レバノン:UNIFILのマンデート延長をめぐるイスラエルの思惑
2025年05月19日付 al-Mudun 紙


■「UNIFIL」の延長:イスラエルは国連憲章第7章と緩衝地帯の固定化を働きかける

【本紙】

国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の延長時期が近づくたびに、国内外の圧力が高まり、この部隊の役割と権限に関する綱引きの度合いが強まる。しかし今年の延長という節目は例年のものとは異なっている。特にイスラエルが仕掛け、それを通じてすべて均衡の変化を試みた広範な戦争のあとに来るものであり、また強硬な立場で知られる米国の新政権下で来るものだからである。第一次トランプ政権の数年間では、UNIFILへの資金提供の停止を示唆するとともに、同軍の権限を拡張しようとする尽力が米国政府内でみられた。これは現在の段階でも繰り返されていることであるが、イスラエルがレバノンの領土を占領し、住民が自分の土地や家に帰還することを妨げつつ緩衝地域を設置しているという点では例年と異なる。

イスラエルの占領

イスラエル政府はもはや、この地域における新たな戦略の構成要素として、レバノン南部のみを考慮してはいない。実際同政府は、シリアとの交戦規定すべてを破壊し、1974年の停戦協定を反故にし、シリア南部における軍事支配領域を拡大した。またイスラエル高官らからは日々、シリア南部の広範な領域に対する支配の維持に関する発表が出されている。同様のことがレバノン南部でもあり、(ガザ地区)支援戦争が開始した当初、イスラエル人は、緩衝地帯を置くという意思を公に宣言し、今ではそれを武力によって押し付けようとしている。

イスラエルで何度も言及されていることによると、同国政府は自国の安全保障のためにいかなる国際的・地域的勢力をも信用しておらず、むしろ自ら自国軍を通じて任務を遂行することに固執している。これはイスラエルがレバノン丘陵の占領を続けるために提示している正当化手段の一つでもある。イスラエルは国際機関に対し、レバノンがヒズブッラーの完全な武装解除に成功しない限り、レバノン南部に軍隊を残留させることの目的はは北部占領地の住民の保護にあると説明した。さらにイスラエル人は、ヒズブッラーがリーターニー川南部で積み上げてきた非常に強大な軍事力、そしてUNIFILがそれを防止できなかったことを根拠に、同軍の活動を信用していないと述べている。

国連憲章第7章?

イスラエルはすでに米国国内や国連の場で、国連レバノン暫定軍に対する激しいキャンペーンを仕掛け始めており、その裏で、この部隊の権限の見直しや、それを国連憲章第7章に基づいて活動させることの承認を求めている。これらはレバノンや複数国によって拒否されている事項である。一方でイスラエルは圧力を続けており、当該の条件によらない場合、UNIFILの延長を拒否することを示唆している。またUNIFILへの予算における米国の財政支援を停止すると脅すことで、米国の立場を自国側に傾けようとさせている。

現地ではこうしたイスラエルの圧力と並行して、UNIFILは自ら行っているパトロールを通じた南部での活動メカニズムの活性化を希求している。その中にはレバノン軍との連携のもとで活動している部隊もあれば、前回の任期延長時に改正された条項、すなわちレバノン軍との調整なしに活動する権限を示した条項に基づいて、単独で活動している部隊もある。またUNIFILのパトロールは、これらの巡回作戦の実行とヒズブッラーに関連していると疑わしい場所への立ち入りを強行し、これは現地住民とのトラブルや衝突を引き起こすこととなった。

UNIFILの権限

現状は、UNIFILが任期の延長に先立って、自らの活動メカニズムの特定の既成事実を課そうとしていることを示している。一方ヒズブッラーは、UNIFILが行うこれらの活動に対抗し、彼らの単独行動を防ぎ、またレバノン軍以外には許されていない軍事拠点への突入・立ち入りを妨害することで、それとは逆の既成事実を課そうとしている。

UNIFILの延長期限は今年8月に到来するが、それまでに現地への圧力が増加する可能性は高い。イスラエル政府はこの国際組織を信用できず、同組織がレバノンに残留することを望んでいないと主張しており、むしろ軍事・安全保障面で自ら支配する緩衝地帯の設置を好んでいることから、イスラエルが軍事面・政治面・外交面において過激化する可能性も無視できない。

イスラエルはまた、国際的な取り組みを通じてUNIFILの活動メカニズムの修正に介入しようと試みており、それにドローンや監視用精密機器を装備させようとしている。

このイスラエルの圧力はガザ地区に対する戦局の激化や、同国がシリア南部の広範な領域に残留することを主張するのと同時に起こった。これによりレバノンは二つの岐路に立たされている。一つは、イスラエル政府が、ヒズブッラーがいまだに再構築が可能なほど強大な軍事構造を持っているとみなしたのであれば、イスラエルのエスカレーションは繰り返されるという可能性。そしてもう一つは、イスラエルが緩衝地帯を押し付けるために占領している地点や丘陵に残り、そこが軍事・安全保障・政治にまで影響を及ぼすためのイスラエルにとっての恒久的な拠点となるという可能性である。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:田中友萌 )
( 記事ID:60166 )