第17回シャングリラ会合におけるゴ・スアン・リック大将(国防大臣)のスピーチ全文
2018年06月02日付 VietnamPlus 紙
ゴ・スアン・リック国防大臣とベトナム代表団
ゴ・スアン・リック国防大臣とベトナム代表団

 第17回シャングリラ会合-アジア・太平洋地域の安全保障に関する討論が行われる場として最も待ち焦がれてきたフォーラム-が、本年、6月1日~3日まで、シンガポールで開催された。
 ゴ・スアン・リック大将(党政治局員・中央軍事党委員会副書記・国防大臣)は、ファム・ゴック・ミン上将・ベトナム人民軍副総参謀長とともに、ベトナムのハイレベル軍事代表団を率いて討論に参加した。
 国営ベトナム通信社は、6月2日の第3討論セッションにおいて、リック大臣が「変化するアジアの安全秩序の形態」と題し行ったスピーチの全文を謹んで紹介する。

 ジョン・チップマン議長・博士閣下、ご出席の皆様。
 シャングリラ会合は、16回の開催を経て、地域の平和、安全、安定、繁栄のための相互理解と協力の強化にあたり、ますます重要な役割を果たしています。国際戦略研究所、シンガポール政府、同国国防相に対し、この重要なセッションにおいて皆様に意見を共有させていただくことに謝意を申し上げます。
 今年のシャングリラ会合には、多くの来賓、外交官、域内各国を代表する軍事専門家や研究者がお越しになっており、中でも昨日には、インドのナレンドラ・モディ首相による重要なスピーチが行われました。首相閣下および複数の大臣によるご意見には、地域と世界における平和、安全、安定を渇望する願いが込められていることを改めて感じました。
 今日、地域の平和、安定を育むため積極的な協力が進められてきているにも関わらず、実際には、領土主権を巡る係争、テロなど、伝統的また非伝統的安全保障面で試練に直面すると予想され、事実、極めて明確なかたちでそれが起きていることを認めざるを得ません。アジア太平洋地域は、真にかつ間近に迫る危機に置かれる可能性が十分あり、そのように定められています。
 我々は、目下、地域に対する各大国の政策について力強い転換を目の当たりにしています。具体的には、「アジア太平洋」、「インド洋・太平洋」戦略、「一帯一路」構想へと重点を移しています。また、各国間の多くのグループ関係(例えば中-韓-日、豪-印-日など)もすべて、平和、安定の方向に向かうことを宣言しています。しかし、地域と世界にいかなる成果をもたらすかについては、我々はこれを待たねばなりません。こうしたことから、私が、本日のテーマとしてお話しする「変化するアジアの安全秩序の形態」は極めて有意義であり、地域に投げかけられた壮大な問いかけに対する解答となり得ることを希望します。
 私は、最近の朝鮮半島情勢に前向きな兆しがあることを強調したいと思います。北朝鮮、韓国およびその他多くの国々の努力を通じ、我々は、米国、北朝鮮、韓国、またその役割を欠かすことはできない中国、ロシアといった強国および国際社会が、朝鮮半島の平和、安全、非核化のため責任ある行動を伴って進んでいき、地域の平和、安定に貢献するだろうとの希望を持っています。しかし、朝鮮半島における-および朝鮮半島においてのみならず-平和・協力の建造は、困難、障害に直面する長い道のりであります。

 皆様。
 武力の使用或いは一方的な行為による対立、脅しに代えて、各関係国が、共通利益を基に国際法および地域の枠組みを尊重し、共にテーブルに着席し、対話を通じ、平和的手段によって、不一致の点、係争を解決することで、多くの問題を解決することが可能となるための最良の道です。
 実践と経験を通じ、我々は、複雑な安全保障上の諸問題を解決するために、先ずは、其々の国が自国の運命を自らで決定しなければならないと言えます。同時に、国際社会、就中、大国の共通利益のため、無私、公平、客観的に助け合い、手を取り合って行動する必要があります。
 こうした観点から、本日私が皆様へお伝えしたいメッセージは、「独立、自主、協力の強化、国際法の遵守は、安全、平和、発展の基盤である」ということです。さすれば、こうした未来を得たいならば、我々にはどのような協力が必要なのでしょうか。
 まず、安全保障のアーキテクチャー、枠組みについて、国際法、国連憲章の基本原則、公認された行動基準、地域のコミットメントを根本に、共通利益に則って、各当事国間で政策に関する基盤を作り合意を生み出さねばなりません。
 軍間での協議、情報交換、ハイレベル交流、共通活動の推進、軍民間の連携強化を通じて相互信頼を醸成しなければなりません。最も重要なことは、各当事国が、政策を透明化させ、善意と決意を示し、各コミットメントと法的義務を正しく実行する、即ち、有言実行することです。
 各大国をはじめ全ての当事国が、責任感を持って行動し、平和、安定、協力、発展のため地域において共に努力する中で責任を背負っていくことが必要です。特に、武力の使用を抑制する、使用しない、若しくは使用すると脅しをかけない、情勢をさらに複雑化させるような一方的行動を起こさないことが肝要です。
 地域と地域の繋がりにおいて、国防・安全保障、政治、経済に関する対話・協力スキームの効果を発揮し、拡大し、多様化を図る必要があります。テロ防止と管理に関する情報交換を進め、まずは人道支援、救難救助、海上の法執行、航行・航空の安全確保、テロ・海賊の防止等の分野において実質的な協力を進め、各当事国が、朝鮮半島、東シナ海、南シナ海など複雑な安全保障、係争問題について、領土主権の尊重と国際法の遵守、相互内政不干渉の観点に基づき、平和的な解決を支援する新たな枠組みを構築するための研究を行いましょう。国益を超えたより大きなビジョンが描けるよう、政策立案者の考え方について意見交換を行うため、各対話チャネルの活用を奨励しましょう。

