■シリアとイスラエル間の安全保障協定、土壇場で頓挫
【本紙】
過去数か月にわたり米国が仲介してきたシリアとイスラエルの会談は、イスラエル政府が再び、シリア南部スワイダー県への「人道回廊」開設を要求したことで、土壇場で新たな障害に直面した。事情に詳しい4人の消息筋が『ロイター』通信に明らかにした。
〈主権を脅かす回廊〉
シリア政府とイスラエル政府は、ここ数週間で安全保障上の合意案の策定に近づいていた。しかしイスラエルが、シリア南部スワイダー県への救援物資を搬送するための陸路回廊の開設を認めるよう要求したことで、交渉は再び行き詰まった。
シリアと米国の消息筋らが『ロイター』通信に明らかにしたところによると、協議の最終段階でこの条件が再び持ち出されたことで、今週予定されていた国連総会での合意発表は見送られたという。シリア政府はこの要求を、自国の主権を直接侵害するものとみなしている一方、イスラエル側はドゥルーズ派住民を保護するために必要だと主張している。
〈非武装地帯〉
トム・バラック米国特使は、成立が見込まれる合意を「緊張緩和協定」と説明し、イスラエルが攻撃を停止する代わりに、シリアが国境付近への重装備の移動を控える内容だと述べた。バクー、パリ、ロンドンで行われた交渉では、スワイダー県を含む非武装地帯を設置を目的としていた。
イスラエルは、軍事介入を正当化するために、シリアのドゥルーズ派を口実としている。特に、イスラエルには約12万人のドゥルーズ少数派が暮らしており、その一部はイスラエル軍に従事している。イスラエル政府は、「シリアのドゥルーズ派の保護」を掲げ、越境空爆を正当化してきた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相府は、交渉の行方は「イスラエルの利益の確保」にかかっているとし、そのなかには南部の非武装化やドゥルーズ派の安全確保が含まれていると述べた。
〈シャルア氏の演説とイスラエルの留保〉
シリアのアフマド・シャルア大統領はニューヨークでの演説で、イスラエルの意図に懸念を表明し、次のように述べた。「我々はイスラエルを恐れている。我々はイスラエルを懸念している。その逆ではない」。シャルア氏は、1974年の兵力引き離し協定への復帰を「不可欠だ」として繰り返し呼び掛けているが、イスラエルが新たな協定を履行する意思には疑問を呈している。
アサド政権崩壊以降、イスラエルはシリアの軍事施設に対して集中的な空爆を行い、南部に部隊を派遣した。また中央集権的で強力なシリア国家の再建を阻止し、文献状態の継続を望んで、米国に圧力をかけている。
国連総会の前には交渉が「前向き」だと評されていたものの、現時点では再開は困難とみられる。『ロイター』通信によると、事情に詳しい外交官は、米国が「安全保障協定」から「緊張緩和協定」へと後退した可能性があると述べた。これは、情勢と交渉の行方に対する不透明さを反映している。
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( 翻訳者:鈴木美織 )
( 記事ID:60847 )