~サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はジャマール・ハーショグジー氏殺害を指示したとされるも処罰リストには記載されず~
サウジアラビアの批判的なジャーナリストであるジャマール・ハーショグジー氏の殺害から約2年を経て、サウジアラビアの若い皇太子であるムハンマド・ビン・サルマーン氏は米国新政権の4ページにわたる安全保障に関する報告書の中で、凶悪な犯罪の主犯として名指しされた。
報告書は予想外のものではなく、サウジアラビアの若い皇太子に何らかの刑罰を科すよう米国を促すものでもなかったとはいえ、サウジアラビア外務省からは、右報告書はフェイクであり根拠がないものとされた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ジョー・バイデン政権の監督下で米国CIAが主導して行なわれたこの報告は、2017年からのビン・サルマーンによるサウジアラビア統治及び彼の統治下におけるサウジアラビアの息苦しく抑圧的な雰囲気を考慮して、この凶悪な犯罪よりはるかに軽い行為であっても、同国の若い皇太子の同意なしには実行されえないものとみなした。一方で、若い皇太子の主要アドバイザーと保護チームがこの犯罪に介入したこと、ワシントンポストのコラムニストであるジャマール・ハーショグジー氏のような国外の批評家の弾圧をムハンマド皇太子が支援していること、また一方では、サウジアラビアの治安機関と情報機関をビン・サルマーン氏が完全にコントロールしていることは、本件がサウジアラビア皇太子の命令のもとで実行されたことを示している。他方、ビン・サルマーン氏は、ハーショグジー氏を自身の統治にとっての脅威とみなし、彼を黙らせるためにいかなる措置を行うことをも擁護してきた。実際、2018年の犯罪以前ですらも彼に対する敵対的措置が取られたが、無駄に終わった。しかし、こうした理由があるにもかかわらず、アル・ジャジーラによれば、サウジアラビア外務省は容疑を根拠のないものとし、その反応として、声明の中で「サウジアラビアは、この報告書を完全にフェイクであるとし、その根拠も到底認められるものではない。当犯罪は、サウジアラビアの法及び価値と矛盾するものであり、この殺害に関与したものは、身元が特定され裁かれている。このプロセスはジャマール・ハーショグジー氏の家族からも歓迎されている」と述べた。サウジアラビア政府は2019年にこの犯罪の賠償として数百万ドルの家を贈り、ハーショグジー氏の4人の子供に毎月の報酬を保証することで彼らの同意を得たと言われており、このジャーナリストの息子の一人であるサラーハ氏は、しばらく後にツイッターにて家族としては父親の殺害者らを許していると発表した。
米国の消極的な立場
しかし、ドナルド・トランプ政権による数年に及ぶ隠蔽工作の後でさえも、この報告書の発表はサウジアラビア王家に対する米国の行動に顕著な変化を生むようには思えない。なぜならバイデン政権は、サウジアラビアの皇太子の処罰に係る外交的な影響を懸念し、サウジアラビアの治安当局の一部及び本犯罪に関与した者に対する制裁の発表にとどまったためである。専門家の信ずるところによると、米国政府は、地域の同盟国を守るため、またサウジアラビアが同国の大きなライバル国である中国に目を向けないためにも個人の罪を見逃してきたとのことだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、米国下院もこの報告を歓迎しているとのことだが、下院情報特別委員長のアダム・シフ氏のような一部の民主党議員も、政府に同調しサウジアラビア皇太子の個人的な制裁を容認しておらず、「二国間関係に損害を与えずに個人を罰する方法は多く存在する。しかし、サウジアラビア皇太子の手は、米国市民でありきわめて影響力のあると思われるジャーナリストの血で染まっていることは忘れられてはならない」と述べている。確かなことは、米国がサウジアラビアに科した最も厳しい刑罰は、サウジアラビアの情報副大臣アフマド・ハサン・ムハンマド・アル=アスィーリー氏とサウジアラビアのタスクフォースメンバーを含む当事件に関与した高官らの渡航制限及び資産凍結であり、ジャーナリスト、政治活動家及び反対者らを取り締まってきた76人のサウジアラビア高官も、「ハーショグジー氏関連制裁」の枠組みの中でビザの発給が制限された。米国国務長官のアントニー・ブリンケン氏は、このことに関して「サウジアラビアとの関係は他の同盟国よりもはるかに広範にわたるものであり、ビン・サルマーン氏は一個人以上の存在である。そのため、我々の措置が二国間関係を損なうものであってはならないが、両国関係をできる限り米国の国益と価値の元に位置づけなければならない」と述べた。だがこの一方、ユーロニュースによれば、ジョー・バイデン米国大統領はサウジアラビアのサルマーン国王との電話会談の中で、ルールは変更されている、と述べた。バイデン大統領は会談の中で、サウジアラビアと米国の関係に関し金曜日と月曜日に重大な変更を発表することになるだろうと説明した。同大統領は、金曜日の夜、ユニビジョンテレビのインタビューの中で、「我々は、彼らが人権侵害に関し有責であるとみており、もし彼らが我々と共に問題の解決を図ろうとするならば、彼らは人権問題を解決するべきであり、人権侵害事案にしかるべき方法で対処しなければならないことを確認したいと考えている」と加えた。
米国に対する非難
ジョー・バイデン大統領周辺内部の称賛にもかかわらず、ビン・サルマーン氏を処罰しない、との決定は人権擁護団体から非難の的となった。「アラブ世界のための民主主義の今」という名のジャマール・ハーショグジー氏を支持する人権団体は、自身の活動の中で、ジョー・バイデン政権に対し、最低でも個人的、あるいは彼の監督下にある世界中の会社に対し制裁を行うよう求め、上院外交委員会委員長であるボブ・メネンデス氏も、「我々は、ビン・サルマーン氏のような人たちが彼らの処罰の本当の結果を理解するよう、そしてこのメッセージを世界のすべての独裁者に届けるよう措置をとらなければならない」と述べた。
ユーロニュースによると、議会顧問の一人は、バイデン政権は攻撃用兵器と防衛用兵器の販売を分けるためにサウジアラビアとの関係を再定義していると述べている。だが一方、2018年ジャマール・ハーショグジー氏殺害事件を捜査している治安機関の特別報告者アグネス・キャマード氏は、米国に対し、ビン・サルマーン氏への制裁をもってこの事件に正義を確立するよう求めた。イエメンのフーシ[ホウスィー]派もこのことに反応を示した。ISNAによると、ロシア・トゥデイが、イエメン最高政治評議会のメンバーでありフーシ派の傑出した指導者の一人であるムハンマド・アリー・アル=ホウスィー氏は、「サウジアラビアは、米国の許可なしに歩みを進めることはなく、トランプ政権がハーショグジー氏の殺害に関与しただろうことは考えられなくはないだろう」と述べた、と報じた。
一方、クウェート等の一部のアラブ諸国はこの報告書の発表に対する反応を示し、サウジアラビアの主権を侵害するあらゆることに対し断固反対することを強調した。
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( 翻訳者:TR )
( 記事ID:50781 )