2018年の本 50選(30. 安部公房、42. 柄谷行人)
2018年12月27日付 Hurriyet 紙


ヒュッリイェト紙書籍・芸術面の執筆者ドアン・フズラン、セリム・イレリ、A.オメル・トゥルケシュ、オメル・エルデム、ユジェル・カユラン、ハイダル・エルギュレン、イフサン・ユルマズ、メティン・ジェラール、エルカン・アルトゥーによって、2018年の良書50冊が選ばれた。数年ぶりに長編小説2冊を同時刊行したラティフェ・テキンの『漂流(Sürüklenme)』がトップに選ばれた。一方、児童書部門はデヴリム・ユルマズが10冊を選んだ。

1. 『漂流(Sürüklenme)』/ ラティフェ・テキン(Latife Tekin)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
ラティフェ・テキンは、同時に出版された2冊の交差する長編小説『漂流』と『マンヴェス・シティー』で彼女の原点―貧困に立ち返ったが、今作には一種の冒険的テイストが加わった。貧困がこれほどまで可視化されたことが、テキンを「見える」そして「見せる」言葉での表現に向かわせたのだろう。貧困が新たな形態をとったのと同じように彼女の言葉も新しく形成された。(ハイダル・エルギュレン評)

2. 『肉体の輪廻』(Bedenlerin Göçü)/ ユリ・エレーラ(Yuri Herrera)/ ノトス出版社(Notos Kitap)
ユリ・エレーラは、2000年代に執筆した3作の小説によって現代メキシコ文学を代表する作家のひとりとなった。『肉体の輪廻』は伝染病の恐怖が広がるある都市で2つのマフィアの家族を仲介している男の物語だ。言葉の可能性を限界まで追求し、特にダークな雰囲気が非常に魅力的な小説だ。(A.オメル・トゥルケシュ評)

3. 『恋人たちは狂っているもしくは硬貨投げ』(Aşıklar Delidir ya da Yazı Tura)/ アイフェル・トゥンチ(Ayfer Tunç)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
『恋人たちは狂っているもしくは硬貨投げ』は容赦ない本である。読んでいるときだけでなく読了後も読者を苦しめる。最初のページからその力を感じさせる。何層にも覆われた小説だ。愛を賛美したりもしくは貶したりする本ではない。愛をありのままに語る本だ。アイフェル・トゥンチはこの新作の中心に愛を据えながらも、実は忠誠心や家族の絆、秘密、嘘、希望や苦痛について論じている。(エフナン・アトマジャ評)

