いと述べた。同氏は本紙に対し、「ウムラーニーヤでの攻撃は、ISISの思想に感化されたローンウルフが行ったものだ。しかし、ヘルワーンのテロリストは組織中枢に属する細胞組織の一員であり、おそらく上エジプトに潜伏するISISのクラスター細胞の一つと思われる。同地域のテロ細胞は、逃亡中のテロリストであるアムル・サアド・アッバースが指導している」と述べた。

イブラーヒーム氏は、「カイロ南方のファイユーム県やベニー・スウェイフ県、エジプト南部・上エジプトのケナ県は、ISISや同胞団系細胞組織にとって、過激派思想を持つ人間をリクルートする上で戦略的に重要な(人材の)宝庫とみなされている。これらの県は飢えや貧困が最も激しく、(公共)サービスがほとんど行き届いていない県の一つであり、これらの県ではダアワ(注:非ムスリムへのイスラームの布教、およびムスリム同士で善行を薦め合い悪行を禁じ合うことで、正しいイスラームの実践を目指すこと)が後退している」と述べた。同氏は、「最大の脅威は、(過激派集団の)リクルートに適した周縁化された地域、特に正しい宗教思想を欠いた村落からやってくるだろう」との考えを明らかにした。同氏は、「過激派思想が生じる原因が解消されなければ、我々は多くのローンウルフを前に驚愕することになるだろう」と述べ、「特に地域紛争が生じ、エジプトが狙われ、大統領選挙が近づく中、テロリストとして有罪判決が下された人々が次々と死刑に処されていることに対し、タクフィール主義者はこの先さらに攻撃の手を強めようとすることを考慮に入れる必要がある。それゆえ、過激派思想が生じる原因の解消が求められる」ことを強調した。

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(翻訳者:北本芳明)
(記事ID:44089)