政治介入によりトルコ中央銀行総裁解任
2019年07月07日付 Cumhuriyet 紙
3年目の破局:エルドアン大統領は、2016年4月にムラト・チェティンカヤ氏をTCMB総裁に任命していた。
3年目の破局:エルドアン大統領は、2016年4月にムラト・チェティンカヤ氏をTCMB総裁に任命していた。

ムラト・チェティンカヤ中央銀行総裁が、大統領の決定により解任された。エルドアン大統領とアルバイラク財務大臣がチェティンカヤ氏の辞任を要求したものの、拒否されたことが明らかになった。

トルコ共和国中央銀行(TCMB)のムラト・チェティンカヤ総裁は、夜半発表された大統領決定により解任された。チェティンカヤ氏の代わりに、ムラト・ウイサル副総裁が任命された。チェティンカヤ氏が4年間の任期満了まであと10か月を残して解任されたことについては、政府の要求にも関わらずTCMBが金利を引き下げなかったことが影響したものと見られている。総裁が、TCMB法にあげられた解任事由を行っていないにも関わらず解任されたことは、議論を呼んだ。任命の決定では、非常事態特別政令(KHK)第375号の補則第35条が根拠として示された。この条項によると、大統領は幹部を「組織の目的に則さない場合」任期満了を待たずに解任できる。
ロイターによると、氏名非公表のある政府関係者が、「大統領と財務大臣はチェティンカヤ氏の辞任を要求したが、チェティンカヤ氏は中央銀行の独立を主張して辞任を拒否した」と述べたという。

■裁判の可能性

元TCMB総裁のドゥルムシュ・ユルマズ氏は、この決定について、「銀行の独立への侵害」であると述べた。ユルマズ氏は、2001年の法改正後に総裁の解任といったことが実行されたことはこれまでになかったと指摘し、この決定が市場にもマイナスの影響を与えうること、トルコリラ下落の原因になりうること、これらの結果、金利はより上がり、インフレ率がより高くなり、安定がさらに低下することを指摘した。
ユルマズ氏は、TCMB法に解任の条件が記載されていないにもかかわらず、この決定が出されたと述べた。メティン・ギュンダイ教授は、この決定について、「政治的」で「自由への侵害」であると述べ、チェティンカヤ氏が行政裁判所に訴えを起こす可能性があると述べた。コルクト・カナドオール教授は、大統領が現行法を変えるような形で大統領令(CBK)を出すことが認められたとしても、憲法によると「法律が明確に適用されている分野において」は大統領にこの権限は与えられないこと、「CBKと法の規定が対立する場合、法律が適用されるべきである」ことを指摘し、「中央銀行法第28条に明記された規定に反する決定が出された」と述べた。カナドオール教授は、憲法裁判所(AYM)の決定とCBKの間の関係に関する 裁判所の見解を一刻も早く作り上げるべきだと強調し、この決定をAYMと行政裁判所で精査することを求めた。

■トルコリラ下落と金利上昇の可能性

多くの経済学者や投資家が、この決定について、「TCMBの独立への侵害」だと述べている。

マフフィ・エイルメズ氏(経済学者):(チェティンカヤ氏は)組織の目的に適さないという理由で解任された。その目的が間違っていたのだ。財政政策は、通貨政策の目的の正反対の目的に向けられていた。

エロル・ビレジキ氏(元トルコ実業家協会(TÜSİAD)会長):幹部が夜半の決定で解任されることは、我が国の諸組織の尊重の観点から非常に考えさせられる。市場がこのようなサプライズにネガティブな反応を示さないことを祈っている。

ウミト・アクチャイ氏(経済学者):2001年から始まった独立が正式に終わった。

ファイク・オズトラク氏(共和人民党(CHP)副党首):このようなことをした者たちは「我々の経済政策を信じてください」という権利を失った。TCMBは大統領官邸の手で捕らえられた。ピリオド。

ウウル・ギュルセス氏(経済学者):選挙に敗れたアンカラは冒険的な道を急速に進んでいる。解任の目的は明確だ。紙幣の発行と、早急な金利の引き下げを望んでいるのだ。

ティモシー・アッシュ氏(戦略家):TCMBへの信頼はすでに深刻に害されていた。今回のステップはこれをさらに後退させた。皮肉なことに、このステップは金利引き下げもさらに難しくした。

ポール・マクナマラ氏(ファンド経営者):並外れて馬鹿げた1歩だ。トルコリラは月曜日(8日)に大きく価値を失うだろう。

フィナンシャルタイムズ紙:ムラト・ウイサル氏が任期満了まで1年を残して解任されたことは、中央銀行の独立という点における問題の指摘を増加させている。

■金利と400憶リラの積立金

チェティンカヤ氏の解任が、TCMBの約400億リラある積立金を国庫に移すことに関する法改正の準備期間であり、かつ7月23日に行われるTCMBの通貨政策委員会の会合前であったことは、さらに注目を集めた。

TCMB法の「禁止事項」と題された第27条では、「総裁(長)の職務は、特別な法律に基づかない銀行以外の立法、公職、または民間のいかなる職務とも兼務することはできない。この他、総裁(長)は、貿易に関与することはできず、また同様に、銀行や企業の株主となることもできない。公益法人と、目的が慈善事業、社会、教育事業に向けられた財団における職務と、非営利の協同組合は、この規定に含まれない」という規定がある。総裁はこのような状況で、解任されうる。

■ウイサル新総裁、物価安定を強調

中央銀行のムラト・ウイサル新総裁は、銀行が、法律によって自分たちに与えられた職務と権限の中で、基本的な目的である物価の安定を確保することに向けた通貨政策の方法を、独立した形で実施し続けると明らかにした。ムラト・ウイサル新総裁は、後日記者会見を行う予定だ。

2016年6月9日に中央銀行副総裁に任命されたウイサル氏は、1971年にイスタンブルで生まれた。ウイサル氏は、ガラタサライ高校とイスタンブル大学経済学部を修了し、中央銀行に任命される直前には、2011年11月から2016年6月までの間、ハルク銀行の副頭取であった。

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:47109 )