バイデンの歴史への裏切りートルコの反発広がる
2021年04月25日付 Milliyet 紙


トルコ外務省は、ジョー・バイデン米大統領の「ジェノサイド」発言は、相互の信頼と友情を「深く傷つける原因になる」と強調し、「米国大統領に、一部の政治勢力を満足させる以外、なんの目的も果たさない重大な過ちを正してくれるよう呼びかけている」と発表。決議後、デービッド・サッターフィールド駐アンカラ米国大使が外務省に呼び出された。

トルコ外務省は、ジョー・バイデン米国大統領が、1915年事件について「いわゆるジェノサイド」と発言したことに強い抗議を示し、「トルコは、急進的なアルメニア勢力と反トルコグループの圧力の下に米国大統領が4月24日に行った1915年事件についての発言を受け入れず、最も強いかたちで抗議する」と発表した。 同省の発表では、1915年事件の性質は、政治家の周期的な政治動機アピールやその国における内政上の配慮によって変化することはなく、そうした態度は歴史を無礼に歪めるだけであるとされた。またこの発表には次のような評価も含まれていた。「欧州人権裁判所は、1915年事件は議論を呼びうる性格を有しているということを明確に表明している。一方、トルコは、2005年に、あの時代について科学的事実に照らし合わせ、公正な記憶を作り上げることを目的として合同歴史委員会の設立を提案した。アルメニア側は一切歩み寄りを見せていないが、提案自体は今日でもまだ有効である。この点について、歴史的な問題に判断を下す法的権限も道徳的権限も持たない米国大統領の発言は評価に値しない」。また、「トルコ共和国レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、第一次世界大戦中に命を落としたオスマン帝国内のアルメニア系住民のため、今年も4月24日にイスタンブルのアルメニア総主教座で開催された式典にメッセージを寄せた。このメッセージは、トルコのこの問題への歩み寄りを反映したものである」と発表された。

■「傷が開く」

発表では次のような内容も述べられている。「史的事実を歪曲したこの米国の発言がトルコ国民の良心に受け入れられることは決してないだろう。それは私たちの相互の信頼と友情を揺るがし、癒すことのできない深い傷口を開くことになる。米国大統領には、一部政治勢力を満足させる以外のなんの目的も果たさない重大な過ちを正し、歴史から敵意を生み出そうとするこうした勢力の議論に奉仕するのではなく、トルコ系住民とアルメニア系住民をはじめとして、この地域での平和的共存の実践を確立するための努力を後押しすることを勧めたい。」

一方、メブリュト・チャブシュオル外相も次のように述べた。「言葉は歴史を変えることはできないし、新たに書き換えることもできない。我々の歴史については誰かから我々が学ぶのではない。政治的日和見主義は、平和と正義に対する最大の裏切りである。唯一の根拠がポピュリズムでしかない(米国大統領の)発言を我々は一切拒否する」。 また、このツイートに#1915Olayları(1915年事件)というハッシュタグもつけて拡散した。チャブシュオル外相はさらに昨日、アゼルバイジャンのジェイフン・バイラモフ外相とも電話会談を行った。

■大使呼び出し抗議

トルコ外務省は、バイデン大統領の発言を受けてデービッド・サッターフィールド駐アンカラ米国大使を同省に呼び出したことを発表。 同省の説明によれば「セダト・オナル外務副大臣と面会したサッターフィールド大使に、この発言の件で強い抗議を伝えた。またこの文脈において、トルコ外務省は歴史的および法的ないかなる根拠を欠くこの発言を容認できないと判断し、その一切を拒否し、最も強い形で非難が告げられた」。

■「歴史を前に、発言に価値なし」

フアット・オクタイ副大統領:
「バイデン大統領の1915年事件への評価は、政治的清算の下に歴史が歪曲されること示すものであり我々はこれを拒否する。あの発言はアルメニア人によってでっち上げられた根拠のない主張に基づいており、アルメニア人反徒によって殺害されたトルコ人らの苦痛を無視している。あの発言は、トルコ国民と歴史を前にして、価値がない。真実を知りたい人々に対して我々の資料はオープンにされている。

イブラヒム・カリン大統領府報道官:トルコ共和国はいかなる歴史的現実からも逃げずに正面から向かい合う。米国大統領の発言は根拠のない主張に基づいており、トルコ-アルメニア間の正常化に向けた努力にダメージを与える可能性がある。

