コラム:イラン・米協議には現実的な視点が必要

2007年05月29日付 E'temad-e Melli 紙
 エラーヘ・クーラーイー

 イランとアメリカは、前体制の時代より今日まで残る辛い記憶に苦しめられており、このような両者の関係の負の影響はさまざまな領域に及んでいる。

 実際、イランとアメリカの関係は過去28年間、さまざまな紆余曲折があり、また二国間・多国間のさまざまな要因の下で生まれたさまざまなチャンスがあったにもかかわらず、はっきりと感じられるような変化というものを受けいれてこなかった。

 確かに両国には、幾度となくこの関係を変える必要性を訴える有力な人々やグループもいたが、しかし両国に横たわる不信という高い壁は、変化に対する障害として存在し続けたのである。

 9.11とテロとの闘い、そしてここ数年発生したさまざまな出来事を受け、アメリカがイスラーム共和国の国境に自らのプレゼンスを示すようになったことで、両国の関係を変える必要性は、以前にも増して明らかとなった。実際、変わることなく続くさまざまな困難や悲観論にもかかわらず、両国はターレバーン政権の崩壊で建設的な協力を行うことができた。他方、8年間にわたり我が国の発展の基礎を攻撃し、われわれの最良の若者たちの命や物的・精神的資本に著しい打撃を与えてきたイラクのサッダーム・フセイン体制の崩壊に際して、両国は一種の隠れた協力を再び行わざるを得なかった。

 アフガニスタンやイラクでの出来事によって明かとなったのは、イランとアメリカ両国の指導者たちは、さまざまな場面で両国が建設的な相互関係を持たざるを得ないということを否応なく認識し、互いの協力によって生まれる否定することのできない利益の存在を認めた、ということである。

 今日イラクで起きていることは、次のような潮流の中にある。すなわち、アメリカは大中東構想を掲げながら、実際にはその他の外交政策と同じく、安全保障というものを中心に地域政策の優先順位を組み立てているということだ。つまり、冷戦後に拡大した理想主義、さらには大統領二期目のブッシュによるイデオロギー偏重の政策にもかかわらず、現在イラクで起きている恐ろしい惨劇を抑えるためには、今日アメリカの指導者たちは地域の現実に注目する必要性を、すなわちイラン・イスラーム共和国の存在感とポテンシャル・能力を、認めざるを得なくなっているのだ。

 もちろん、このことはイランがイラクの現在の状況の原因となっているという意味ではない。イラクは専制支配とあらゆる意味での停滞と後進性という、数世紀来続く遺産に悩まされている。しかしここで考えなくてはならないのは、ともかくもこの国は、我が国の隣国に位置しているのであり、アフガニスタンの安全と同国における国家建設がわれわれにとって重要性を帯びているのと同様に、イラク人民の今後の運命と同国の平和と安定は、われわれにとってきわめて重要である、ということである。

 イラクはアフガニスタンと同様、今日我が国と地域の安全確保にとって重要な場の一つに変容している。このことがまさに、緊張が続き根源的な変化を経験している中東地域において、イランとアメリカ両国が互いの国益を合致・共有させることのできる部分なのである。

 現在の国際政治情勢は、両国の利益の共通化をもたらした。イラク情勢をめぐるイランとアメリカの話し合いの実現は、両国の指導者がその必要性を認識していることをよく示している。しかしイランとアメリカの関係は過去28年間にわたり、辛い歴史的記憶の影響のもとにあり、またこれまでの両国関係はさまざまな問題や複雑な要因、解きほぐすことのできない困難にさらされてきた。それゆえ、イラク問題をめぐる今回の話し合いに関して、道を見誤り、非現実的な期待を寄せることは避けねばならない。

 イラン・アメリカ両国の一致した利益として、イラク政府の今後と同国の治安・安定確保の方法に関して話し合いが行われることで、その他の分野にも前向きな影響がもたらされる可能性があるにすぎない。それも、アメリカがイランの建設的な役割とその協力の肯定的な影響について、現実的観点から評価し、アフガニスタンでの協力を「悪の枢軸」発言に変えてしまうような経験を繰り返さないことが条件だ。

 実際、〔今回の〕両国の行動は、互いの国益にもとづいた建設的な相互関係の持続に寄与する可能性があるが、このことについて非現実的できわめて楽観的な評価をすることは、何の意味もない。そうではなく、過去28年にわたって培ってきた貴重な外交能力を活用し、イランの誇りと名誉の維持と、我が国と周辺諸国の利益の確保を基本とした現実主義的アプローチをとることによって、初めて両国間で協力関係を継続させ、不信と悲観を排除し、緊張関係を和らげるための状況が実現するのである。

 今回の話し合いは、両国にとって互いの国益の確保のために大切に活用するべきチャンスであるように思える。暴力主義者たちが地域に緊張をつくり上げることで、自らの理念を実現しようとしている現下の状況では、特にそうである。

 忘れてはならないのは、ソ連邦崩壊後、アメリカの多くの政治的・経済的資源が、自らの世界的な外交政策にとっての新たな敵を創り上げることに注がれたということである。この敵とは、イラン・イスラーム共和国ではない。我が国の体制関係者は、われわれの敵が世界において、われわれが敵であるかのようなイメージを提示し、それをもってわれわれの利益を攻撃するための口実にするようなことを許してはならない。



訳注:エラーへ・クーラーイー(女性)は国際政治の専門家で、第6期国会では改革派の議員として活躍した。


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翻訳者:斎藤正道
記事ID:11031