資源・環境省、メコンデルタが2050年に「消滅」という情報を否定
2019年11月02日付 VietnamPlus 紙
100㎝海面上昇で浸水する危険があるメコンデルタ地域の地図(出所:資源環境省)
100㎝海面上昇で浸水する危険があるメコンデルタ地域の地図(出所:資源環境省)

 2050年にはホーチミン市とメコンデルタが「消滅」という情報について、資源・環境省の代表は、「この情報は十分な科学的根拠に基づいておらず、極端な仮説のみに基づいたものだ」とした。
 しかしこれは、マスタープランを構築する際に関心を向けるべきだというメッセージでもある。このため実施機関は、地盤沈下や海面上昇、そして高潮による浸水に注意を向け、解決するための合理的なプロジェクトを提案できるようにする必要がある。

   極端な仮定

 資源・環境省の情報によると、雑誌『ネイチャーコミュニケーションズ』に最近発表されたクライメート・セントラルの科学者の研究の中で、世界各地の平野が気候変動による海面上昇で浸水するリスクに関する見方が示されたという。
 ベトナムに関し、この研究では、この先30年以内に気候変動による海面上昇によってメコンデルタは「消滅」という仮定がなされ、この地域に住む2000万人の人々に深刻な影響があるとされていた。さらに、ホーチミン市の経済の中心地の大半も2050年には消失してしまうそうだ。
 この研究結果を受けて、気象・水文・気候変動科学研究所の副所長であるフィン・ティ・ラン・フォン博士・准教授は、「メコンデルタで海面上昇により国土を失うリスクに関心を向けることは、大変必要なことだが、この研究にはまだ明らかにしなければならない点がたくさんある」、との見方を示した。
 まず、クライメート・セントラルの研究では、STRM DEM (2000年のNASAの地形データ- NASAのシャトルレーダートポグラフィーミッション) の誤差を補正したものに基づいて沿海地域の地形データが構築されている。
 実際、STRM DEMは植物と建物の情報の両方が含まれるため、高度で大きなエラーがしばしば起こる。それゆえ、この論文はアメリカのLider地形データとニューラルネットワークMLPを使用して沿海地域の地形データを補正し、それを全世界に適用している。
 したがって、「この論文はメコンデルタ用には調整しておらず論文中の沿岸地形データはメコンデルタ地域の本当の標高を反映したものではない」とフォン氏は強調する。
 2016年、資源・環境省は海面上昇と気候変動のシナリオを発表した。このシナリオで、メコンデルタ地域の海面上昇による洪水ハザードマップを作成する際に使用された地形データは、2008年に国家リモートセンシング局により作成されたメコンデルタ13省のグリッドセル2m×2mの地形デジタルモデルとベトナム地理情報・地図作成・測量局のLidar 空撮プロジェクトにより作成された地形デジタル地図から得られたものだ。
 一方、クライメート・セントラルの研究においては、洪水ハザードマップ作成において、海面上昇2mに高潮を結びつけたシナリオを使用していた。実際、これは2つの極端な仮説の重ね合わせになってしまうため、必然的にとてもハイリスクの状況へと繋がってしまう。
 さらに、気候変動に起因する海面上昇による洪水と、潮の影響 (数時間のみ) による洪水とを判別するのは不可能であるとの見方を示している。加えて、2メートルの海面上昇というシナリオは第5回気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書 (AR5) でも示されていない。
 それゆえ、「2050年までに、メコンデルタとホーチミン市が消滅するという情報には、科学的根拠が不十分であり、極端な仮説にのみ基づいている」とフォン副所長は強調する。


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( 翻訳者:大日向爽 )
( 記事ID:5013 )