完全無欠とは行かぬ国勢調査5日間の道程(10-13-1-1,3-2,4-1,7-2)
2014年04月08日付 The Voice 紙

 国勢調査の実施が4月3日に5日目を迎え、その幕引きを全国民が注目している。
 30年強ぶりの国勢調査は、一部の場所で実施できず、また、調査ミスや回答を拒むデモなどがあった。
 3月31日までの2日間で2,035,001世帯への調査が完了したと国勢調査中央委員会が発表した。指導員と調査員合わせて111,254人を動員し、3月30日から4月10日までの12日間にわたって国勢調査を実施している。
 国勢調査の実施にあたっては、3月29日の真夜中を基準時として定め、その時点でミャンマーの領域内にいる全ての人を対象に含めて調査することにし、基準時よりも後に生まれた新生児は調査対象には含まれない。調査時にも3月29日の夜にいた場所で名簿に記載され調査が実施されることとなった。

<西方の問題>
 ヤカイン州での国勢調査の際、民族欄にロヒンギャと書いてはいけないと言われ、ベンガル人が回答をせずデモを起こした。
 ベンガル人の住む家には「ロヒンギャを受け入れて初めて、調査を受けよう」、「786を奉じる宗教イスラーム、民族はロヒンギャ914*」などの文言が書かれた紙が貼られていて、国勢調査に対してデモを起こしていることが調査員への聞き取りでわかった。
 「何民族かと尋ねる。ロヒンギャと答えれば、ありがとうと言って引き返してきた」とマウンドー郡調査員の女性教員が言う。
 国勢調査でロヒンギャと答える権利を求めて、ヤカイン州内でデモ行進をしたり、家屋や建物にイスラーム教の旗を掲げたりする他、「この家は国勢調査をボイコットするので、一切の調査お断り」と書かれた紙などを住居に貼ってボイコットしている。
 そのようにボイコットしているなかで、調査の開始された3月30日の午前、ロヒンギャという用語を認めない旨、州政府が公式に発表したので、ボイコットを中止した。その日にベンガル人は初めてデモを起こした。
 ブーディーダウン郡にあるベンガル人が住む6つの村落で国勢調査を実施したところ、村落区長ほか10人からなる1家族だけがベンガル人と回答したとブーディーダウン郡調査員の学校教員が言った。
 同様に、シットゥエなどのベンガル人が住む村落でもロヒンギャと書けないのでデモが起きている。
 「調査員たちは、ロヒンギャと記入することをお上が認めないと言う。ロヒンギャと書けないなら回答しない」とシットゥエ市域内でベンガル人の住むアナウッサンビャ村の長老ウー・マウンマウンティンが3月30日に話した。
 国勢調査回答者の望み通りに民族名を記入してよいと政府が公式に通知したにもかかわらず、国勢調査が開始されるとロヒンギャと書いてはいけないとしたことは、故意に問題が起きるようにしているのだとシットゥエのベンガル人が住むテーヂャウン村のウー・マウンマウンは言う。
 国勢調査でロヒンギャと書いたら、1982年市民権法に基づいた市民権の獲得にも支障がでると国勢調査委員会の責任者がベンガル人の村や地区で家を一軒ずつ回って説明したが、ベンガル人は受け入れなかった、と人口局総局長ウー・ミンチャインが言った。
 その様に、自分の好きなように記録に残したり、回答したりできないという問題に関して、国連など国際社会から憂慮が表明されている。
 大統領報道官のウー・イェトゥッによれば、ミャンマーの平和と発展を阻害するから、国勢調査でロヒンギャという用語を認めなかったのであり、また、ロヒンギャという用語をミャンマー政府が国勢調査で初めて拒否したのではなく、以前から否定していた違法な用語であるという。

[* 786はイスラームの神聖な文言を象徴的に表す数字。914は、今回の国勢調査で調査票の民族欄に記入するコード番号の一つで、「その他」を指す。政府が民族名として認めなかったため、ロヒンギャには調査票に記入すべきコード番号が与えられなかった。そこで、ロヒンギャのアイデンティティを持つ人々は、団結して「その他」の914を選択し、その横にロヒンギャと記入しようと呼びかけ合った。]

<501と国勢調査>
 KIAが支配するカチン州とシャン州北部の一部地域では、KIAが国勢調査を禁じたため調査を実施できないことが、国勢調査中央委員会への聞き取りから分かった。
 また、国勢調査実施の際に民族コードや他のデータの誤記入などの問題があったことが調査を受けた人々への取材からわかった。
 「ダウェーと言ったら、501(バマー)と記入した。ダウェーのコード番号は502で、ダウェー人組織がそのように言っているのも見た。なぜ501と記入したかは尋ねられなかった」と、あるダウェー人は、ダウェー人5人がバマーの民族コードに誤って含められたことを明かした。
 カチン州バモーとインドージーに住むシャンニー人に国勢調査でシャンニーと記入することを許可しないように、KIAが圧力をかけて威嚇しており、KIA支配地域内にいる3万人以上のシャンニー人は国勢調査に回答することができないとタインライン(シャンニー)民族発展党書記長ウー・ソーウィントゥンが言った。
 135種類の土着民族の中に含まれていないから国勢調査実施時に民族コード番号914の横にシャンニーと書くのではなくて、シャンのコード番号801に間違って含められてしまったので、修正しなければならなかったと、自身の経験を同氏が述べた。
 コード番号914はミャンマーの公定135土着民族に含まれない人と、コード番号がない外国人のために設けられたものである。
 「調査員自身が、135種類の土着民族に含まれない人たちを914に入れねばならないということを知らないので、回答と記入内容がずれるということが起きている。地方ではなおさらだ」とウー・ソーウィントゥンが言う。
 ゾーミーには個別のコード番号がないので914と記入するというキャンペーンを一部の連邦議会議員や指導者たちが進めているが、914とすると外国人になってしまうという反対があることをゾーミー民主連盟議長プー・カンリャンが述べた。
 同様に、マンダレーの住民の一部は民族名を質問されることなく、バマーのコード番号501に含められてしまったという。
 ベイッ地方でも国勢調査の際に、ベイッ人と言ったら、ベイッ人の公式のコード番号503に含めるのではなく、501に含められたということが地元民への聞き取りでわかった。
 そのため、後日地区長のところへ赴いて陳情し、修正しなければならなかったと彼らは言う。

