トルコ映画:数々の名監督を育てた名匠-トルコ映画界の巨匠トゥンチ・バシャラン氏逝去
2019年12月19日付 Milliyet 紙


イェシルチャム時代に映画業界で仕事を始め、さらにはそこで『凧を落とさないでください』、『足のないピアノ』、も含む重要な映画作品の数々を1980年に生み出したトゥンチ・バシャラン氏がその生涯に幕を下ろした・・・


イェシルチャム時代に映画業界で仕事を開始し、その中にはルトゥフィ・アカド氏やアトゥフ・ユルマズ氏も含まれる当時の世代の名映画監督のアシスタントを行い、1980年代には『凧を落とさないでください』、『足のないピアノ』といった映画作品によりその名を刻んだ映画界の名匠トゥンチ・バシャラン監督が、昨日81歳でその生涯を閉じた。観客をその映画作品の感情世界へと没入させ、深く感情を揺さぶる作品の数々にその名を刻んだバシャラン氏は、ここ最近、ガンの治療を受けていた。バシャラン氏は、映画を、数多くの映画を撮ることによって学んでいったということ、また生産的だった時代の後に名匠としての地位を確固たるものにし、イェシルチャム映画の枠内を出て、その手腕を感情的な面で豊穣な映画作品中に遺憾なく発揮できた、重要な映画人として特別な位置を獲得した人物であった。

バシャラン氏は1983年にイスタンブルのファーティフにおいて大工の父親と作家で公証人である母親の息子として誕生した。ファーティフにおいてアクシェメセッティン小学校を卒業した。彼はそれから先に、学校が全く好きではなく、高校は大学に入学して自由を獲得するために修了したと語っている。高校で学んだ後に大学文学部に入学した。彼の映画との関係は学校から逃れていた日々にファーティフで、次から次へと何本もの映画を鑑賞していた日々から始まった。
この時期に一冊の映画ノートを記していたバシャラン監督は、大学時代に書き留めていた物語の数々をある日、メムドゥフ・ウンに見せた。ウンは、この物語が優れたものであると確信すると彼にアシスタントとして仕事をするように薦めた。6ヶ月後に、自分の映画作品を撮影することを薦められてもバシャラン氏はこれを受け入れずに、4年間映画作りをウン、ハリト・レフィー、ルトゥフィ・アカド、とアトフ・ユルマズ氏の傍でアシスタントを務めながらトルコ映画の生みの親の世代から学んでいった。バシャラン氏は、このアイロニックな教育をミトハト・アラム映画センターでのトークセッシンで以下のような言葉で語っている。

「映画とは、学校で学ぶことができるものではない。映画は間違いなく、実験室での死後となのだ。つまり、ひとたび仕事にとりかかってみると、それをたちどころに壊してしまう。しかしそれを繰り返しては学んでいくのだ。仕事はこれだ。そうでなければ本や、教師たちから学ぶことができるものはなにもないのです。」

この4年間の後に1964年に最初の映画作品である『人生の争い』を監督した。イェシルチャムの生産的な時代にあらゆるジャンルの映画作品を制作したバシャラン監督は、その最初の時代にオルハン・ケマルの小説『ムルタザ』を独自のスタイルで映画化をしたことで、注目を集めることになった。イェシルチャムの停滞期には広告業界のキーパーソンの一人へと変貌した。広告業で成功をするのと同時にまた、その名を刻んだ映画作品のひとつである『一人とそれ以外のものたち』(1987)を監督した。主役をアイタチュ・アルマン氏が務め、レストランで出会った一人の男と女性の物語であるこの映画は、第二十四回アンタルヤ黄金のオレンジ映画祭において審査員特別賞と第七回イスタンブル国際映画祭において最優秀作品賞を獲得した。


■7回書き直されるシナリオ

バシャラン監督の最も重要な映画作品のひとつである『凧を落とさないでください』(1989)の製作プロセスは、偶然にフェリデ・チチェキオール氏の本を手に入れて読んだ事、そして読み終わるとすぐに撮影したい映画を発見したことに気づいたことから始まった。チチェキオール氏に、なんとかコンタクトをとったバシャラン氏は2年間続き、七回書き直されたシナリオのプロセスの後にこの非常に愛される映画を撮影したのである。ある女子刑務所を舞台にして、小さな子供の自由への望みが凧を通して描かれた映画は、バルシュという名前の子供の感情世界を、分かりやすく観客へと伝えている。主役をヌル・スレルとオザン・ビレン氏が演じた映画は、第八回イスタンブル国際映画祭と第二十六回アンタルヤ黄金のオレンジ映画祭において最優秀作品賞を獲得した。
ケマル・デミレル氏の小説を題材にした『足のないピアノ』は、1940年代にあるアパートに暮らす家族の物語によってバシャランの名を観客の脳裏に刻んだ、そのほかの作品の一つとして注目を集めた。
同時期にタルク・アカン氏が主役を務めた『長く細い一本の道』(1991)でも生産的な時期を続けることになった。1996年の制作作品であるアイラ・クトゥル氏の小説を題材とした『あなたも行かないで』は彼が最も愛する映画であると語っている。この映画で第10回アダナ黄金のコットン映画祭において最優秀映画賞と最優秀監督賞とともに、第九回アンカラ映画祭において最優秀映画賞を獲得した。第四十回アンタルヤ黄金のオレンジ映画祭において名誉賞を獲得したバシャラン氏は、メムドゥフ・ウンとともに『映画はひとつの奇跡』という映画においてもその名を刻んだ。バシャラン監督の最後の映画は2008年に監督した『エトセトラ・エトセトラ』となった。

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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:48292 )