 皆様。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、中小の国々が見事に連結した一つの協力形態です。ASEANは、共同努力のための中核として一層重要な役割を果たしており、アジア太平洋の平和、安定の環境を確保する安全保障のアーキテクチャーを形成しています。
 ASEANは、安全保障を確保する能力を向上させること、信頼醸成を構築する各種方策を実施し、係争を予防する外交を行い、かつ係争を解決する方法について模索するための協力を行うこと、各国と共に盤石な安全秩序を確立することに重点を置いています。 
 現在、ASEANが中核としての役割を果たすASEAN地域フォーラム(ARF)、ASEAN海上フォーラム(AMF)、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAM国防大臣会合(ADMM)など、多くの枠組みがあります。特に、拡大ASEAN国防大臣会合(ADMM+)の枠組みは、アジア地域各国とパートナー国との広範な集合体で、信頼を醸成し、多様な協力を展開して、多くの分野の非伝統的安全保障に対する挑戦に対抗すべく、ハイレベルの対話や交流を促進するため、重要な役割を担っています。
 2020年、ベトナムはASEAN議長国に就任する予定です。同年のASEANは、ADMM+を設立してから10周年記念の年にあたります。我々は、アジア太平洋地域の安全保障ビジョンを打ち出し(ADMM+の枠組み)、ASEANの中心的役割を、ASEAN加盟各国の団結、統一、責任と結びつけるかたちで発揮すること(ADMMの枠組み)に尽力します。
 引き続き、ベトナムは、ASEANの中心としての役割を尊重しつつ、安全保障に対する共通の挑戦に対し、効果的に対処し得る集団の力を発揮すべく、ADMM+が幅広く受け入れられた国防協力の協力スキームとなるよう、各パートナー国、対話国、各大国をはじめとするその他の国々からの積極的な支持、参加を得たいと希望しています。

 皆様。
 ベトナムは、平和の価値を常に尊重し、独立、自主、平和の対外政策を堅持し、国際関係の多角化、多様化、各国関係における戦略バランスを重視しています。自衛の観点から平和的国防を構築し、他国を攻撃する国と連携することはせず、国際関係において武力を用いず、かつ武力による脅しを行わず、外国にベトナムの領土上に軍事拠点を置かせません。国際法、地域の行動規範に基づき、すべての国の独立、主権、統一、領土保全を尊重し、また、その他の国々にもこうしたことを求めるものです。ベトナムは、決意を以て自らの正当な利益を守り、同時に、国際法に適合するかたちで各国の利益も尊重します。
 南シナ海問題に対し、ベトナムは、1982年の国連海洋法(UNCLOS)を含む国際法に基づき、平和的手段によって係争を解決するとの観点を堅持しこれを支持し、南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)、南シナ海における行動規範(COC)を遵守し、ASEANと中国間の戦略的信頼を醸成する方策を講じつつ、国際法に基づき地域の安全秩序に貢献するとの各国の決意を示していきます。他国によるあらゆる主権の違反行為、軍事化、軍事力の増強はいずれも、国際法に見合ったものではなく、地域のコミットメントに逆行しています。これに代わり、南シナ海が真に平和、協力、友好の海域となるため、各当事国は、海上の秩序を構築するうえで責任感を示す必要があります。
 国の独立、主権を守るとの任務の一方で、ベトナム軍は、平和維持の内容をはじめ国連の持続的発展計画およびミレニアム開発目標に積極的に参加しています。ベトナムは、国連の平和ミッションについて精通し、紛争や戦争による甚大な被害を被っているアフリカの遠隔地の住民からの信頼を得るに至りました。

 皆様。
 グローバル化、第四次科学技術革命が力強く進み、安全保障に対する挑戦が一層増す中、地域のコミュニティから離脱したならば、発展できる国は一つもありません。運命と責任は我々各人の肩の上に置かれています。アジア、東南アジアは平和、安全、繁栄を維持できるかとの点は、今日の我々の行動に大きく依拠しています。そのための努力の一つは、国際法を基本原則として、ともに共通の安全保障の枠組み・メカニズムを構築し、相互信頼を醸成し、すべての当事国が責任ある行動を行うことです。
 この場を借りて、私は、ASEAN議長国としてのシンガポールの役割および「弾力性と創造性(Resilience and Innovation)」とのテーマの下、同国のイニシアティブに祝意を述べるとともにこれを支持します。この精神を以て、ASEANは、平和と安定、経済の連結性、人々が対話と協力の考え方に向かうため、地域の秩序形成、支援、調整および共通の努力を促進する上で、その盤石性を確実なものとすることができるでしょう。
 私は、すべての人々の実質的な協力、誠実な態度があれば、アジア太平洋において波風があってもそれは、其々の国および地域全体の共通利益と素晴らしい将来のために、私たちの紐帯をより一層強くし、より一層努力させるのみに過ぎないと楽観視しています。
 その確信を以て、最後に私は、ホーチミン主席の以下の有名な言葉でスピーチを締めくくりたいと思います。「安全と自由は、其々の国がいかなる強国からも独立することによって、また、其々の国がその他の強国との自主的な協力によってのみ、確保されることができる」。

ご静聴ありがとうございました。

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( 翻訳者:メディア翻訳ベトナム語班 )
( 記事ID:4473 )