Abdulkadir Selviコラム:イスタンブル再選挙に吹く風は?
2019年06月07日付 Hurriyet 紙

イスタンブル再選挙はバイラムなどお構いなしだ。むしろ、バイラム明けにはその風はより強く吹き始めるだろう。

エクレム・イマムオール氏は黒海沿岸都市を訪問中であった。選挙はイスタンブルで行われるが、イマムオール氏はトラブゾンやギレスン、オルドゥにいた。3月31日の選挙で「黒海沿岸都市」の票を獲得することに成功したエクレム・イマムオール氏は、この訪問で黒海沿岸都市部からの得票を守るためにラストスパートをかけたのだ。トラブゾンやギレスン、オルドゥで見られた関心の高さは、イマムオール氏の戦略が間違いではなかったことを明らかにした。実際、イスタンブル再選挙はとっくにイスタンブルの選挙ではなくなっていた。1千万人に及ぶイスタンブルの有権者が投票することになるが、その結果はトルコ全体にも関わってくるだろう。

6月23日の再選挙当日まで残すところ17日となり、私はイスタンブルで選挙の動向を探ることにした。公正発展党(AKP)と共和人民党(CHP)で選挙活動を行っている人物らと話した。

1:選挙当日までのラスト10日間は、戦場のようになるだろう。ここでの失敗が選挙結果を左右することになるだろう。
2:エルドアン大統領はメッセージを発信することで十分と判断し、直接的に選挙運動には参加しなかった。エルドアン大統領が最後にこの戦場に出てくることは、サプライズとして受け入れられるべきではない。
3:3月31日の選挙では、エクレム・イマムオール氏とビナリ・ユルドゥルム氏の間に13,709票、割合でいうと1.5%の票差があった。今回の選挙では、有権者は半数となる。至福党はこの争いから脱落し、民主左派党(DSP)も消えてしまった。つまり、選挙に勝利する候補者は前回のように1.5%の差で勝つということはありえないのだ。僅差という結果にはならず、明白な差をもってして勝利することになるだろう。2人の候補者間には数ポイントの差がつくと予想される。

■AKP党員の意見

AKP党員らは、「トレンドは上昇傾向にある」と話す。しかし、この上昇気流は選挙で勝利するのに十分だろうか?そもそも、なぜ以前はトレンドが上向きではなかったのだろう?高等選挙委員会(YSK)が下した無効決定が、政治的なバランスを混乱させてしまったように見える。エクレム・イマムオール氏に対し、急速に被害者としての風潮が形成されていた。正規化のプロセスに突入するとともに、リカバリーのプロセスも開始されたようだ。
AKP党内の「トレンドは上昇中」という意見の根底には、2つのポイントがある。
1:保守的なクルド人向けの運動から、前向きな結果を得ることができた。意見を取りまとめる指導者らは、ラマザンをこれらの保守的なクルド人らとともに過ごした。3月31日の選挙では、クルド人らに向けた言葉が放棄され、寛容的な対話のムードが占めた。しかし、これらの保守的なクルド人らの内、どれだけの人数が投票へ行くかは明らかではない。
2:AKPへ怒りを顕にする人々に対する活動も推し進められた。AKPの選挙戦略は、(前回選挙の)6月24日にAKPに投票し、3月31日の選挙では投票に行かなかった43万人のAKPに失望した有権者に向けて練られたという。AKPに憤慨する人々の一部は、前向きにAKP支持へと戻ってきているそうだ。
3:世論調査によれば、至福党の票は半分まで落ち込んだとの見方だ。AKPは、一部の至福党を支持する有権者は「AKPとCHP、どちらが良いか」という問題と直面した際にはAKPを選ぶと予想している。
もちろん、これらはAKP側で吹く風向きだ。

■クルチダルオール党首はイスタンブルで何を見たか

エクレム・イマムオール氏側では異なる風が吹いている。エクレム・イマムオール氏に対しては、今なお被害者としての認識が拡がり続けている。CHPのケマル・クルチダルオール党首は、バイラムをイスタンブルで過ごした。私は彼の見方を尋ねてみた。「政治情勢は悪くはない。むしろ私が考えていたよりも良いほうだ」と彼は答えた。
イスタンブル再選挙では、ビナリ・ユルドゥルム氏とエクレム・イマムオール氏の行動がもちろん影響力を及ぼすことになるだろう。両候補者が出演するアメリカ風の選挙放送は、おそらくこの戦いに終止符を打つものになるだろう。
私はつい最近、世論調査団体がバイラム後に公表する記事を執筆した。トルコの大手調査会社は、この週末にも調査を開始する。

■3つのポイント

しかし、現時点ですでにはっきりしているポイントがある。
YSKが5月6日に下した無効決定により、イスタンブルは再選挙を行うことになった。犠牲者という認識と民主主義への介入という見方が、相互作用で強まった。
候補者らのプロフィールを比較すると、ビナリ・ユルドゥルム氏の経験とエクレム・イマムオール氏の若さや力強さが際立っている。
経済状況は、AKPとCHPの両有権者に影響を与える唯一の要素になると予想されている。
AKPは3月31日の選挙時と異なり、今回の選挙ではビナリ・ユルドゥルム氏を前面に推すことを選んだ。エルドアン大統領は、今のところこの戦場に姿を現してはいない。しかし、有権者が6月23日の再選挙をエクレム・イマムオール氏対ビナリ・ユルドゥルム氏の戦いとしてではなく、エルドアン大統領対イマムオール氏の戦いとして見なしていることは注目すべき事実だ。
イスタンブル再選挙は、トルコ政治の方向性を決定するような結果をもたらすだろう。イスタンブルでは、今とても強い風が吹いている。

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:46928 )