大声が毎日の仕事になるとき 呼び込みを生業に(2)

2023年07月04日付 Iran 紙

(続き)
 数歩離れた向こうのほうでは、ダーニヤールさんが本を数冊手に持ってしゃがれた声でモールの地階を指差している。「下の階の書店では本が50%オフのセール中です。本をお求めの方、ブックレットをお求めの方は下へどうぞ。」ダーニヤールさんは経営学部の学生で、この仕事をアルバイトとして選んだ。彼の日給は25万から30万トマーン[8月6日の市場レート(1ドル=4万9550トマーン)では30万トマーンは約6ドル]だという。彼は続けてこう話す。「この仕事を始めて3年になる。朝から夕方まで同じ場所に立って大声を出しているよ。呼び込みの技術が高ければ高いほど、客は一層興味を持つし、店主の売り上げにも影響し、それに合わせて給料も上がるんだ。でもこの仕事には保険はないし、何の雇用保障もない。働けば働くほど健康を害するけど、仕方ない。僕は一般市民だけど、多くの企業や組織に仕事や雇用を見つけるのに苦労しているよ。」

 ダーニヤールさんは咽喉の病気についても触れながら、こう話す。「僕の声帯は傷付いていて、声もしゃがれてしまった。毎晩、家に帰ったら一言も話せず、部屋の隅で静かに座っているんだ。本当に話す気になれないからね。」

 私は、モールの地階にある書店の一つを訪ねてみる。店主のナーセルさんは辛抱強く書棚を整理している。歩道にいるダードザンについて彼に尋ねると、ダードザンを雇い入れたあと書店の売り上げが伸びたことに触れながら、こう話す。「うちの店は地階にあるから、お客さんを呼ぶにはダードザンを雇うしかない。そうすれば店を見てもらえて、お客さんの興味も惹けるからね。彼らがいるおかげで、我々の収入は前より良くなったんだよ。彼らは通常1日8時間働いてくれて、私は彼らに日給35万トマーンを払っている。でも保険や手当はない。私にとっては割に合わない話だし、それについては双方合意もしているからね。彼らのほとんどが仕事を探している若者だよ。お客さんの気を惹くためには、話術と良く通る声が必要。でも、この仕事は、残念だけどずっと続けていると健康を害してしまう。とにかく、彼らも食っていかなきゃいけないし、他にどうしようもないんだな。」


◆タクシー乗り場での呼び込み

 エンゲラーブ広場の東、黄色のタクシーが列になって並んでいるところでは、日焼けした顔の男が、客を目的地に向かうタクシーに乗せようと案内をしている。アッバースさんは53歳。仕事の苦労で彼の顔には無数のしわが刻まれ、年齢以上の表情を見せている。彼は22年間このタクシー乗り場で仕事をしており、タクシーの運転手たちは彼がいないとこの乗り場は秩序を保てないと考えている、と話す。タクシーの呼び込みと客引きの仕事の大変さの話になると、彼は頭を振ってこう語る。「[イラン暦]1380年(西暦2001/02年)から現在まで呼び込みの仕事をしているんだ。一度、あまりのプレッシャーに手術を受けなければいけなかったこともあるよ。声帯が傷ついて、声もしゃがれてしまったけど、仕方ないね。」アッバースさんはタクシー乗り場に自身がいることの必要性とこの仕事の必要性についてこう話す。「この仕事は、きちんと定義付けられた仕事としてはどこにも記載されていないかもしれないけれど、とても重要な仕事だ。もし私がいなければ、乗り場の車線の秩序が乱れてしまい、たくさんの自家用車やその他諸々の車がタクシー乗り場に停まり、客を拾ってしまうだろう。そうならないように、私は大声でタクシーの方に客を案内し、客に順番を守らせるようにしているんだ。こんな大変な仕事なのに、我々の仕事には雇用保障がない。誰も何もこの仕事を保障してはくれない。大変な仕事なのに、何の保険もサポートもない。」

 収入の話になると、アッバースさんはこのように語る。「朝7時から夕方4時まで働いている。夏冬の繁忙期には日給20万トマーン、客が少ない日は日給10万トマーンの給料をもらっている。」

 数メートル先では、中年の男性が大きな声で通行人に冷たいアイスクリームを食べるよう呼び込みをしている。「こんな暑い日は、アイスクリームとジュースでクールダウンを。熱中症を避けたければ、アイスクリームや冷たいジュースで体を冷やしにさあどうぞ。」 アゼルバイジャン出身の60歳、サハンドさんはこのように話す。「週に3日か4日、朝の10時から夕方6時までこの仕事をして、残りの日もタクシーの客引きをしている。大変な仕事だ。朝から日差しの下で店の周りを歩き回り、大声で客を呼び込まなければいけない。たくさんの客を呼び込めば、それだけ一層給料が増える。もちろん、私は若い人のように頑健ではないし、声もかすれているから、週の半分ここで働いているんだ。」

 日が沈み始め、涼しい微風が暑さを少し和らげる。私は主要広場から遠ざかるが、アッバースさんのしゃがれた声はまだ聞こえてくる。バーザール[市場]はまるで動く人間のようだ。いくつかのモールの前を通り過ぎる。するとダードザンの声の代わりに録音されたカセットテープの音声が私の注意を惹く。集客のために繰り返されるフレーズ。「本が欲しい方、モールの奥までどうぞ」、「参考書、学術書が半額」。少し先の方で黄色のプラカードを持ったサイードさんが指さして言う。「この機械は何年もこの単調な音声で同じフレーズを繰り返しているんだ。こんな状況と本の価格高騰で本の売り上げが減ったら、書店主は我々の代わりにこの録音された音声を使うようになるだろうね。」

−(了)−


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翻訳者:OM
記事ID:56102