イエメン:フーシー派を貶めるため、日本人研究者の発言が歪められて掲載(コメント付)
2019年10月03日付 その他 - al-Arabiya 紙

日本人研究者、フーシ派の主張について「完全に偽造された攻撃だ」と語る

【アラビーヤ・ネット】

日本の中東調査会の高岡豊主席研究員(イエメン紛争研究)は、「9月28日にフーシ派がイエメン北部のサウジアラビアとの国境地帯へ攻撃を行い、多大な損害が生じたと発表した」と語った。

発表によると、軍は攻勢の第一段階として、9月25日から「アブー・ハイダル」作戦を実行し、陸軍の弾道ミサイルや無人機、防空部隊によるバックアップを受け、戦果を挙げたという。また、今回の作戦は、イエメン紛争開始以降最大規模のものであり、サウジアラビア人兵士500人を殺害し、基地の多くを奪取、将兵数百人を捕虜にしたと主張した。なお、今回の作戦は350㎢にわたって実施された一方で、サウジアラビア側は今回の軍事作戦について何も伝えていない。

今回の出来事に対する評価として、高岡氏は次のように語ったという。

「奪取した武器や多数の破壊された装甲車、遺体、捕虜の映った複数の動画や画像をフーシ派が発信している。しかし、発表は完全なる偽造であり、一切の軍事行動あるいはその戦果はなかったようだ」。

「一方、今回の発表では捕虜にされた将校や兵士の身元は明かされず、また(映像に)映っていた者たちの大半が軍服を着用していなかった。彼らはおそらく雇用されたイエメン国内の民兵でありサウジアラビア人ではないだろう。イエメン紛争においては特に戦果の過大評価と、損失の過小評価が見受けられる」。


コメント(中東調査会・髙岡豊上席研究員

当該記事の基になったのは、『中東かわら版 2019年No.106』です。

こちらを参照頂くと一目瞭然ですが、当該記事の核心部分とも言える、「実際に攻撃があり、損害が生じたのか?」という点の判断がまったく逆になっています。なぜこのような誤訳になったのか、理解に苦しみます。これでは引用ではなく、捏造です。

私としては、アンサール・アッラー(いわゆるフーシ派)が主張するほどの大戦果は上がっていないものの、何がしかの軍事行動があり、サウジアラビアに与する民兵を中心にそれなりの数の死者や捕虜が出たのではないかと見ています。

そのうえ、当該記事では問題の『かわら版』の最も重要な部分である、「イエメン紛争は、いずれの当事者も戦果を過大に、損失を過小に発表する傾向があり、特にサウジが率いる連合軍に参加した諸国の被害の実態も明らかになっていない。これは、サウジ、UAEが財力・資本関係を通じて有力報道機関に強い影響を与えているのに対し、・・・」を完全に無視しています。つまり、記者は、自分たちに都合よく引用、翻訳(誤訳)して、元の『かわら版』と私の分析とは全く異なる記事を創造してしまったのです。

メディア翻訳に参加する学生の皆さんには、この報道をアラブ諸国の報道機関とその仕事ぶりをどのように考えるべきかについての絶好の教材にしてほしいです。

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( 翻訳者:メディア翻訳アラビア語版 )
( 記事ID:47726 )