「ベトナムはエネルギーの安全保障のため原発を必要としている」
2015年05月08日付 VietnamPlus 紙

 高い経済的効果、エネルギーの安全保障、環境保護、温室効果ガス削減などの原子力発電の優れた点により、ベトナムを含む世界の多くの国々は、原発推進を選択している。しかしながら、日本の福島第一原発の事故の後、原発推進の最も重要な課題は安全をいかに確保するかになっている。

   原発推進の目標

 2020年までの平和的目的のための原子力エネルギー利用戦略は、同年までに原発を推進し、最初の原子力発電所を建設して安全に運用し、効果的に開発していくという目標を掲げている。同時に、原発推進の長期的計画のためのしっかりとした基盤を築き、国の総電力量のなかでしかるべきレベルに原子力発電の比率を漸進的に高めていく。
 これまで、ベトナムは原発プロジェクトを進めるにあたって世界各国の協力と支援を得てきた。科学・技術省原子力エネルギー局によれば、現在ベトナムはニントゥアン原子力発電所のプロジェクトを積極的に進めている。ベトナムはロシア・日本と協力協定を締結し、ロシアはニントゥアン第1プロジェクトのパートナーとなり、日本はニントゥアン第2プロジェクトのパートナーとなっている。本プロジェクトは、規模と投資額、とりわけ安全確保の面で一大プロジェクトとなっており、準備期間が10~15年、施工期間が5~6年で、大きなリスクを抱えている。しかし原子力発電計画を始める過程において、ベトナムは非常に多くの困難にぶちあたっている。加えて、ベトナムは原子力発電を管理し展開した経験をもっていない。ベトナムの原子力発電推進に必要なインフラは、依然として低水準のままである。国の法体系もまだ整備されておらず、原子力発電所建設に関わるあらゆる分野での人材が質量ともに不足している。
 そのため、ニントゥアンの原発プロジェクトはしっかりと実現されなければならず、ニントゥアン第1・第2プロジェクトの投資の用意と推進は、次の基本的な3つの要件を満たさなければならない。それは、最高水準の安全確保、法律の規定遵守、経済的効果である。
 ロシアの国営原子力企業ロスアトム(ROSATOM)国際営業本部長のニコライ・ドロズドフ氏は、原子力発電は新しい分野であるが、大規模な火力発電・水力発電の経験のあるベトナムの大きな会社はベトナムの原子力発電プロジェクトの下請けに参加できる条件を十分に有していると述べた。
 近い将来、ニントゥアン第1原子力発電所の施工のための当初の技術的インフラを準備する問題のほかに、ここ数年、ロスアトムはベトナムの原子力発電の人材育成に注力してきた。「原子力発電の推進に参加したばかりの新しい国にとって、専門家の育成はきわめて重要である」とニコライ氏は強調した。
 ベトナムの原子力発電推進の国家管理機関として、科学・技術省のチャン・ヴィエット・タイン次官は次のように述べている。「ベトナムのエネルギーの安全保障における原子力発電の役割、原子力法規、原子力発電の安全に関する国家管理、人材、投資とインフラなどは、ベトナムにおける原子力発電推進にとっての重要な事柄である。

     広報の推進

 ベトナムは原子力発電を推進し始めたばかりなので、人々の原子力発電に関する理解・認識は十分ではなく、またバラバラである。そのため広報は戦略的・合理的・恒常的・連続的・長期的に強化・推進する必要のある重要な活動である。
 2013年2月28日、政府首相は決定370号において2020年までのベトナムにおける原子力発電に関する情報・広報の提案を承認し、科学・技術省が中心になって各省庁・各部門・各地方(特にニントゥアン省)と連携し、積極的・効果的にこの提案を履行するように同省に託した。しかしながら、ニントゥアン原子力発電所を建設する投資方針ができた後、ニントゥアンの建設予定地の人々は非常に不安に陥り心配しているので、敷地の造成や移住・再定住が困難になっている。そのことは、原子力発電問題で広報活動がまだしかるべく関心をもたれていないことを示している。
 2015年初め、科学・技術省は、2015-2020年に原子力産業の分野での共同プロジェクトに対する情報支援協力に関して、ロシア国営原子力企業ロスアトムと協力の覚書を締結した。
 国際原子力機関(IAEA)によれば、情報・広報は原子力発電のインフラを発展させる基本的な19の問題のうちの1つである。原子力発電に関する大衆向けの広報活動は、プロジェクトを進める前に一歩先行していなければならず、建設・運用の過程において、また原子力発電所が活動停止になった時でも、常に継続して行なっていかなければならない。
 広報の推進に関して、フィンランドの電力会社Fennovoimaの国際マスコミ・広報局長のティイナ・ティゲルステッド氏によれば、2011年3月の福島での事故の後、専門家たちは「原子力発電の安全文化」を築くことがこの分野を発展させるにはきわめて大切であると考えている。「『原子力発電の安全文化』を築くためには、情報が人々に届くことがきわめて重要である。人々は、原子力発電で起きていることやその作用とリスクを理解し、彼らが常に必要としている電力需要と勘案し、よりよく原子力発電を発展させるようにしなければならない。そのほか、人々が公平な見方をもち、将来、より安全で効果的な原子力発電を使用できるように、他のすべての発電方式の限界とリスクについての情報も必要である。

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( 翻訳者:今井昭夫 )
( 記事ID:1437 )