イラク:書籍『そしてモースルは陥落した』、この街がどのようにして「ダーイシュ」によって陥落したのか(2)

2019年10月31日付 al-Quds al-Arabi 紙
■書籍『そしてモースルは陥落した』:この街がどのようにして「ダーイシュ」によって陥落したのか(2)

【マルワーン・ヤースィーン・ドゥライミー】

本書の中で述べられている情報の多くは、ヌジャイフィー氏が行ったテレビ討論において既に簡単に述べていたが、同氏は本書ではそのときには触れることができなかった機微な領域にまで深く立ち入っている。というのも、テレビ討論の性格は往々にして討論者同士が混乱し、舌鋒戦を行い、激情に身を任せるような議論が支配的だからである。また、この(モースル陥落という)事件の文書化は、学術アプローチだとされる原稿の中で、この事件に先行する出来事とその余波に関する同氏の包括的な理解を伴って行われており、また出来事を語る際の同氏の手法は時系列および客観的な関連性に基づいている。そして、物語の文脈においてそれらのデータを収集することは客観性を保つのに寄与し、我々が物語のプラットフォームと見なすものを形作った。そのプラットフォームは事件を読み解く上での多数の基準にあふれており、モースル陥落前にこの街で支配的であった全体的な風潮の特徴について明確な視点を構築するための基本的な要素を形成する。加えて、ヌジャイフィー氏はモースル陥落時の県知事であったことを考えれば、同氏が自分以外知りえなかったことに関する膨大な記憶を保持しているというのはもっともなことである。そういうわけで、読者は(本書を通じて)最も重要なアーカイブを目にすることとなるだろう。そして、このアーカイブはこの重大な事件の暗号と秘密を解読しようとする者に対して(解読への)道を舗装し通行可能にするものである。ヌジャイフィー氏は読者に様々な角度から明確なイメージを形成するため、著書の中に同氏が知っているすべての文書や現場にいた人達の証言を盛り込んでいる。そのうえで、モースル陥落に対する同氏の責任について同氏に向けられた疑いを晴らすことを達成している。加えて、背後にヌーリー・マーリキー元首相の取り巻きがいるメディアキャンペーンも広まり、特に両者の関係は悪く「鬱血」や「痙攣」とも呼べるものだったとの言説が流布した。そして、この状態はヌジャイフィー氏が指摘しているように、マーリキー元首相が何度もヌジャイフィー氏を打倒しようとした時分である2014年6月10日まで続いたという。

(後略)


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翻訳者:藤原路成
記事ID:48036