ラバトとテルアビブの国交正常化以降の異常な関係 モロッコ―イスラエル間の軍事協定 なぜモロッコとイスラエルの政治関係は進展しなかったのか(2)
2023年01月05日付 Hamshahri 紙
(続き)
正常化協定における政府・国民間の溝
2022年のW杯カタール大会では、モロッコ代表チームの輝きが多くの人々の目を驚かせた。モロッコ人はまるで世界の注目が集まっていると分かっているかのように、ほとんどの試合でパレスチナの旗を掲げて壇上やフィールドに現れ、パレスチナが世論レベルにおいて最優先事項であることを示した。ウェブサイト「ニューアラブ」もこの問題に対し、サッカーのモロッコ代表チームがW杯カタール大会で何度もパレスチナの旗を手にしてフィールドに現れた時、イスラエル当局が激しく嫌悪感を示したと言及している。2022年のアラブ・バロメーター世論研究所の最新の世論調査は、モロッコ人のうちたった31%のみがイスラエルとの関係正常化を支持していると示している。この割合は2021年に比べ10%低くなっている。上記のウェブサイトは記事の中でこの問題に対し、イスラエルとモロッコの関係正常化から2年を迎えるが、政治・外交的利害が互いに干渉しあうがために両国の関係には必要な信頼性と透明性が欠けていると言及している。モロッコの要求にもかかわらず、イスラエルは依然西サハラに対するモロッコ政府の主権を正式に承認しようとしておらず、このことこそモロッコがイスラエルとの正常化協定署名に落胆している最重要の原因である。西サハラ地域は古くからモロッコと隣国アルジェリアの紛争が続く場所である。 この冷え切った関係に、モロッコ駐在イスラエル外交使節長[在モロッコイスラエル連絡事務所長]の「デビッド・ゴブリン」によるセクハラの不名誉を加えることができる。このセクハラにより最終的に同氏はモロッコから召喚されることになったが、イスラエル側からモロッコ当局への公式の謝罪は行われなかった。
モロッコとイスラエルの冷めた関係において注目に値するもう一つの点は、この関係に対するモロッコ系ユダヤ人の失望の声である。一時期モロッコ系ユダヤ人の人口は25万人に達していたが、現在モロッコに残っているユダヤ人は3000人ほどであり、ニューアラブの記事によれば、彼らの多くがイスラエルを自分たちの代表者とは見なしておらず、イスラエル政府の政策を厳しく批判している。モロッコ在住のユダヤ系市民の一人であるマーヴィンさんはニューアラブに次のように語っている。「我々はモロッコ人であり、実際のところユダヤ人であることをイスラエルに認めてもらう必要はない。」
モロッコとイスラエルの軍事協定
モロッコとイスラエルの関係正常化協定の署名は政治領域においては注目に値する成果を挙げなかったものの、軍事領域においてはモロッコはイスラエルから同国製の次世代ドローンを購入することに成功した。
モロッコは契約を結び150機のドローンを「ブルーバード・エアロシステムズ」社から購入している。モロッコは、この「ワンダーB」と「サンダーB」という名のドローンの購入は航空防衛の強化のために行なったものだと述べている。またこれらのドローンの一部は、イスラエルの企業がモロッコで稼働させる予定の生産ラインで製造されることになっている。この場合、モロッコが軍事ドローン生産国の一つとして名を連ねるようになることが予想される。また、モロッコがイスラエルに発注したドローン2機はいずれも、他の既存の軍事ドローンに優越する特別な性能を持っている。ワンダーBは比較的静音で、垂直に離着陸するため滑走路を要しないという特徴を持っている。サンダーBも最大150キロメートルの射程を持ち、最大24時間連続で飛行可能な、より完成されたドローンだ。このドローンは、荒天時にも飛行可能である。
なぜモロッコとイスラエルの政治関係は進展しなかったのか
ワシントンの中東研究所北アフリカ専門家インティサール・ファキール氏「モロッコは西サハラに対する主権をめぐる自国の主張を西洋諸国に押し付け、イスラエルとの広範な戦略的パートナーシップを展開させようとして、イスラエルとの関係正常化に向けて進んだ。モロッコはポリサリオ戦線とアルジェリアへの対抗のため、イスラエルの技術、特にドローンを潜在的抑止力の一要素として必要としている。」
「他方でイスラエルにとって、モロッコとの関係正常化は北アフリカでの存在感を高める好機となるが、広範な経済的及び軍事的関係の一方で2022年までのところ両国の政治関係の正常化はそれほど進展を見せていない。イスラエルとの関係正常化に向けた上でモロッコにとって鍵となる問題はパレスチナの情況であり、それに注意を払わない場合はアフリカのアラブ諸国内でモロッコの比重が低下してしまう可能性がある。イスラエルは米国や西側同盟国に追随し、これまでモロッコの西サハラに対する主権の正式な承認について慎重な姿勢を示しており、このため両国の政治領域における関係正常化は必要な進展を見せていないのだ。」
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( 翻訳者:OK )
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