新農村建設のためには、民衆の力を開発、活用へ
2013年10月22日付 VietnamPlus 紙

 19の基準に沿った新たな農村の発展に向けたアプローチの仕方について、地方各省は、「農村がなお極めて貧困である内は、地域社会の力を動員するのは非常に困難である」として、国に対し「民衆の力を開発、活用する」よう求めるべきである。
 これは、ベトナムにおける新たな農村の発展に向けた国際シンポジウムで、アンザン大学とタンタオ大学の元学長で、オーストラリア科学技術アカデミーの会員であるボー・トン・スアン教授が指摘した意見である。シンポジウムは10月22日、農業農村開発省、国連食糧農業機関(FAO)、ベトナム農村開発科学会の共催によりハノイで開催された。


   これまでは、家を、屋根から、造ってきた

 ボー・トン・スアン教授によると、農村はいまだに貧困状態にあり、「国家と国民一体」の政策を確実に継続することができず、教育が不十分で、貧困状態にあり、生産物を売る為の市場もない荒波の中を、自力で泳がなければならないような農民に頼ることはできないという。
 ベトナム農村開発科学会(PHANO)のチャン・ズイ・クイ教授は、そうした意見に賛同し、現在、農村の開発に向けた活動は、総合性や調整力が不足するなどの多くの限界がみられるとしている。その一方で、農村の経済には、農業・工業・サービスの全てが必要であり、特に農村の市場、人的資源(教育や健康)、そして、雇用の開発が求められている。
 クイ教授によると、ここ長らく、農村の開発は上から下へのアプローチにしたがって進められ、最も重要である民衆や当事者の参加がなく、地域の特性を生かすこともなく、外部からの援助をただ待つという姿勢を植え付けてきた。
 一方、農村の開発は、常に、緑の革命のような農業の生産性の向上に集中し、生産の拡大を目指した、真に技術面でのものであり、雇用や収入、社会福祉など農民の暮らしに関する目標に関しては、注意が払われることはなかった。
 さらに、現在の農村では市場や社会のシステムが不十分で、よって、農村の開発は確固たるものではない、とクイ教授は述べている。
 以上の点により、新たな農村の建設・発展の過程の改善のため、ベトナム農村開発会は、政府や関係機関に対し、総合的な戦略を確立すべきだと提案した。即ち、暮らしの多様化を図り、地域社会を基礎にして、そして地域社会によって、農村のシステムを整備し、強化していかなければならない。


   韓国の“セマウル運動”モデル

 新たな農村の建設、開発の過程における以上のような限界を解決するため、農業農村開発省の農村開発・協力経済局のグエン・ミン・ティエン副局長は、「新たな農村の建設過程において、農民の主体的役割を高め、これまでの考え方(いわゆる「国家と国民一体」)を改め、農村を刺激する政策に代えていかなければならない。即ち、農村に積極的に資金を拠出し、原材料地域としての発展に必要なインフラを整備してく必要がある」と指摘している。
 そうした農村での橋、道路、あるいは、港、学校、診察所、市場、郵便局のようなインフラの整備により、農村の人々に雇用が生じ、収入を得ることができるようになるという。
 ボー・トン・スアン教授の提案は、国家は、農民と企業が、合作社や集団農業、農園経営などのモデルにより、共により多くの収入を得られるよう、(参加する各セクターを高度に結び付けて)価値を連鎖的に生み出していく生産の仕組みを整える必要があり、そして、そうした連携がうまくいくよう最初の5年間は税制面で優遇することなどが必要である、というものである。
 その一方で、国家は、現在のような効果のない、あらゆる知識を詰め込むようなやり方ではない、新しいやり方で、農民を養成していく必要がある。
 企業の生産と結びついた合作社や原料生産集団の農民を、VietGAP(Vietnamese Good Agricultural Practices)やGlobalGAPといった安全基準-まさに企業が必要とすべきもの-に沿った知識や技術を習得できるよう養成する。
 新たなモデルの農民は、自分の考えや経験に従って自由に生産するのではなく、GAPの安全基準を厳格に遵守しなければならない。
 シンポジウムで、1970年代の韓国のセマウル運動の経験を紹介した韓国・慶北大学のKim Jung Ho教授は、「科学的な根拠と国内外の市場のチャンスを基にした計画は、農民の農業を向上させ、早々に収入(GDP)を高め、購買力を上昇させる環境を整えるもので、さらに、地方の予算を確実に増加させ、他の指標を実現するための資金となる」と説明している。
 他方で、まずは、地方の地域社会の主体的役割を活かす必要があり、その上で、国家は、方向性を定め、規定や政策、サポートのためのシステムを策定し、幹部を養成し、実現のための指導をする役割を担う。具体的な活動は、積極的、自力的、協力的な精神によって決定し、実施していくためにも、まさに農村の住民による地域社会によって民主的に話し合われなければならない。

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 農業農村開発戦略政策院(農業農村開発省)の最近の調査によると、4人家族の農家1世帯あたりの平均収入は1日あたり60,000ドン(1人あたり1日15,000ドン)で、これは貧困の基準を下回っているとされる。
 47.4%もの農家が現在の生活に満足していない。20%の農家が食費を削らなければならず、50%の農家が借金をしなくなくてはならない。その内、銀行からお金を借りているのはわずか13%で、残りの87%は民間の高利貸しから借金している。
 1世帯あたりの毎年の貯金額はわずか500万~800万ドンで、彼らの収入の10~15%相当。その内の80%はリスクへの備えに使われ、生産のための再投資に使われるのはわずか20%のみ。

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( 翻訳者:守屋仁一、横田知之 )
( 記事ID:375 )