4. 『狭い部屋の中で』(Dar Bir Çember İçinde)/ベフチェト・ネジャティギル(Behçet Necatigil)、カムラン・シパル(Kâmuran Şipal)/ ヤプ・クレディ出版社(Yapı Kredi Yayınları)
5. 『待たれている恋人―手の中のすみれ』(Beklenen Sevgili-Elimde Viyoletler)/ セリム・イレリ(Selim İleri)/エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
6. 『「トルコらしさ」の取り決め―その成立、機能、危機』(Türklük Sözleşmesi –Oluşumu, İşleyişi ve Krizi)/バルシュ・ウンリュ(Barış Ünlü)/ ディプノット出版社(Dipnot Yayınları)
7. 『あなたが快く暮らせますようにと』(Siz Rahat Yaşayasınız Diye)/ ユスフ・アトゥルガン(Yusuf Atılgan)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
8. ナーズム・ヒクメトのノート(Nâzım Hikmet’in Cep Defterleri)/ヤプ・クレディ出版社5,000作目記念(Yapı Kredi Yay. 5000. Kitap)
9. 『死の作法(Ölüm Terbiyesi)』/ゼイネプ・サユン(Zeynep Sayın)/ メティス社(Metis)
10. 『ベイオール』(Beyoğlu)/ トゥラン・アクンジュ(Turan Akıncı)/ レムズィ社(Remzi)
11. 『こうして不幸が始まる』(Acı Bir Başlangıç Bu)/ ハビエル・マリアス(Javier Marias)/ ヤプ・クレディ出版社(Yapı Kredi Yayınları)
12. 『馬がバーに入っていった』(Bir At Bara Girmiş)/デイヴィッド・グロスマン(David Grossman)/スィレン出版社(Siren Yayınları)
13. 『歌って霊よ、歌を歌って』/ ジェスミン・ワード(Jesmyn Ward)/ ドアン出版社(Doğan Kitap)
14. 『突然の非現実での冒険』(Acil Gerçekdışılıkta Maceralar)/マックス・ブレッヒャー(Max Blecher)/ ジャガー社(Jaguar)
15. 『世界より下』(Dünyadan Aşağı)/ガイェ・ボラルオール(Gaye Boralıoğlu)/ イレティシム出版社(İletişim Yayınları)
16. 『さらに100年』(Yüz Sene Daha)/ ハイリイェ・ウナル(Hayriye Ünal)/ヘジェ出版社(Hece Yayınları)
17. 『買い物リスト』(Alışveriş Listesi)/ジェヴデト・カラル(Cevdet Karal)/エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
18. 『ポートレート』(Portreler)/ ジョン・バージャー(John Berger)/メティス出版社(Metis Yayıncılık)
19. 『祈りの花』(Dua Çiçeği)/カムラン・シパル(Kamuran Şipal)/ YKY
20. 『釘の刺さった箱―短篇と詩』(Çivili Sandıklar-Öyküler ve Şiirler)/フィクレト・ウルギュプ(Fikret Ürgüp)/ エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
21. 『アタチュルク』(Atatürk)/ イルベル・オルタイル(İlber Ortaylı)/ クロニック出版社(Kronik Kitap)
22. 『マンヴェス・シティー』(Manves City)/ラティフェ・テキン(Latife Tekin)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
23. 『脱線した列車』(Raydan Çıkan Trenler)/エルマン・ロンシーノ(Hernan Ronsino)
24. 『落下する恐怖』(Düşme Korkusu)/ アダーレト・アーオール(Adalet Ağaoğlu)/ エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
25. 『髭を生やした豚』(Sus Barbatus)/ ファルク・ドゥマン(Faruk Duman)/ ヘップ出版社(Hep Kitap)
26. 『精神の生活』(Zihnin Yaşamı) / ハンナ・アーレント(Hannah Arent)/イレティシム出版社(İletişim Yayınları)
27. 『T・S・エリオット全詩集』(Bütün Şiirleri, T. S. Eliot)/ エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
28. 『時々と永遠』(Ara Sıra ve Daima)/ セヴィン・オクヤイ(Sevin Okyay)/ On8
29. 『ウォルター・ベンジャミン著作撰集』(Walter Benjamin Kitabı-Seçme Yazılar)/トゥンチ・タヤンチ撰(Hazırlayan Tunç Tayanç)/ ディプノト出版社(Dipnot Yayınları)
『ラジオ・ベンジャミン』(Radyo Benjamin)/ ウォルター・ベンジャミン(Walter Benjamin)/ メティス出版社(Metis Yayınları)
『ウォルター・ベンジャミン-ゲルショム・ショーレム往復書簡1932-1940』(Walter Benjamin-Gershom G. Scholem-Mektuplaşmalar 1932-1940)/ ゲルショム・ショーレム編纂(Gershom G. Scholem)/ コレクティフ出版社(Kollektif Kitap)
30. 『他人の顔』(Başkasının Yüzü)/ 安部公房/ モノクル社(Monokl)
31. 『客』(Misafir)/ ネリマン・ユルドゥズ(Nermin Yıldırı)/ ヘップ出版社(Hep Kitap)
32. 『地表の疲労』(Yeryüzü Yorgunları)/ ネスリハン・オンデルオール(Neslihan Önderoğlu)/ジャン出版社(Can Yayınları)
33. 『王の二つの身体』(Kralın İki Bedeni)/エルンスト・カントロヴィチ(Ernst H. Kantorowicz)/ ビルゲス出版社(Bilgesu Yayınları)
34. 『68年世代とジャーナリスト』(68’li ve Gazeteci)/トゥールル・エルユルマズ(Tuğrul Eryılmaz)/ アス・マロ(Asu Maro)/ イレティシム出版社(İletişim Yayınları)
35. 『文学は記憶の中で生きる』(Edebiyat Anılarda Yaşar)/レフィク・ドゥルバシュ(Refik Durbaş)/ ドアン出版社(Doğan Kitap)
36. 『平凡な一日』(Sıradan Bir Gün)/ イェクタ・コパン(Yekta Kopan)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
37. 『藪』(Çalılık)/ Christian Jungersen/ アイルントゥ出版社(Ayrıntı Yayınları)
38. 『クルドの歴史と政治のポートレート』(Kürt Tarihi ve Siyasetinden Portreler)/ヤルチュン・チャクマク(Yalçın Çakmak)、トゥンジャイ・シュル編纂(Tuncay Şur)/ イレティシム出版社(İletişim Yayınları)
39. 『天気』(Hava)/ ブケト・ウズネル(Buket Uzuner)/ エヴェレスト出版社(Everest Yayınları)
40. 『残酷な夜』(Vahşet Gecesi)/ ジム・トンプソン(Jim Thompson)/ メフィスト出版社(Mephisto Kitaplığı)
41. 『ひよこ豆の部屋』(Nohut Oda)/ メリサ・ケスメズ(Melisa Kesmez)/ (セル出版社(Sel Yayınları)
42. 『アイソノミーと哲学の起源』(İzonomi ve Felsefenin Kökenleri)/ 柄谷行人(Kojin Karatani)/ メティス出版社(Metis Yayınları)
43. 『店を待つこと』(Bir Dükkanı Beklemek)/ ウウル・ナズルジャン(Uğur Nazlıcan)/ ヤプ・クレディ出版社(Yapı Kredi Yayınları)
44. 『60年代のトルコ:サズからジャズまで』(60’lı Yıllarda Türkiye: Sazlı Cazlı Sözlük)/ デルヤ・ベンギ(Derya Bengi)/ ヤプ・クレディ出版社(Yapı Kredi Yayınları)
45. 『人生は君の名前で始まる』(Adınla Başlar Hayat)(原題:Ways of Dying)/ ザケス・ムダ(Zakes Mda)/ アイルントゥ出版社(Ayrıntı Yayınları)
46. 『創造』(Tekvin)/ アリフ・エルギン(Arif Ergin)/ ドアン出版社(Doğan Kitap)
47. 『中世イスラム世界の書物と図書館』(Orta Çağ İslam Dünyasında Kitap ve Kütüphane)/ イスマイル・E・エリュンサル(İsmail E. Erünsal)/ ティマシュ出版社(Timaş Yayınları)
48. 『マニキュアを塗った手がドイツで電気コイルを巻く』(Manikürlü Eller Almanya’da Elektrik Robini Saracak)/ レア・ノチェラ(Lea Nocera)/ イスタンブルビルギ大学出版(İstanbul Bilgi Üniversitesi Yayınları)
49. 『行き止まりの家』(Yolun Sonundaki Ev)/ オヤ・バイダル(Oya Baydar)/ ジャン出版社(Can Yayınları)
50. 『スパイに興味がある人のために』(Meraklısı için Casuslar Kitabı)/ ムラト・イェトキン(Murat Yetkin)/ ドアン出版社(Doğan Kitap)