ファフレッティン・アルトゥン大統領府通信局長:
残念ながら米国当局はこの声明を出す際にロビーの要求に屈してしまった。トルコとして、バイデン大統領が1915年事件をジェノサイドとして認定したことには拒否を示し、強く非難する。我々は、いかなる法的・科学的正当性もない声明は無効なものと受け取っている。

ビナリ・ユルドゥルム公正発展党副党首:1915年事件に関する、無知かつ政治的動機に基づく声明が歴史を変えることはないし、事実を覆い隠すこともできない。歴史は歴史家によって評価されるべきであり、政治家は事実に敬意を表すべきである。歴史的根拠のないこのような告発はあり得ないと判断しており、我々はそれを完全に拒否する。

ヌマン・クルトゥルムシュ公正発展党副党首:アルメニア系ロビーに利益をもたらすためにトルコに対してこのような中傷を行う者には、ベトナムやバグダッド、ファルージャで流れた血や、アブグレイブ刑務所におけるおぞましい拷問、さらには広島や長崎に落とした原爆で破壊に至らしめたことを思い出させたい。

スレイマン・ソイル内務大臣:米国は歴史を知らない。なぜなら彼らには歴史がない。つまり大統領に言わせた言葉にも有効な価値はない。

ギュル法務大臣:虐殺や人種差別といった前科まみれの歴史をもった人々の悪意ある発言は我々にとってなんら影響を与えない。法と歴史に照らしても有効な価値はない。

ズィヤ・セルチュク教育相:我々は子どもたちに科学的に歪曲することなく歴史を伝えている。歴史的または法的に立脚しない中傷は価値がない。

メフメト・ムシュ貿易相:ジェノサイド発言は、我々にとって最愛の国家に対する重大な誹謗中傷である。米国大統領による歴史的事実と矛盾する声明は、トルコと米国の関係にダメージを与えようとする試みである。

ヴェダト・ビルギン労働社会保障相:植民地主義、虐殺、人種差別、偏見からなる彼らの恥ずべき歴史を、善と寛容の文明を確立してきた我が国に適用させようとする努力は無駄である。

オメル・チェリック公正発展党報道官:トルコと米国の協働が最高レベルにあるべき時期に、バイデン大統領から出された声明は、我々の二国間関係を揺るがし、NATOの連帯を傷つけ、この地域で起こりうる正常化の可能性を弱めてしまった。 バイデン大統領の発言には歴史的根拠はない。

■「重大な過ち」

ファイク・オズトゥラク共和人民党報道官:1915事件で起きた痛々しい事件をジェノサイドだとするバイデン大統領の声明は重大過ちとして歴史に残る。トルコを貶める発言を残念に思っている。

エンギン・オズコチ共和人民党副党首:トルコに対して行われた中傷を擁護する者は、過去にそうであったように、トルコ共和国から間違いなく最も厳しい対応を受けることになるだろう。

テメル・カラモラオール福祉党党首:アルメニア人ジェノサイドを公式に認めると宣言する者は、米国が世界中、例えばベトナム、アフガニスタン、イラクで手にかけてきた何百万人もの抑圧された人々の血についても認めているのだ。

■「政治的不道徳」

さらに民族主義者行動党(MHP)のデヴレト・バフチェリ党首は次のように述べた。「我々の歴史を裁こうと、軽率で証拠もない、情報もない裁判を起こそうとしてきた人々が、トルコを被告席に座らせようとする努力は、過去1世紀に及ぶ穢れた陰謀である。我々の歴史は、あらゆる問題においてそうであるように、この問題においても清廉であり、この文脈の中で誰かに証明を負ってもらう必要もない。 バイデン大統領のジェノサイド発言は無効な上に、政治的に愚かで不道徳である。同盟すべき国との(関係が)岐路に立っている」。

■「厳しく非難する」

善良党のメラル・アクシェネル党首は声明文書の中で「政治的および道徳的責任を考慮せずに発言された、いわゆる「ジェノサイド」という表現は、バイデン大統領によって用いられたことでトルコと米国の関係に大きなダメージを与えることに疑いはない」と述べた。また、「いわゆる「ジェノサイド」 などという言葉を口にする人、歴史を書き直そうとする人、それに対して必要な答えを出せない人、そして両国民間の友好関係よりも特定の時期のそして周期的な政治的利益を好む人を、こうした理由で最も厳しいかたちで非難する義務があると考えている」と述べた。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:50958 )