「エヴリヤ・チェレビー」出版物について

2012年02月08日付 Zaman 紙
エヴリヤ・チェレビーの生誕400周年にあたる2011年は、数多くのシンポジウム、セミナー、パネル・ディスカッション、式典が行われたことで記憶され、記念される年となった。

イスタンブル広域市はイスタンブルで、ガーズィー大学・ビルケント大学はアンカラで、トルコ言語協会は第79回言語フェスティバルの一環としてイスタンブル、ブルサ、キュタフヤにおいて、それぞれ国内的・国際的なシンポジウムを開催した。これらの諸会議が、エヴリヤ・チェレビーに関する様々な活動の中でも筆頭に挙がるものであると言って間違いないだろう。

しかし、「世界の旅行者」エヴリヤ・チェレビーに関する催し物は、いま取り上げたような会議だけには収まらない。チェレビーに関しては、特筆するに価する一連の出版活動も行われたことも見逃せない。その中でも筆頭に挙がるのは、疑いなく、エヴリヤ・チェレビー生誕400周年に行われた活動の中でも最大の働きをされたセミフ・テズジャン教授とヌラン・テズジャン准教授が出版した著作である。

補足として、次のことを記しておこう。テズジャン夫妻が行ってきたエヴリヤ・チェレビーに関する活動は、実は2001年までさかのぼる。というのが、ドウ・アクデニズ(東地中海)大学が「エヴリヤ・チェレビーと『旅行記』」と題した国際シンポジウムを開催したのは2001年だからである。ヌラン・テズジャン氏と共に、カーディル・アトランソイ氏がコーディネーターを務めたこのシンポジウムには、エヴリヤ・チェレビーに関する研究によって知られるロバート・ダンコフ教授をはじめ、国内外のトルコ学者が参加した。ここで、ダンコフ教授については特筆しておかなくてはならない。ヤプ・クレディ出版が刊行した全10巻の『旅行記』は、ダンコフ教授の力を借りなければとうてい出版までこぎつけられなかった。もちろん、ダンコフ教授と並んで、先日亡くなったユジェル・ダール博士と、セイト・アリ・カフラマン博士の働きも忘れてはならない。おかげで遂に、我々は完全無欠な『旅行記』を手にしているのである……。

2007年に主催したビルケント大学でのシンポジウムにつづき、テズジャン夫妻が編集した最新の出版物は文化観光省刊の『エヴリヤ・チェレビー』である。これは「記念出版(Anma ve Armağan kitapları)」シリーズの一冊として、昨年末に出版された[Ankara, 2011]。

両氏が同書に寄せた「前書き」には、「第一の目的は、エヴリヤ・チェレビーと『旅行記』を様々な方向から紹介していくこと、現在までに明らかにされた知識を記し、それらに新たな成果を付け加えていく」ことであると述べられている。しかし、一点、注意点も挙げられており、「しかしながら、読者と研究者諸氏が常に念頭に置いておかなければならないのは次の点だ。エヴリヤ・チェレビー研究(お望みなら、西洋の用語を用いてエヴリヤオロジー、あるいはオスマン時代へのノスタルジーに耽ってエヴリヤ・シナーシーと呼ぶこともできるだろう)は非常に新しい学問分野である。この分野における現在の大家ロバート・ダンコフ氏もしばしば繰り返すように、まだ歩き始めたばかりなのである。エヴリヤとその作品の秘密を解き明かしていくためには多くの研究が必要である。」

同書には、「エヴリヤ・チェレビーとは何者か?」「エヴリヤ・チェレビー研究史」「『旅行記』の写本と刊本」「地図でみるエヴリヤ・チェレビーの旅行」「『旅行記』における国、地域、町」「『旅行記』断章」「旅人としてのエヴリヤ・チャレビー」「歴史的観点からの『旅行記』」「文化人類学の観点からみた『旅行記』」「美術史の観点からの『旅行記』」「言語の観点からの『旅行記』」「作家としてのエヴリヤ・チェレビー」「ナイル川地図」「過去から現在までの文学者や知識人たちが見たエヴリヤ・チェレビー」「エヴリヤ・チェレビーの用いた史料」などのタイトルの論文が収められている。

ヌラン・テズジャン博士が同書に掲載した「(エヴリヤ・チェレビーの)ナイル川旅行:エジプト、スーダン、エチオピア」と題した論文は、ぜひロバート・ダンコフ氏とヌラン・テズジャン氏の共著『エヴリヤ・チェレビーのナイル川地図―「ナイル川に関する比類なき真珠」』という著書[Yapı Kredi Yayınları, 2011]と合わせて読むことをお勧めする。実のところ、同書(文化観光省刊『エヴリヤ・チェレビー』)にも、R.ダンコフ、N.テズジャン両氏の「ナイル川地図」という論文があるが、エヴリヤ・チェレビーの「年が60を越えたにもかかわらず、ナイル川の源流を見たいという情熱により旅立った神秘的なナイル川の旅路」は、この要約的な論文によってではなく、『ナイル川に関する比類なき真珠』によって辿っていくことをお勧めする。


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翻訳者:森 天真
記事ID:25596