
―(続き)―
他方、制裁委員会はトリガー・メカニズムの手続きにおいて安全保障理事会の中から選ばれなくてはならないが、このプロセスを抑止する手段という形で機能する可能性がある。もし、ロシアと中国の協議し支持を得て、一方的な決定を妨げられるような形でこの委員会やそれに関係する専門家パネルが構成されるなら、基本的には制裁に関する効果的な監視や執行の可能性は無くなるか、少なくとも異なるものとなるだろう。特に、BRICS加盟国らも、おそらくロシアと中国の行動に従うだろう。また、インドがイランとエネルギー分野での協力を表明したように、様々な国がイランと協力する用意があると表明していることは、効果的な外交を行えば、より多くの支援を獲得することに繋がり、国際システムに存在する亀裂をより深くすることが出来ることを示している。
この観点から、外交機関の役割はいつにも増して重要となっている。残念ながら、我々は時に国内政治空間において外交機関が弱体化する様を目にしているが、この流れは現況下においてとても危険である。この機関の強化及び外交官らの完全な支援、彼らによる地域内外における活動の増加は、この段階の必要事項の一つである。
ヨーロッパ諸国の動きを分析する際にも、ヨーロッパの国々は現在中東情勢の中で自身が手放した役割を取り戻そうと努力している点に注意しなくてはならない。トランプの一方的な行動によってヨーロッパが地域の均衡を保つ役割から外れた後、現在彼らはスナップバックの名目で、切り札を切ろうとしている。しかし、このような行動は、イランからの信頼を損なう原因になるだけでなく、不信感を増加させ、彼らの取り組みが失敗に終わる道筋をつけることになる。イランはこの政治的な駆け引きを正確に理解し、ヨーロッパの地域における権力の再確立を失敗に終わらせるべきで、これらの国々に自国の立場を強化するために制裁問題を利用させてはならない。
外交及び法的措置の傍ら、政府は国内問題についても特別な注意を払わなくてはならない。制裁関連の心理作戦は、これまでのところ西側が期待するほど社会的雰囲気を煽り立てることに成功していないとはいえ、しかし予想される経済的圧力への注意を怠ってはならない。経済的弱者への生活支援として、クーポン券を利用した割引制度や、社会福祉分野での補償措置などのシステムの強化に、真剣に取り組まなければならない。このような措置によって、政府は外国の圧力に直面している中でも、既存の社会の安定や国民的結束を強化することが出来る。
我々が今日直面している事象は、法的、メディア的、心理的側面が絡み合っているひとつの政治的な駆け引きである。数々の脅迫の存在にもかかわらず、国際情勢は以下のような状況にある。すなわち、積極的な外交、及び大国の間にある相違を賢く利用すること、そして国内状況を管理することで、これらの脅威をチャンスに変えて、国はより少ない犠牲でこの状況を乗り越えることが出来る。
―(了)―
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
翻訳者:KY
記事ID:61013