最高裁、驚きの理由で殺人犯を減刑
2022年03月14日付 Cumhuriyet 紙

女性の殺人でトルコを立ち上がらせる判決がさらに発表された。トルコ・ラジオ・テレビ協会の芸術家であるハティジェ・カチマズさん(33)の殺人事件で最高裁判所は、「もし求婚を受け入れていれば、殺人は起こらなかったかもしれない」という形で下した判決は議論を生んでいる。カチマズさンを殺したオルハン・ムニス被告は、最高裁が「計画的な殺人」の代わりに下した判決により71歳から5年減らされて65歳で釈放される。

最高裁刑事審査委員会は、ハティジェ・カチマズさんを殺したオルハン・ムニス被告の起訴に関する裁判で減刑を承認した。理由としては、「もし求婚を受け入れていれば、殺人は起こらなかったかもしれない」とした。判決は、5名対14名で下された。反対票を入れた14人が全て男性だったことが議論を生んだ。

■弟も殺した

1979年生まれの殺人犯オルハン・ムニス被告は、2001年2月にエルズルムの自宅で大音量で音楽を聴いていた高校生2年生の弟ブルハン・ムニスを、音量を下げなかったという理由で口論になり8カ所をナイフで刺して殺害した。起訴されたムニス被告の弁護では、事件の1週間前に徴兵を終えたことと、口論の後に我を見失ったと主張した。ムニス被告には「ナイフによる殺人」の罪でまず無期懲役という判決が下った。その後、行為がかなり焚き付けられた状態で行われたこと、後悔の念があることを理由に22年に減刑された。

■裁判所によれば、「極度の愛情によって起きた殺人」

釈放後、同被告は、2012年に夫を交通事故で失ったため4歳の娘とともにアンカラで暮らしていたハティジェ・カチマズさんと乗合タクシーで偶然知り合った。ムニス被告は、知り合ってから15日後、カチマズさんにプロポーズした。カチマズさんがこの状況を友達に相談すると、友達はインターネットで検索をした。ムニス被告の収監の過去を知ったカチマズさんは、ムニス被告と距離を置くようになった。しかし、彼女をしつこく探し求婚する男から救われなかった。裁判所は、「極度の愛情によって起きた殺人」と述べ、減刑した。

■批判の嵐

裁判所の判決文の一部は世論の批判の的となった。その表現は次のとおり。

「被害者と被告は誰にでも起こりうるように知り合った。証人の証言から理解できるように、2人の間には口論はなく、少なくとも口論があったとしても、これを見た人はいない。被告は、被害者と別れることは一切頭にはなく、逆に被害者と一刻も早い結婚を望んでいた。被告は、被害者が結婚の希望を全く受け入れず、別れることを被告に対して匂わせて伝えた結果、被告が抱える熱い思いの中で過剰な愛情での感情の高ぶり、精神状態の上で生じた怒りとにより、ナイフを携えて被害者といつも待ち合わせをしていた公園に赴き、そうした怒りの結果、被害者を複数回ナイフで刺した。感情の抑えが利かず怒り[に身を任せていたこと]は被害者が受けた刺し傷の数が示しており、怒りが被告の冷静な判断と行動を妨げており、従って当事件では計画性に言及することはできず、被告の行為が意図的な殺害の犯罪に当るとの法的・良心上の判断に達したことで被告が負うべき罪のうち無期懲役で処罰されることに[判決が下された]」

■主席検察による異議

娘を失い、孫が両親を欠くこととなった遺族は、法廷闘争を続けた。遺族は、司法の裁きの結果、最高裁が下した判断が誤りであると訴え、被告が「計画的な殺人」で裁かれるべきと主張し申請した結果、最高裁共和国主席検察局により受理された。主席検察局は判決が退けられ、被告に計画的な殺人罪により重刑化された終身刑が下されるべきと明らかにした。

■主席検察はどう述べたか

主席検察局が判決を棄却することを求めた書類の中で次のような表現を用いた。

「被告は犯罪に用いたナイフを願掛けの犠牲獣を捌くために購入したと述べた。しかし被告の所持金はわずか7リラであった。被告からは犠牲獣を賄えるようなお金は出てこなかった。ハティジェ・カチマズは、用心のためと被告と行った電話での会話の一部を、生命の危険を感じて記録していた。被告は彼が乗ったタクシーの中で腰から取り出したナイフを靴ひもで巻きつけて靴下の中に入れた。被告ムニスはハティジェ・カチマズの生きる権利を奪おうと行動に移るのに、いかにしても固く決意しており、犯行を考え計画し実行する前に一定の理性的な時間をもち精神上の安定に達していたにも拘らず、決意を変えず、確固として行為を実施し、想い定めた故意の殺人行為を、明らかに想定の範囲内で実施したのは確かである。」

(後略)

(注)ハティジェ・カチマズさんは、2014年9月13日にナイフで15ヶ所を刺されて殺害された。

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:52948 )