審査員:ドアン・フズラン、セリム・イレリ、A.オメル・トゥルケシュ、オメル・エルデム、ユジェル・カユラン、ハイダル・エルギュレン、イフサン・ユルマズ、メティン・ジェラール、エルカン・アルトゥー


■2018年の児童書10選

『一滴の海(Bir Damla Deniz)/ イングリッド・シャベール(Ingrid Chabbert)/ ウチャンバルック社(Uçanbalık)
絵と言葉がこの上なく調和し、読者の心を動かす『一滴の海』は、夢の実現に遅すぎるということは決してないということを「世代間の愛情の物語」によって説く。幼い子どもの思いやりや自己犠牲、勇気によって成し遂げられる英雄的な旅が、祖母の胸の中で消えかかっていた炎を再び燃え上がらせる様に読者の心が揺さぶられる。イングリッド・シャベールの詩的な文章に、イラストレーターのグリディ(Guridi)によるオリエンタルな雰囲気の絵が添えられる。

『初心者のための騎士道』(Acemiler İçin Şövalyelik)/ エリーズ・ドラン(Elys Dolan)/ ドアン・エグモント(Doğan Egmont)
『おてんば娘たちのための読み聞かせ2』(Asi Kızlara Uykudan Önce Hikâyeler 2)/ エレナ・ファヴィッリ(Elena Favilli)、フランチェスカ・カヴァッロ(Francesca Cavallo)/ ヘップ出版社(Hep Kitap)
『セミ』(Ağustosböceği)/ ショーン・タン(Shaun Tan)/ デセン出版社(Desen Yayınları)
『一滴の海』(Bir Damla Deniz)/ Ingrid Chabbert/ ウチャンバルック社(Uçanbalık)
『大好きな僕の木』(Canım Ağacım)(原題:Bertolt )/ ジャック・ゴールドスタイン(Jacques Goldstyn)/ ジャン・チョジュック(Can Çocuk)
『革命:地球上の全ての生命の物語』(Evrim, Dünya Üzerindeki Yaşamın Tam Hikâyesi)/ グレン・マーフィー(Glenn Murphy)/イシュ・バンク文化出版(İş Bankası Kültür Yayınları)
『すべてを誤解したネコ』(Her Şeyi Yanlış Anlayan Kedi)/ べヒチ・アク(Behiç Ak)/ ギュンウシュウ出版社(Günışığı Yayınları)
モルティーナ(Mortina)/ バルバラ・カンティーニ(Barbara Cantini)/ チュナル出版社(Çınar Yayınları)
『未来は何に似ているか』(Neye Benzer Gelecek)(原題:A l'avenir )/ オリヴィエ・デ・ソルミニアク(Olivier de Solminihac)/ トゥデム(Tudem)
『となりの人たち』(Komşularım)/ Einat Tsarfati/ レッドハウス・キッズ(Redhouse Kidz)

注:デヴリム・ユルマズ選。上記リストはアルファベット順。

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( 翻訳者:篁 日向子 )
( 記事ID:46007 )