これらは芸術でなくコメディ彫刻!ー作った本人もがっくり
2021年06月19日付 Hurriyet 紙


最近巷では、一部の町にある、その地域を代表するために作られたと思しき「オブジェ」が話題だ。これらの作品には、SNS上で「オブジェテロ」とコメントがつけられるなど、激しい批判が寄せられている。常識的な美的センスすら感じられず、ほとんど3Dの落書きと言ってもよいこれらの「作品」を制作した職人や会社を直撃した。しかし、どのオブジェについても「これはわれわれが作った」と言う者は現れなかった。

ハリル・ケクリクオールは、この分野で最も大きな会社のうちの1つのオーナーだ。約30年間アンカラでこの類のオブジェを作っている。「俺は建築家や彫刻家じゃない。俺の仕事は商売なんだ」と語りはじめる。「もともとは建築資材卸をしていて、この業界には偶然入った。今でも抜けられない」と続ける。ケクリクオールは、「教養のある芸術家、彫刻家も入ったんだ、この仕事には。だが皆長続きせず、辞めていった」と語る――いくぶん誇らしげに。

ケクリクオールは主にガラス繊維製の像やオブジェを制作するという。

「役所、ホテル、観光地、協同組合、民間教育機関が俺たちの主な顧客だが、個人の依頼者にも、家や庭用に制作している。今までに数百はオブジェを作ったかな。昔話のナスレッディン・ホジャ、ケローランなどのオブジェは人気が高い。役所だなこれらを好むのは。あとは、歴史上の偉人が人気だな。イェニチェリ、ダダルオール、キョルオールなどか。

カフェやホテルなどは神話を題材にしたオブジェを頼んでくる。ナスレッディン・ホジャなどのオブジェは、だいたい役場や学校が頼んでくる。俺たちは希望に応じてオブジェを制作している。一部の依頼主は、オブジェをリアルにするのではなくカートゥーンのキャラクターのようにしてほしいと言うんだが、そういう場合にはあまりリアルな見た目にはならない。だが、シリコン成型で、非常にリアルなオブジェを制作することもできる。重要なのは依頼主の希望だ。

ディティールにこだわったオブジェにはシリコン成型を使用するから、型代と彫り師代が高くなる。もちろん、ガラス繊維製なら価格はより安くなる。例えば、依頼主が『イェニチェリのオブジェがいいが価格も抑えてほしい』と言えば、俺たちはそれに応じて型を用意する。希望と予算の問題だ。俺たちは提示された予算に収まるようにしている。1万リラのイェニチェリ像もあるし、3万リラのイェニチェリ像もある。SNSで酷評されているオブジェは最も安いものだ。依頼者があのクオリティでオブジェを頼んで、制作者もそのつもりで作ったということだろう。俺たちには自社にも外部にも、ちゃんとした彫り師がいる。

俺たちも商売だから、どんな予算にも応える。高度な芸術的価値があるものを作るような会社ではない。人間の想像力は計り知れない。頭に浮かぶものは何でも欲しがる。ある歯科医には、臼歯を作ってくれと言われた。中には滑り台を設けるんだとか。子供たちが遊べるようにって。あるソーセージ業者は、枝にソーセージがなっている巨大な木が欲しいと。またある資産家には、なんでも祖父の形見の牛車があるらしく、その牛車に2頭の牛をこしらえてほしいと言われた。『お金のことは気にしなくていいから、君がやってくれ』って言って。俺たちは今これを制作しているところだ。」

■われわれの作品が笑われている

ヤクプ・コチャクは、イスタンブルのドラプデレにあるこぢんまりとしたアトリエで作品を作っている。SNSで拡散された写真を彼も見たらしく、「まがい物だこんなもの。能力も資格もないやつが作ったんでしょう」と言って怒っている。「われわれの作品は工芸であり芸術なんです」と言って強調したあと、こう続ける。「役所も役所で注意を払わない。芸術顧問でも多少芸術に詳しい人でもいいですが、そんな人はいない。われわれの作品まで笑われています。」

■根本的な原因は発注者側に

ネジャティ・インジは、トルコでこの分野で最も古い会社の1つのオーナーだ。1942年に父メフメト・インジによって設立されたこの会社は、今3代目の息子サヴァシュ・インジが続けている。81歳のインジは、「7歳からこの仕事をしています」と言って、説明を始めた。

「わが社は、この分野でガラス繊維を使ったトルコで最初の会社です。イスタンブル工科大の先生方とも相談しました。上手くちゃんと使えば見事な作品が生まれます。われわれは最初、この材質でアタテュルクの像を作りました。実によくできた。実は、この類の色付きの像やオブジェの本当の使用場所は遊園地なんです。町に広まったのは後からです。この仕事は芸術から縁遠い、偽者の手に落ちてこんな有様になりました。SNSに上がっているオブジェを作ったやつらには腹が立ちます。ああいうレベルの注文を受けたといって、そいつらもそういうレベルで作ったらしい。しかし私は、あんなものが町や住民にとってプラスになると思っているような、オブジェを注文した人に対しても反感をもっています。」

■こんな有様ではダメ

かつてマルマラ大学芸術学部の学部長を務め、バクス博物館(Baksı Müzesi)を設立したヒュサメッティン・コチャン博士は、本当の問題が役所にあると語る。「芸術による町の美化を考えるなら、担当者が芸術や美術にその専門分野があることを認識して、それにならって行動することが必須です。本当に真剣に考えないといけない問題ですよこれは……」

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:麻生充仁 )
( 記事ID:51224 )