男女産み分けは違法行為  
2018年10月11日付 VietnamPlus 紙


 ベトナムには、ジェンダーの不平等や男女産み分けに関してかなり厳しい政策や法律体制を整備してきた。しかし、実際見てみると、ベトナムにおける出生時の人口性比のアンバランスの解決にはまだ多くの問題が残っていることが分かる。
 ジェンダーの不平等は、社会の意識に深く根づいている。何世紀にもわたって存在している考え方を変えるには、政治体制や社会全体の行動やコミットメントが必要だ。

   一番の直接的原因

 自然の法則では、平均で100人の女児が生まれた場合、それに応じて104人〜106人の男児が生まれるといわれている。
 ベトナムでは21世紀の初めから、15歳以下の人口グループにおいて常に男子の数は女子の数を上回っている。短期間では、出生時の性別の割合は2000年に女児100人あたり男児106人から上昇し、2009年には110.5人、そして2015年には112.8人まで上昇した。
 2016年にはこの割合は減少したがいまだに女児100人あたり男児112.2人の割合を維持している。人口学の推計によれば、もしも出生時の性別男女比が現在のペースで上昇していくと2050年にはベトナムでは50歳未満の男性の人口が230万〜430万人ほど女性より多くなるとみられている。
 ベトナムは多くの慣習やならわしがある儒教の影響を強く受けている。その中でも「男尊女卑」の考え方は祖先崇拝や一族の祠堂の継承の実践に関係している。
 また、農業国であるために男子は体力面で圧倒的に優れているため高い評価を受けている。そのため多くの人々が、「男子のみが祖先崇拝などの重い責任を負うことができ、生産・労働において家族をたくさん助けることができる。両親が年老いたときの拠り所になる」という観念を持っている。このことこそ出生時のジェンダー不平等を招く根本的な原因である。
 しかしながら、出生時の性別アンバランスは、超音波技術が広く発展し、出生前性別診断ができるようになった時にベトナムで爆発的に増えただけである。今日ではベトナムのほとんどの家庭が、以前のようにたくさん子どもを産むのではなく一人か二人だけを目安に子どもを持つことを受け入れている。したがって、最大二回の出産の機会で男児を産む可能性は減っていくだろう。そのため、多くの夫婦は男女産み分けのために積極的に科学の成果を利用している。
 統計総局の 2016年4月1日時点での人口変動と家族計画化の調査結果によると、ほとんどの女性が、現代的な、効果的に診断する超音波機器を用いて、妊娠時に出生時の性別を知っているという。全国的には都市・農村、各社会経済地域においては妊娠年齢の15-49歳の女性が超音波機器を使って胎児の性別を知っていた割合が99%近くに達している。
 大多数の母親 (74.0%)は15週〜28週ごろから出生前の性別を知る。28週以降に性別を知った母親は一番低い割合を占めている (1.7%)。このことは、妊婦のほとんどが、胎児の性別を早く知りたいという心理を持っていることを示している。
 調査では、女児より男児を産みたいと願う傾向が高いことが判明した。その中でも紅河デルタは 32.7%と高く、続いて丘陵地帯と北部山岳地帯(29.9%)、中北部と中部沿岸部 (29.0%)、そして一番低いのは南東部 (17.5%)だった。
 出生時の性別のアンバランスは国家の社会経済発展や女性や男性、家族や共同体の生活に悪影響を及ぼすとみられている。
 若い女性が男性より少ない状況は、多くの男性にパートナーを見つけにくくさせる見通しだ。「結婚に関する危機」は人口学の面だけではなく、社会の面にも一連の悪い影響を及ぼす可能性がある。それには、結婚の強制や人身売買、女性や女児への暴力、男性の社会と性欲に関する不満により社会が不安定になる危険、などが含まれる。
 その状況で多くの弱者の男性、具体的には貧しく低学歴の男性はますます家族を築く機会がなくなる。結婚を目的として国内移住や海外移住をする人も増える可能性があり、社会をより不安定にさせる見込みだ。

   胎児の性別選択がきちんと抑制されていない

 胎児の性別選択もしくは胎児の性別選択サービスの提供は、2003年の人口に関する政令の規定により、違法行為とされており、2013年11月14日付の政府議定2013年第176号と2006年の政府議定第114号の規定で、医療・人口・子供の分野における行政処分に関する規定に従い処分されることになっている。
 2006年のジェンダーの平等に関する法律にも次のように記されている。『いかなる形式での胎児の性別の選択、もしくは胎児の性別を理由とした他人への中絶の強制や教唆』は違法である」。
 性別の選択を正式に禁止する規定が複数既にあるにもかかわらず、超音波検査と人工中絶は依然として性別選択目的で濫用されている。クリニックや民間病院に対する厳しい監視はまだ実施されていない。
 一方で、現行の制裁は行動を変えさせるほどの強さがまだない。このことは、政策策定者や医療専門家に、出生前の超音波技術や安全な人工中絶サービスにアクセスすることを通して女性の権利と健康を守る目標を保障しつつ、新しい産科技術の濫用を避けるという課題をつきつけている。
 出生時性比を自然のバランス(103人-106人男児/100人女児)に戻すために、党と国家は、「2011年から2020年までの人口とリプロダクティブヘルスに関する国家戦略」「2011年から2020年までのジェンダーの平等に関する国家行動プログラム」「2016年から2025年までの出生時性別不均衡の抑制」事業、「2013年3月23日付の2016年から2025年の出生時性別不均衡抑制事業の承認に関する政府首相決定第468号」などといった戦略やプログラム、政策文書で具体的に指導してきた。
 「新しい状況における人口業務」に関する第12期中央執行委員会第6回会議の中央決議第21号では「出生時性比を自然のバランスに戻す」という目標を提示している。まずは、「2030年までに出生時性比を、女児100人あたり男児を109人未満にする」としている。
 しかし、この目標を実現するためには、統一的で緊急で長期的な対策を数多く実施しなければならない。まずは、宣伝と教育を促進し、出生時の性比のアンバランスの危険性に関する住民の認識を向上させなければならない。また、人口に関する政令の厳格な実施を普及させ、時代遅れの習慣を批判し、繁栄し、幸福になった娘がいる家庭を模範的だと称える必要がある。 さらに、ジェンダーの平等を促進し、家庭と社会における女性の立場を向上させ、すべての分野で女性と少女や女児のための条件やチャンスを整えなければならない。
 出生時の性比がアンバランスな状況の抜本的な解決のためには、胎児の性別確認と性別選択における一部の医療幹部の非合法な活動をなくすことも必要である。
 医療・人口・子供の分野で行政処分に関する規定する議定が複数あるにもかかわらず、現在、処分のためにこの議定を適用する地方はとても少ない。そのため、法律の執行の監視の強化や、医療施設、特に民間医療施設が胎児の性別選択サービス供給や相談を行わないことを約束するよう求めること、胎児の性別選択を阻止する公約を含めた職業道德に関する規定の構築が必要である。

関連記事:「[Infographics] 性別比のアンバランスによる2050年社会予想図
https://www.vietnamplus.vn/infographics-he-luy-tu-viec-mat-can-bang-gioi-tinh-vao-nam-2050/483684.vnp」

トゥー・ズー病院での妊婦の超音波検査(写真:フオン・ヴィ/ベトナム通信社)
https://cdnimg.vietnamplus.vn/t660/Uploaded/pcfo/2018_10_11/1110_sieu_am_1.jpg

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( 翻訳者:杉崎花恵 )
( 記事ID:4560 )