誇大広告診療所の新たな被害(4-46-1-1,16-1)
2013年11月24日付 The Voice 紙

 ドー・ピューピューエーは「手術室」と名前の付いた狭い部屋の中で、地獄にいるかの如く苦痛を味わった。痛みなく、出血もなく10分で手術します、という診療所の広告文句を目蓋に思い浮かべて、歯を食いしばって耐えた。
 地方出身のため、ヤンゴン市で入院治療する時間がないという理由がひとつ、また痔の患いであるために恥ずかしいということもあり、 国立病院や他の個人病院には行かないで、訪問宣伝で渡された広告を見て、ラター郡区にある新しい診療所に診察に来たのだった。
 診療所に着いても、ビルマ人は見かけず、医師といって、入り口にビルマ人医師の名前を書いた札が3つ掛けてあるのだけで、診療所内には中国人医師と看護婦しかいない。
 しかし、手術室に入る時と診察の時には、通訳を通してお互いに話すことができた。医師による診察に料金が30万チャットかかることは知っていたが、実際に手術室から出てくると、術後の治療費用も含めて、合計およそ110万チャットほど費用がかかると中国人医師が通訳を通して言った。
 以前診療所で、手術後も引き続き治療をするように言われたが、続けて治療するには、薬にも高額の費用がかかり、田舎から出てくるので金銭的に余裕がないことを言うと、支払いができないならば治療はできないと、返答があり、45歳、痔を患ったドー・ピューピューエーは唖然としたのだった。
 一方、彼女を手術した新しい診療所の責任者たちは、診療所にビルマ人医師4名がいること、治療費も患者の病状次第で、少なくとも50万〜100万チャットほどは、かかることを本誌に語った。
 いずれにせよ、ドー・ピューピューエーは、自分と同じようにたくさんの病人が、その診療所へ治療に訪れていることを知った。そのなかには、ヤンゴン市に住んでいる人たちだけではなく、地方からヤンゴンに治療に来ている人たちもいることを、ある総合診療医が語った。
 ヤンゴン市で、開業、治療している上述のような診療所の大半は、主に生殖器官系の病気の治療をしており、患者の多くが痔の病人であることを実際にそれを目にした一部の人たちが本誌に語った。
 羞恥心や恐怖心が強いミャンマー人は、痔を患うと、近くの医師免許をもつミャンマー人医師たちのもとで診察を受けずに、人目につかず医療行為を施す外国人医師たちのもとに治療に行くが、それはミャンマー人にとって命を脅かすほどの危険となりうると総合診療医であるドクター・ティーハーティッが注意を喚起した。
 痔の諸症状として、便に血が混じること、座ると肛門に痛みがあること、肛門から血管瘤が外側にでてきてしまうことのほかに、時々、血管瘤から出血することで、低血圧や鉄分不足などが生じうることを同氏は説明した。

 ヤンゴン市に旅行にきて、痔の痛みが強くなってきたために治療を受けた、ターチーレイ市在住のドー・ピューピューエーへのインタビューの一部を抜粋して掲載する。

Voice:この診療所で診察を受けた経緯について教えてください。
DPPA[:Daw Phyu Phyu Aye]:診療所で診察を受けてから、旅行をしている間、痔の痛みがとてもひどかったです。4日経って、出血と激痛で診察を受けに来たと言うと、カルテを作らなければいけない、カルテ代に5000チャットかかると言われました。それを支払ってカルテ帳を作りました。次に、医師による診察にさらに5000チャット支払って、と請求されました。病状を判断しなければいけないということで、医師が来て診察しました。そこでは、医師は中国人で、ミャンマー語の全く話せない人であり、一緒にきた看護師がミャンマー語で通訳をしてくれました。医師が手術をする必要があると言っているのを、看護婦が通訳してくれました。手術代として60万チャットかかると言われたけれど、手持ちにお金がありません。1日待ってください、手術代を用意しますからと言うと、明日に手術できるので、今日、術前処置をしておきましょう。3万チャット支払ってくださいと言われました。もしも、明日手術することで問題がないならば、広告も持ってくれば30万チャットだけ支払ってください。半額にしてあげましょうと言われました。私も20万チャット手持ちにあったので、今日、手術できるのか尋ねてみました。30万チャット支払えるならば、手術できますと言われました。なので、その日のうちに手術をしました。
Voice:手術を受けて、診療所側の対応はどうでしたか。
DPPA:手術直前まで、聴診器を使った診察は一度もなかったです。血圧測定もなかったです。薬品のアレルギーなどについての確認も、全くなかったです。殺菌された服への着替えもなく、そのまま入室させて手術をすると言われました。
Voice:国立病院などがあるにも関わらず、なぜその診療所を選んだのですか。
DPPA:入院したくなかったからです。痛みのある手術にも耐えられません。実際手術をしてみて、とても痛かったです。この診療所の広告は、家に訪問して配られています。私が病気になった時と偶然重なっていて、他へ問い合わせるのが恥ずかしかったのです。それに、痛みに耐えかねて、緊急でかけつけられる場所に行ったのです。

 これまでは、痔になるのは動作の少ない高齢層だけであったが、生活習慣の変化で、若年層にも痔になる人がふえたことが、ドクター・ティーハーティッの話から分かった。
 ドー・ピューピューエーも、ターチーレイ、ヤンゴン間、車での長距離移動で痔の痛みがより強くなってきたゆえに、10分で痛みなく手術するという広告を信用して治療を受けてしまった。
 ミャンマー医療委員会は外国人医師免許のない医療者の医療行為が増えてきたために、今年の3月11日に国営新聞を通して、声明を出している。
 上述の免許なしでの医療行為を調査、見つけ次第、禁固5年の刑のほか、罰金も課すことを、その声明の中で同時に明らかにした。
 しかし、その実効性は乏しく、いまだに免許を持たない医師が横行している。そのため、免許なしでの医療行為と誇大広告診療所を阻止するために、ヤンゴン管区域の政府が今年の6月中旬に5つの私設診療所に調査に入った。
 ヤンゴン管区政府の調査では、最新の診療所も対象となったと、その診療所責任者が話した。
 私設の診療所で、登録のない薬品、医療品などの使用がないかの調査、医療委員会と民間医療委員会の登録の有無を調査したことなど、今年の7月にヤンゴン管区域政府組織のひとりが、本誌に語った。
 しかし誇大広告をしている診療所は横行し、人で賑わっている場所では、痛みなく治療するという文句の痔の診療所の広告のビラがいまだに多く見られる。
 そのため、痔の病人は自分自身で注意をして、安全で安心できる保健省の保証のある診療所を選ぶべきであり、医師にも、国内外で免許をとった医師であるかどうかを確認してから、治療を受けるべきであると総合診療医ドクター・ティーハーティッが語った。
 治療費用がかかるヤンゴン市で、行き届いたサービスで医療を提供している個人診療所がある一方で、サービス不十分で、患者の生命を危険にさらしている診療所もまだ残っていることを、ドー・ピューピューエーの実体験が証明している。
 今でも、傷が少し痛むたびに、ドー・ピューピューエーは悪徳診療所の事を苦々しく思い出し、またひとりぼやいてしまうのだった。
(レーイーミン、ヤレー)

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( 翻訳者:松浦宇史 )
( 記事ID:409 )