コラム:AIは中東の姿をどう捉えているか
2025年06月17日付 al-Quds al-Arabi 紙
■特別コラム:Iは中東の姿をどう捉えているか
【サブリー・サイダム博士】
物語を支配するものは、影響力をも支配する。今日の紛争は、このように要約することができる。特にAIがますます影響力を強めるいま、その存在は意図的であれ無意識にであれ、地図の輪郭を描いたり、物語を定着させたり、国家や国境に正統性を配分する手段となっている。AIに中東の政治的・地理的な情勢を訊くと、従来の地理の教科書に書かれているような伝統的な説明ではなく、隣接する国々が複雑に絡み合うネットワークを提供してくる。そのなかには、安定している国もあれば、崩壊の危機に瀕している国、国家的アイデンティティの危機にさらされた国もある。例えばパレスチナは、地図の上で混乱した様子で現れる。あるモデルでは「イスラエル」に組み込まれ、あるモデルでは「係争地域」として記録される。これは単なる技術的な詳述ではなく、国際的な情報源の取り扱いによる直接的な結果である。そしてそうした情報源の多くは、西洋系またはシオニストの観点を採用しており、そこではパレスチナのナラティブは意図的に排除されている。
AIは本質的には倫理的な立場を持たない機械であり、学習したことを繰り返すだけである。その情報源がGoogleマップやウィキペディアの説明だったり、西側メディアの記事だったりすれば、それらに基づいて中東の様相が再構築されることになる。そしてそこに描かれるのは、植民地主義者によって描かれた国家であり、サイクス=ピコ協定によって生まれた国境であり、「主権国家」ではなく「体制」として記述される政府である。湾岸諸国は、歴史的あるいは文化的な存在としてではなく、西側の利害によって導かれる石油同盟として描かれる。パレスチナ問題は、安全保障上の一問題に矮小化され、解放運動は「脅威」のリストに分類される。一方イスラエルは「中東唯一の民主国家」という名のもとに美化されるのだ。
(後略)
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翻訳者:湯浅稜
記事ID:60552