イスタンブル干ばつ深刻、ウストランジャ(山塊)も干上がる
2021年10月10日付 Hurriyet 紙


イスタンブルの水需要をまかなっているウストランジャ山塊も干ばつに見舞われている。ウストランジャの複数の河川と、カザンデレ、パブチデレのダムの干ばつは脅威的である。さらに、近年環境汚染が深刻化しているバファ湖では漁獲された魚に重金属の蓄積が確認されている。またバファ湖は、特に大メンデレス川からの流れにより汚染されていることも明らかになった。

メルト・イナン記者(イスタンブル)-干ばつに見舞われているトルコでは、複数の湖が干上がっており、とうとうイスタンブルの水需要をまかなっているウストランジャ山塊の水源も枯渇してしまった。 ウストランジャの河川とカザンデレ、パブチデレのダムの様子を写した画像は、事態の深刻さを明らかにしている。完全に干上がった2つのダムに加えて、ウストランジャの大小の河川も干ばつに見舞われ瀕死の危機にある。

同地域の最新状況評価をMilliyet紙に報告した、トラキアプラットフォーム・クルクラーレリ支部の広報担当者であるキョクサル・チーデム氏は、水源の枯渇に加えて生態系の破壊が大気浄化のバランス悪化を引き起こすと警告した。

■「水の終わる場所」

Milliyet紙のため地域の状況を観察しているチーデム氏は、「ウストランジャのことを、我々は『言葉の終わる場所(注:物事が手に負えなくなった段階を表す慣用句)』の代わりに、『水が終わる場所』と言っている。ウストランジャに水がなくなればトルコの人口の5分の1が暮らすイスタンブルは住むことができなくなる。イスタンブルの空気と水はここからやって来ているからだ」と語った。

また同氏は、ウストランジャで起こっている干ばつと自然破壊が、イスタンブルの大気の質に悪影響を与えるとし、「例えば風力発電所のためにこの地域で何万本もの樹木が伐採され、風力発電所が建設されると、送電線のために幅数メートル、長さ数キロに及に森林が破壊され、発破による鉱山採掘活動がおこなわれれば、水の枯れたウストランジャの大気も悪化する。またそうした状況はイスタンブルに深刻な悪影響を及ぼす。そのうちイスタンブルは冬の風物詩である「バルカン半島からの寒冷で降雨を伴う気候」、つまり新鮮な空気を失うことを実感することになる。忘れてはならないのは、ウストランジャはイスタンブルの気管でもあるということだ」と述べた。

チーデム氏は、ウストランジャ山塊のブルガリア側に広がっている区域は、26年間も生物圏保存地域として保全されていることを付け加え、次のように警告を連ねた。「同じ森の、トルコ側の13万ヘクタールは2008年から2010年の間に生物圏保存地域としてのプロジェクト作業は終了した。しかし12年間、承認されることはなかった。ユルドゥズ山脈を生物圏保存地域として宣言するための候補地申請書も、ユネスコMAB(Man and the Biosphere:人間と生物圏)委員会に求められた形式と内容で整えられたものの、ユネスコには提出されていない。 ウストランジャは一刻も早く生物圏保存地域として宣言されるべきで、地下および地表の水供給地域におけるあらゆる採鉱活動も停止されなけれなならない」

■バファ湖の汚れが魚も汚染

水源汚染が魚の筋組織に作用していることも判明した。バファ湖では、ボラの16%でカドミウム、68%で鉛が検出されており、計測された重金属濃度が消化上限を上回っていると警告された。近年、環境汚染の危機に瀕しているバファ湖で漁獲されたボラの一種に重金属が蓄積していることが明らかになっている。バファ湖に大メンデレス川から流れ込む汚染物質によって重金属汚染にさらされているとする研究では、こうした状況は特に水量が減少する夏季に増加していたことが強調されている。

■「健康リスクある」

調査の枠組みで2015年10月から2016年3月の間に収集された25匹のボラのサンプルは、週に1回防腐処理のもと、冷蔵便でムーラ・ストゥク・コチマン大学の研究センターに運ばれた。分析前に、魚はフィレ(筋)、性腺(生殖器官)、肝臓、エラなどに分けられ、数週間かけて別々に分析された。この研究では、測定された重金属残留物は 「人の健康に非常に危険である」ことが次のような表現で強調された。「バファ湖で行われたこの研究では、魚の食用部分における鉛とカドミウムの量は規定の消化上限量を上回っていることが観察された。この結果は人間の健康にとって非常に危険な状況を示す」。

■浄化されずに合流している
バファ湖と大メンデレス川の合流は2本の運河を介して維持されているという事実に着目したこの研究では、次のような警告が示された。

「農業灌漑のため大メンデレス川の水を必要とする季節(年間約5〜6か月)には、この合流地点は遮断され、バファ湖の水循環が妨げられている。

さらに、大メンデレス川が水を供給するアフィヨン、ウシャク、アイドゥン、デニズリ流域から出る家庭、産業、農業廃棄物が川を経由してバファ湖に流れ込む。湖に流れ込んだ廃棄物は、運河の底よりも深いバファ湖に堆積する。 湖に近い流域で行われている農業活動やオリーブオイル生産施設、観光施設からの廃棄物、家庭廃棄物も湖の汚染を悪化させる要因となる。環境汚染は、そこに直接接触する生物に影響を与えるだけでなく、汚染現場から離れて暮らす人々にも食物連鎖を通じて悪影響を及ぼす。

バファ湖の環境汚染と、それが人や他の生物に及ぼす悪影響を防ぐには、湖と大メンデレス川の合流を遮断せず、大メンデレス川への産業排水については浄化処置をした後になされるべきである。湖周辺の開発においては水域管理が第一に考慮されるべきである。」

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( 翻訳者:原田 )
( 記事ID:51689 )