ギリシャはなぜコロナ禍をまぬがれたか?
2020年05月08日付 Cumhuriyet 紙

超高齢社会、脆弱な経済、不十分な保健システム。ギリシャには、新型コロナウイルス感染拡大の深刻な影響を受ける全ての条件が揃っている。しかし、予想されていたようにはならなかった。この状態は、主に4つの明らかな理由と結びつけることができる。

42日前にギリシャが新型コロナウイルスの感染拡大に対して厳格な規制の適用を開始して以降、85歳という高リスクの年齢であるチャリクラさんという女性は家から出られていない。しかし、晴れて風の強いこの月曜の朝、チャリクラさんのような高齢女性が外出できるようになり、彼女はテッサロニキ近郊ネア・クリニのアヤ・パラスケヴィ教会の前に座り、聖職者が教会の扉を開くのを待っていた。

「外出禁止令が出ている間、教会とイースター祭がないことから何よりも喪失感を感じた」という。チャリクラさんはこの街のこの地域で生まれ、3人の子はこの教会で結婚式を挙げ、社会的な関係と平穏をこの地で得ている。「今日ほど幸せな日は長い間なかった。」

教会が再開した月曜日は、ギリシャで段階的に始まった正常化の第一波だ。1008時間に及ぶ外出禁止の後、生活は元に戻っているかのようだ。

・教会は今のところ、一人で礼拝したい人のみに開放されている。

・予約で自分の番になるのに時間がかかるが、理髪店は最初に予約した客たちを受け付けている。

・小規模な業者は、衛生面とソーシャル・ディスタンスに関する規定を守るという条件で営業を始めた。

先週火曜日、キリアコス・ミツォタキス首相は5月以降に段階的に規制を緩和していくプログラムを発表した。6月には学校、飲食店、一部のホテルが再開し、その後、段階が進められると予測されている。

あらゆる支障や専門家の見解に反して、ギリシャは新型コロナウイルス感染拡大対策において驚くべき成功を示している。この危機が酷い形で現実となるために必要な全ての条件が揃っているにもかかわらずだ。

・経済危機によりいまだ混乱する経済

・不足が明らかな保健システム

・ヨーロッパで最も高齢化した社会

ギリシャの人々が政治家と国家組織に対して抱く不信感は明らかであり、この危機に対する経済的なコストを勘案すると、大きな災禍を生むとの予想があった。しかし予想されていたシナリオは現実にならなかった。

ヨーロッパの大部分が現在もパンデミックの甚大な影響を受けている中、5月3日時点でギリシャ国内では2626人の感染者が確認されており、144人が死亡、治療を受けている重症患者は37人だ。この数値について国際機関、他国政府、メディアが称賛している。この成功の基には4つの理由があると考えられている。

・政府は2月の時点で、識者やエリアス・モッシアロス氏などの国際的に認められている専門家の警告を真剣に受け止めていた。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの保健政策学科のトップであるモッシアロス氏は「私がとても早い段階で警告を発したので、一部の人はパニックを広めているだとか、テロリストとさえ言って私を批判した。それでも、ギリシャ政府は私の懸念を聞き入れ、迅速かつ決然と行動した」と述べた。

・特にキリアコス・ミツォタキス首相の政治的決断は非常に速かった。2月27日に初めての新型コロナウイルス感染者が確認されるや否や、激しい抵抗に遭いながらも祭りを中止させた。学校は閉鎖され、短期間で映画館、商店、飲食店、バー、教会もこれに続いた。国際線は欠航となり、国境は閉鎖された。ギリシャ人が家から外出するには、SMSを使って許可を得なければならないことにした。モッシアロス氏は「もしも対応が数週間遅れれば、スペインのような国々と同じような事態に直面していただろう」と語る。

・ギリシャ人は信じられないほどソーシャル・ディスタンスの決まりを順守した。この危機に際して政府が発令した非常事態宣言も効果があった。ミツォタキス首相が発令した対パンデミック・プログラムが87%の賛成を得ているという調査結果もある。

・このお陰で、病院の集中治療病床の数を70%以上増やすための時間を稼ぐことができた。また、3000人以上の医療従事者も確保した。

ギリシャ政府の新型コロナウイルスに関する警告が徐々に減っている中、ロックダウンによる経済への影響が表面化している。

・国の経済は深刻な不況の時代に戻った。

・失業率は再び20%に達した。

・全ての三つ星ホテル・レストランは営業を再開できていない。

それでも、ギリシャ国民は希望を抱いている。自らに、そして世界に対して、ウイルスに対抗する責任ある行動の好例を示した。他の多くの国よりも早く、自国を襲っている経済の不況から立ち直ることも可能である。

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( 翻訳者:神谷亮平 )
( 記事ID:49047 )