経済回復はなるか?野党は結束できるか?
2021年11月28日付 Cumhuriyet 紙

【アレヴ・ジョシュクン】先週の最も重大な問題は、間違いなくトルコ経済が陥った状況とトルコリラの暴落だ。

まとめると、11月1日に1ドル= 9.5リラだったトルコリラ相場は、27日には1ドル= 12.4リラにまで下落した。つまり、1ドルは26日間で2.9リラ高くなり、トルコリラは25%その価値を下げた。これほどの短期間にリラ安がここまで進行するのは共和国史上初のことだ。

政治権力の座に留まろうと与党が行う経済政策は、その基本理念が全く不明だ。筋書きが全く見通せず、財界は深刻な不安を抱えている。この状況をうけ、財界では投資計画が凍結されている。国内外の専門家によれば、公正発展党(AKP)の経済政策は行き止まりにぶつかった。

■外圧印象論

AKP政権は、この経済の動揺を外圧と結びつけている。AKPの政治の基本はこう要約できる。うまくいっているときは「全部俺たちがやっているんだぞ」と言いながら、ひとたびうまくいかなくなると「外国勢力が俺たちをもてあそんでいる」というスローガンを用いるのだ。

与党連合の人民連合はこのところ、「経済救国戦争」という言説を用いているが、この「戦争」の根拠や意図は明らかになっていない。つまりこれはただのスローガンに過ぎない。

この「経済救国戦争」はどう行われているのか。あるいはどう行われるのか。全く語られていない。国内生産政策や、公共経済政策はこの政権から最も遠い概念だ。何年にもわたり公共経済政策を弱体化させ、トルコ国民の財産である国営企業を売り、戦車のキャタピラ工場をカタールに渡したAKP政権が語る「経済救国戦争」は信頼性に欠く。だから真面目にとられない。 

■UAEの目的は

先週みられた経済上の重要な進展は、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン皇太子のトルコ訪問だ。ムハンマド皇太子は今UAEで最も活動的な政治指導者だ。AKP支持者は昨年まで、UAEとムハンマド皇太子を2016年7月15日クーデター未遂を支援しイスラエル、エジプト、ギリシャとトルコの国益に反する条約を結んだとして毛嫌いしていたが、ムハンマド皇太子は大きなセレモニーで迎えられた。

UAEとは投資や貿易について多くの合意が結ばれた。この内実は不明だが、多くのうわさがささやかれている。

UAEによる100億ドルの援助、エネルギーインフラへの介入、スワップ協定の締結が報道されたが、この真相は未だ詳細には分かっていない。この合意の見返りとしてUAEに何が提供されるのかも明らかでない。カタールに手放したキャタピラ工場の例のように、UAEにも何かが手渡されるのだろうか。一部の解説者は、UAEがトルコで最も戦略的に重要な機関であるアセルサンの株を買い、さらにこれを手始めとしてトルコの重要な戦略的組織を安価に潰そうとしていると明かす。

■野党の状況

野党は、野党連合の国民連合を軸として一定の方向にまとまりはじめたように見える。

第一に、野党は選挙の早期実施を求めている。共和人民党(CHP)、善良党(İYİ Parti)、国民の民主主義党(HDP)と他の3党、民進党(DEVA)、未来党(Gelecek)、至福党(Saadet)がこの目標に向け連携することは非常に重要だ。

野党の第二の目標は、強力な議会による議院内閣制への回帰だ。この点では、野党側に説得力ある根拠と歴史的な実績がある。トルコ社会はオスマン帝国末期、独立[救国]戦争期、そして共和国の99年間議会制を敷いてきた。議会の強化には、普遍の原理である法治国家の原則を備えた1961年憲法が最も有効なモデルとなるだろう。

つまり、議会強化論には根拠がある。1961年憲法モデルをなぞるのは難しくないだろう。

根本的な問題は崩壊した経済の収拾だ。この問題では野党による真剣な対応が求められる。

トルコ経済の回復は新自由主義モデルでは達成しえない。トルコが「経済救国戦争」を現実のものとする新たな道は、ムスタファ・ケマル・アタテュルクのモデルだ。経済への積極介入、社会全体の発展、製造業・農業への支援、計画的な経済政策。野党はこの点でまとまらなければならない。現在の経済崩壊は旧態依然とした新自由主義モデルでは解決しえない。公共経済政策での合意が必要だ*。

■荷物の用意

経済が崩壊し、国民が物価高騰に打ちのめされる中、善良党の党首アクシェネルが非常に的確な提案を行った。

エルドアンに大統領の座から退くよう、荷物の用意を提案したのだ。

トルコが置かれた経済状況は、高いインフレ率、物価高により特に中間層に大きな困難を強いている。さらに失業率も高い。

エルドアンは会見で「我々は経済の台本を書いた」と語った。先週の本紙記事「経済の台本と結末(Ekonominin kitabı ve sonuç)」はこう始まる。「エルドアンが書いたこの台本の結末は、今置かれた経済状況としか受けとれない。つまり、自身やAKPにとってハッピーエンドになるはずがないのだ……」。

エルドアンが政権を退く道は綺麗に舗装されていて、はっきり見えている。

原注
* 拙著『新古典派経済の崩壊――世界的危機と自国中心主義経済の高まり』(2017年、Cumhuriyet Kitapları)を参照。

訳注
オピニオン記事という性質に鑑み、敬称略とした。

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( 翻訳者:麻生充仁 )
( 記事ID:51919 )