<間違い>
 4月2日にサンヂャウン郡区の12人の女性が住む寮に調査員が訪ねて来た時のこと、人が多いということで、血縁者の住所に行って回答するように言われたとモン族のドー・ウェーウェーソーが自身の経験を語った。
 国勢調査員が来たときに12人のうち2人しか建物内にいなかったため、全員揃っている時に来るように言ったのだが、調査員は聞かずに12人のデータを寮に残っていた2人に尋ねて記入した。多くの人は就職していると言ったが、求職中と書くと簡単だからと言って、求職中と書かされたと同氏が言った。
 「学位は持っているかかどうかなんて、1つの家に住んではいるが、データ全てをどう集めろというのか。同郷の1人しか私は知らない。残りは適当に記入してやった」と同氏は続ける。
 ヤンゴン市のように土着民族やその他の民族、諸宗教が混在する場所では、調査員が根気よく丁寧に調査してこそ正確なデータがとれると国勢調査に回答した人たちは考えている。
 「国勢調査の基準時は3月29日だと言う。しかし、4月1日に外国から来た人も国勢調査に含めて調査してしまった」とカチン平和ネットワーク渉外担当のドー・クンジャーが言った。
 ムスリムを調査する際、一部の地域では民族と宗教を尋ねないで記入したり、公式の調査票を用いて直接記入するのではなく、その地区の役場が準備した調査票を持ってきて記入させたりといった問題が発生しているとマンダレー市在住のパティー人ウー・ゾーミントゥンは言う。
 「民族と宗教は尋ねない。用紙を見ると、すでに501と書かれている」と同氏は友人の体験したことを述べた。
 ある人がバマーと言っただけで宗教は聞かずに仏教と記入されたり、135種類の民族に含まれていない人を914とするとき、その横にどの民族かを記入しなかったりすることがあったと同氏は言う。

<間に合うように修正しなさい>
 国勢調査の際に、データを誤って記入された場合には、4月10日までの調査期間内に調査員のところに行き修正することができると人口局担当者は言う。
 調査員の記入した調査票を指導員が検査し、間違いが見つかれば修正させる、また、国勢調査では民族コード番号のみを記入するのではなくコードの横に民族名を書いておくので、コード番号が間違って記入されている場合は指導員が検査のうえで修正する、と人口局の担当者は話した。
 「(調査員を務める―訳者註)教員は調査後も修正に対応しなければならない。心配することはない。調査員の他にも指導員がいる」と同氏は言う
 4月10日の最終日までに国勢調査の調査員が来ない場合や、国勢調査終了のマークが貼られていない場合は、地区や村落区の国勢調査事務所に報告する必要がある、そうすれば残っている家に再び調査に赴くと人口局が発表した。
 国勢調査に関する質問ができる緊急の電話番号は1840である。

<気短な調査>
 国勢調査の際に、回答する国民は調査票への記入方法を知る人が少ないので、データを正確に得るためには調査員の仕事ぶりが肝要となる。
 国勢調査を国民の義務として責任感をもって行うのではなく、調査の際に気短にしたり、いい加減にしたり、礼金が割に合わないと不満を述べたりすることが見られ、正しいデータを集めることよりも、早く終わらせることが優先されていたとヤンゴン管区域タームェ郡区の地区長の1人が言った。
 一部には気短な調査員が見られた。出生地のところでラウンローン郡と言うと、調査員がコード番号リストを急いで探して見つけたイェー市のコード番号を正しくないのにさっさと記入しようとしたので、訂正するように言ったと4月2日ヤンゴン市カマーユッ郡区で回答した者が言った。
 国勢調査実施の際にデータを正確に得るために調査員の教員らを講義や実習を通じてしっかりと訓練したと人口局の総局長ウー・ミンチャインが言った。
 国勢調査で得られるデータの予備的な集計結果は今年の8月に公表される予定で、最終的な統計は2015年の初めの4ヶ月中に公表するということと、データを分析した成果を2015年11月以降、順次公表してゆくということを国勢調査中央委員会が発表した。
 国勢調査ではミャンマーの総人口、年齢層別人口、労働人口、失業率、識字率、居住水準、住宅事情と所有形態、出生と死亡、国内外の移動、家族構成、生計手段、民族、宗教など基本的なデータが得られる。
 それらのデータは国家の今後の発展計画の実現にとても重要なので、データを正確に収集することが特に大事なのである。
 国勢調査5日目までに、ヤカイン州のロヒンギャと記入することを望んでいるベンガル人に回答させなかったり、KIO支配地域でまだ回答ができていなかったりという状況である他に、民族コード番号やその他のデータの誤記入が多いため、データが正確に集められているか疑問が挙がっている状況である。
 501にまつわる話、気短な調査などを伴う国勢調査の道程は5日目までが終了した。国のあらゆる政策を決定するのに最も基本的である国勢調査は「非もなく、砂にもまみれぬ(完全無欠を意味する慣用句―訳者註)」とはなっていない。最終的にどのような幕引きとなるのか、全国民が注目している。

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( 翻訳者:田崎巧 )
( 記事ID:621 )